大林宣彦 (映画関連書籍) | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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大林宣彦
「ウソからマコト」の映画

発行: 2017年10月30日 河出書房新社
著者: 河出書房新社編集部
価格: 本体1300円(税別)

  • 実験映画、コマーシャルフィルム、角川映画、尾道三部作、戦争や日本の「古里」と向き合った近作群――他に類を見ない独自の世界観を築き上げてきた映画作家・大林宣彦の軌跡を振り返る。(河出書房新社のホームページ「この本の内容」より」

    大林宣彦さんのこれまでの活動と〝いま〟を俯瞰的にとらえる

    会社帰りにふらりと立ち寄った駅の書店で、この「大林宣彦」というムック本を見つけました。内容は、映画監督の大林宣彦さんと、奥様であり映画プロデューサーの大林恭子さん、そしてお二人のお嬢さんであり映画他多方面で活躍されている大林千茱萸(ちぐみ)さんによる座談会がメインになっています。

    また、大林作品の常連俳優さんたち、そしてスタッフの皆さんへのインタビューや、過去に映画雑誌などに掲載された大林宣彦さんと関係者との対談、大林作品に対する評論・エッセイも再録されています。嬉しいのは、当時の撮影風景や親交の深かった方々との懐かしい写真も一緒に掲載されていることですね。

    大林宣彦さんはご自身でも多くの書籍を書かれていて、私も全部ではありませんが目を通しています。本当は、「いつか見た映画館(七つ森書館)」という大林宣彦さんが思い入れのある121本の映画について語った重厚な書籍が欲しいのですが、これが二巻組で18000円という驚きの価格。残念ながら手がでません。

    ▼いつも優しく語りかけるようにお話をされる大林宣彦監督。当たり前ですが歳をとられました{2BE147AE-7B0F-4BA4-AA1C-D35C4DAEB49E}

    今こそ、大林宣彦作品を総括し、評価すべきとき

    一方で、大林宣彦さんについては、これまでに手掛けてこられた数多い作品群を、映画評論家のようなお立場の方が個々の作品を再評価し、きちんと作家論として纏め上げられたものというのは目にしないのですね。私が見落としているのだとしたらご容赦いただきたいのですが、どなたかお書きになられないかなあと思うのですが。

    大林宣彦さんは「HOUSE/ハウス(77)」で劇場映画デビュー。私は当時小学生高学年でしたが、親戚に連れられて従兄弟と難波の南街会館地下にあった南街東宝で観ました。夏休みで若者でいっぱいだったと記憶しています。喜んだ子供たちとは対照的に叔父叔母のコメントは「わけが分からん。〝泥だらけの純情(併映)〟のほうがまだマシ」でした。

    このコメントって当時の邦画の状況を端的に表しているように思います。そして、大林宣彦さんの作品というのは、概してそういう受け止められ方をし続けられてきたのではないかと思うのです。その評価が改まったのが「転校生(82)」だったのですが、その後のフィルモグラフィーを観ても、成功作とは言えないものも結構あります。

    例えば、大林宣彦さんの場合、あまりにも前衛すぎる表現や、過剰なサービス精神というものが観客を置いてけぼりにするということがよくあるのですよね。しかしながら、そういう点もひっくるめて、私は愛すべき大林宣彦作品であると思うのですが、それでは贔屓の引き倒しになってしまいますでしょうか。

    ▼転校生のラストシーン「さよなら、わたし」を観たときの感動は、忘れられません
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    「花筐/HANAGATAMI」にかける大林宣彦さんの想い

    さて、12月16日に公開を控える大林宣彦さんの新作「花筐」。東京国際映画祭でも上映され、私も座席を予約しようと試みたのですが満席でした。来月の一般公開を待つしかないですね。既に映画をご覧になった方のレビューを拝見すると、「この空の花 長岡花火物語(12)」「野のなななのか(14)」に劣らず破壊力のある作品のよう。

    「花筐」は檀一雄の小説を原作にしており、「戦争の足音が迫る時代を懸命に生きる若者たちの友情や恋を赤裸々に描き出す(以上、映画.comより抜粋)」作品のようです。近作が全て戦争と平和についての物語であるのは、幼い頃に戦争を経験し80歳にならんとする大林宣彦さんから、後を託された私たちへのメッセージなのでしょう。

    その大林宣彦さんが、肺がんを患っておられ、そのような中で執念で完成させた「花筐」。これは、観ずにはおられません。考えると、お子様向け特撮ホラー映画と受け止められた「HOUSE/ハウス」も、戦争で恋人を失った女性の愛の物語でした。大林宣彦作品の中における戦争というのもまた確認してみる価値がありそうですね。

    ▼花筐の着想は「HOUSE/ハウス」より前にあったとのこと。心して観たいと思います{7BFBEDCD-F6E2-40C3-A6D6-B394B6FD8FA6}

    「転校生」「時をかける少女」「廃市」「さびしんぼう」「野ゆき山ゆき海べゆき」「異人たちとの夏」「ふたり」「青春デンデケデケデケ」「はるか、ノスタルジィ」などなど。この間を埋める多くの角川映画作品も含めて、80年代から90年代半ばに大林宣彦さんが世に送りだした数々の作品は、私にとっては若かりし頃の宝物のようなものなのですニコニコ

    そんな大林宣彦さんの新作がこれからも一つでも多く観られますように。

    Amebaニュース: 映画作家・大林宣彦「余命三カ月がんは撮影に役立った」

    この項、終わり。