杏っ子(YouTube): 成瀬巳喜男 | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

 

杏っ子(YouTube)

 

1958年作品/日本/109分

監督 成瀬巳喜男

出演 香川京子、木村功、山村聰

 

2021年7月11日(日)の午後、自宅で観賞しました。

 

東京新聞に連載されたベスト・セラー室生犀星の原作を、「女であること」の田中澄江と成瀬巳喜男が共同脚色し、「あらくれ(1957)」の成瀬巳喜男が監督、「狙われた娘」の玉井正夫が撮影した文芸映画。主演は「女であること」の香川京子、「悪徳」の木村功、それに山村聡に新人三井美奈。ほかに小林桂樹、太刀川洋一、加東大介、中村伸郎、などが助演(以上、映画.comからの引用)、という映画です。

 

室生犀星の「杏っ子」は学生の頃に読みました。今でも実家にありますが、内容をほとんど覚えておらず。今回、成瀬巳喜男監督が映画化した本作を観ても〝こんなお話だったかなあ〟という感じでした。嫁に出した娘が、ダメな亭主のもとで生活に苦労をしている姿を見守っている父親の話になっているのですが、同じような境遇に近づいている私にとっては、他人事ではなく、色々と考えさせられるところのあるドラマでした。

 

 

 

《感想です》

 

平山家の疎開先、信州の軽井沢を舞台に映画は始まります。作家の平山平四郎の娘である杏子は、そろそろお嫁にいく年齢ということで、周りに勧められるがままにお見合いをするのですが、どうも誰もピンとこず。そんな時に、ふとしたことがきっかけで疎開先の商店の息子で小説家を目指す亮吉との縁談がトントンと進み結婚することになるのですが、実はこの亮吉が酒癖が悪くダラシない男だった、という物語になります。

 

結婚する前に、杏子は父親から貧乏生活の極意を授かります。〝100円を1000円に使え〟と。今までは親の加護のもとで衣食住、何の不自由もない暮らしをし、ピアノまで弾いていた杏子が、結婚をして独立し始めて生活というものの大変さを知る。しかし、きちんと育てられた杏子は、親を頼らずこの苦労を乗り切ろうとするのです。一方で夫の亮吉は、小説が書けない腹いせに、何かと杏子のやることにケチをつける有り様。

 

この夫のクズっぷりが本当に半端なくて撤退しています。成瀬巳喜男監督作品に登場するダメ男のなかでも群を抜いているような気がします。特に後半になって、自活が出来なくなり杏子の父親の家に転がりこんでからは酷いの一言。何せ、世話になっていることが嫌で気に食わず、平四郎が長年かけて大切に丹精込めて作り上げた庭を、夜遅くに酔って帰ってきたあげくに、喚き散らしながらメチャクチャにしてしまうのです。

 

しかし、この平四郎がまた驚くほど人間が出来ていてですね、亮吉を頭ごなしに叱ったりしないんですよ。「杏っ子」のなかで、誰に惹かれるかと言うと、この平山平四郎ですよ。杏子のことを気にかけながらも顔には出さず、ひとりの大人として扱って決して甘やかさない。普段は言いたいこともグッと我慢して、本当に大変な時にはさりげなくサポートをする。娘を持つ身としては、こんな父親になりたいと心底思いましたよ。

 

杏子を演じているのは香川京子さん。決して派手ではなく、質素にして優しくて、芯の強いところを上手く演じておられます。というかご本人そのものなのでしょうか。亮吉役は木村功さんで、最初は好青年かと思ったら、後半とのギャップが凄かったです。本作では更正することなく幕を閉じるので後味が悪いです。杏子の父が山本聰さん。この時、ご本人は50歳手前だと思いますが、貫禄あります。こんな父親だと娘婿はやりにくいですかね、笑笑。

 

ご興味がありましたら、YouTubeで検索してみてください。

 

 

 

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杏っ子、の詳細はこちら: 映画.com

 

 

この項、終わり。