ライトハウス | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

ライトハウス

 

2019年作品/アメリカ・ブラジル/109分

監督 ロバート・エガース

出演 ロバート・パティンソン、ウィレム・デフォー

 

2021年7月11日(土)、WHIT CINE QUINTで11時35分の回を観賞しました。

 

1890年代、ニューイングランドの孤島。4週間にわたり灯台と島の管理をおこなうため、2人の灯台守が島にやってきた。ベテランのトーマス・ウェイクと未経験の若者イーフレイム・ウィンズローは、初日からそりが合わずに衝突を繰り返す。険悪な雰囲気の中、島を襲った嵐により、2人は島に閉じ込められてしまう(以上、映画.comより引用)、という物語です。

 

この日は朝から何を観ようか本当に迷いました。最初は「ブラックウィドウ」か「ゴジラVSコング」をと考えていたのですが、前者は公開館数が少なく時間が合わず。後者はあまりにもブロガーさんの評価がよろしくない。それで、なんやら分かりませんがこちらが新聞の映画紹介に掲載されているのを読んで良さげだったので、アメブロの中ではまだ賑わっていませんが思い切って選択することに。とても恐ろしい作品でした。

 

俺ら岬の灯台守は〜♬、の恐怖譚

 

映画は孤島に立つ灯台に二人の男が海からやってくるところから始まります。これまで灯台を管理していた二人組との交代で、言葉を交わすこともなく男たちは無言で一本道をすれ違い、片方は海で待機する船へ、片方は灯台へと向かいます。その様がこの仕事の過酷さを静かに物語っているようでした。やってきたのはベテランのトーマスと新人見習いのイーフレイム。この二人の佇まいが船長さん人形のようで、いかにも海の男。

 

灯台を管理するのはわずか1か月。1か月が経つとまた次の交代要員がやってくるわけです。しかし、わすか1か月といってもこれがなかなかの重労働で、かつ単調な仕事なのですね。毎日、毎日、同じことの繰り返し。灯台守の仕事を知り尽くしている百戦錬磨のトーマスは、仕事を早く覚えたいと意気込む若いイーフレイムに向かって、焦っても仕方がないと言わんばかりに、夕食時に、まずは乾杯をしようと酒を勧めるのでした。

 

しかしイーフレイムは仕事に差し障るからとこれを拒否。まるでトーマスを相手にしない態度を見せます。〝何だ!俺の酒が飲めねえっていうのか!〟とトーマス。二人の間に緊張感が走ります。もう最初からこの二人の言動に目が釘付けになります。まるで世界に彼らだけといったような場所で、水と油のような性格の二人がうまくやっていける訳がなく、これはえらいことになったな、と画面を食い入るように観ておりました。

 

▼この白い灯台がもう一人の主人公のようでした

 

眩惑の光を放つ灯台という白い魔女

 

「ライトハウス」というのは〝灯台〟を意味していますが、これが何ともいい形をしていまして、もともと高台にあるから背も高くなくて、だから人間を収める位置から撮ってもライトがすごく大きくはっきりと見えるのです。夜になって光を放ち始めるとインパクトが大で、その光の中に吸い込まれていきそうになります。その白亜の姿は、まるで人間の生き血を吸って生きる魔女を彷彿とさせたりも。

 

そして、この灯台の周りを飛び回るカモメの群れ。トーマスは、カモメには海で亡くなった船員の魂が宿っているといいます。だから決してカモメを傷つけてはいけないと。そのカモメにイーフレイムが手を出してしまったことから始まる世にも不思議な出来事。ドラマは徐々にいったい何が真実で、何が想像なのかの境界線が曖昧になっていき、大嵐というスペクタクルのなかでクライマックスを迎えます。

 

この映画は、灯台とカモメが映画のなかで抜群の効果をあげていて、灯台のなかの縦と横の移動を駆使した撮影の仕方や、本物かCGか見分けのつかないカモメたちの絶妙な動きに見とれてしまいます。ほぼ正方形のアスペクト比の白黒画面だと余計なものが映らないので、そこに映し出されたものに意識が集中し、濃密な映画体験を味わせてくれます。大画面の派手なSFXがなくても映画はこんなに面白い!

 

▼ウィレム・デフォーにしては珍しくお喋りな役

 

ホラー〝シャイニング〟との類似性

 

この二人の灯台守はどうなっていくのか。これが大変面白いので、ぜひ映画館でご覧いただきたいのですが、私は本作を観ていてスタンリー・キューブリックのホラー「シャイニング(80)」との類似性をずっと感じておりました。「シャイニング」は大雪に見舞われたコロラドのオーバールックホテル(大観荘、ですね)に閉じ込められた管理人家族の話でした。それが孤島に立つ灯台守のお話になった感じです。 

 

「シャイニング」の主人公で小説家のジャックはホテルの管理人をしながら執筆活動を始めるのですが、上手くいかず断っていたアルコールに逃げていき、遂にはホテルに巣くう魑魅魍魎の姿を見るようになります。まるでホテルそのものが主人公の一人といった風でありました。「ライトハウス」もまた、長い閉所での生活の中でアルコールに溺れていく男たちの話であり、眩惑的な光を放つ灯台そのものが主人公のようです。

 

ジャックはホテルの一室で美女に出会いますが、彼が彼女を抱こうとするとその姿は一瞬にして醜いお化けに変化します。同じようにイーフレイムは岩壁に打ち上げられた美しい人魚に出会います。神経がおかしくなっているイーフレイムが人魚を犯そうとすると、彼女の姿は怖い怪物の顔に変わってしまいます。その他にも斧という凶器など、「ライトハウス」には「シャイニング」に似た世界観が展開されてます。

 

▼ロバート・パティンソンのキレぶりが凄いです

 

トーマスを演じたウィレム・デフォーが素晴らしいですね。陽気でトーカティブでちょっと滑稽なところもあり、でも実はその仮面の下では何を考えているか分からないという灯台守を魅力的に演じていました。その相手を務める、というか実質はこちらが主人公、ロバート・パティンソンも過去作とは違った男臭さで、狂気に取り憑かれ徐々におかしくなっていく様を見事に演じていました。。

 

二人の掛け合いが素晴らしいです。ラストは悪夢を見ているようでゾッとしましたが、ぜひこれは機会がありましたらご覧になっていただきたいです。

 

トシのオススメ度:4
5 必見です!!
4 お薦めです!
3 良かったです
2 アレレ? もう一つでした
1 私はお薦めしません

 

ライトハウス、の詳細はこちら: 映画.com

 

 

この項、終わり。