フランス軍中尉の女(DVD) | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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フランス軍中尉の女(DVD)


1981年作品/イギリス/123分

監督 カレル・ライス

出演 メリル・ストリープ、ジェレミー・アイアンズ


2021年5月30日(日)の午後、自宅で鑑賞しました。


英国ビクトリア朝時代に“フランス軍中尉の女”とさげすまれた一人の女性の愛の物語を現代の俳優が演じるという二重構造のラブ・ストーリー(以上、映画.comより引用)、です。


先の「ジュリア(77)」が映画初出演となったメリル・ストリープ。当時彼女は28歳で、女優として遅咲き。アメリカ映画界の懐の深さを感じさせます。「ディア・ハンター(78)」、「クレイマー、クレイマー(79)」、「フランス軍中尉の女(81)」、そして「ソフィーの選択(82)」。〝怒涛の〟という形容詞がぴったりな活躍ですが、この頃の彼女のメディアでの取り上げられ方の凄さは同時代を生きていないと分からないかもしれません。




《感想です》


映画の冒頭で、海岸線に設けられた特徴ある長い防波堤と、机の上で〝アンモナイトの化石〟を掘り出す男性の姿が出てきます。これと同じような景色を最近どこかで観たなと考えていたのですが、ケイト・ウィンスレットが実在の古生物学者メアリー・アニングを演じた「アンモナイトの目覚め」でした。「フランス軍中尉の女」の舞台となるのは、イギリス南西部の海沿いの町ライム・レジスで、まさに同じ場所、同じ時代。


実は「フランス軍中尉の女」には、ジョン・ファウルズ(W・ワイラーのスリラー「コレクター(65)」の原作者)による同名の原作があるのですが、この主人公サラ・ウッドラフは、メアリー・アニングをモデルとして創作されたらしいのですね。しかし、この映画ではサラが古生物学者であるという話はいっさいありません。きちんとした教育を受けたと見られる彼女は秘書をしながら画家として身を立てようとしています。


サラは町の人たちから、かつて関係のあった男性を待ち続ける娼婦として、〝悲劇さん〟または〝フランス軍中尉の女〟と呼ばれ蔑まされているのですが、ドラマはこのサラに、既にフィアンセのいる古生物学者のチャールズが恋をしてしまうところから始まります。階級差別が色濃く残る田舎町の古いお話です。不倫などは許されるはずはなく、娼婦に対する理解などあろうはずもなく、また女性の自立など遠い夢物語の時代。


さて本作にはドラマ上の仕掛けがありまして、上記のようなドラマを、今の時代を生きるふたりの俳優、アンナとマイク(メリル・ストリープとジェレミー・アイアンズの二役)が〝映画で演じている〟という具合いになっています。そして、このアンナとマイクもまた不倫関係にあり、時代の異なる二つの男女の物語が交互に描かれていく構造になっているのです。そして、それぞれのお話がどういう結末を迎えるのかが見どころ。


サラに隠された意外な事実と、男性に依存せず自由を手に入れた強い女性のはしりのような(入れ子になった映画のほうの)ラスト。そして現実は映画のようにうまくは行かないというオチ(に私には見えましたが)。上質な文芸小説を読んでいるかのような気分に浸れる美しい映像と素晴らしい俳優たちの演技。81年当時、私は高校生。流行や文化に敏感なオトナな女性の皆さんの注目を集めた作品であることが、いま見るとよく理解できる気がしました。


しかし、メリル・ストリープの演技が圧巻ですね。彼女は次の「ソフィーの選択」でアカデミー賞主演女優賞を獲得することになります。






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フランス軍中尉の女、の詳細はこちら: 映画.com


この項、終わり。