暗殺者の家(DVD): ヒッチコック2 | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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暗殺者の家(DVD)

1934年作品/イギリス/76分
監督: アルフレッド・ヒッチコック
出演: レスリー・バンクス、ピーター・ローレ

2月8日(水)深夜、DVDで鑑賞しました。

休暇で娘とスイスを訪れたローレンス夫妻はフランス人のルイと親しくなるが、彼は殺害されてしまう。瀕死のルイから国家機密を聞かされた一家は、口封じのため新たなターゲットにされる(以上、映画.comより)、というお話です。

ヒッチコックがアメリカでリメイクした「知りすぎていた男(56)」の原型ですね。
基本的なストーリー展開や重要な見せ場はほぼ同じです。

冒頭のスイス・サンモリッツのスキー場での一幕で主要な登場人物とそのキャラクターを手際よく見せた後は、とにかく見せ場、見せ場の連続で最後まで引っ張って行きます。

今風に言えば、ノンストップサスペンス。とにかく観客を思いっきり楽しませるために作った映画で、よくぞこれだけのアイデアを詰め込んだものだと感心します。
しかも76分という時間なので、いかにタイトで贅肉のない映画か、ということが分かります。

!サンモリッツのスキー場。ローレンス(レスリー・バンクス)とその娘のベティ(ノラ・ピルヴィーム)の間にいるのが、国際的暗殺団の首領アボット(ピーター・ローレ)。
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スキー場に続くホテルのボールルームの場面では、ローレンスの妻ジル(エドナ・ベルト)がベティのために編みかけ中のセーターを使ったユーモラスなシーンが挟み込まれ、観客を笑わせリラックスさせます。

そして、一発の銃声!

優雅な舞踏会の場で突然起きる殺人事件。
一瞬、狙撃された本人も何が起きたのか分からなくて平然としているのですね、この間がいいですね。ヒッチコックは全編通して、サスペンスとユーモアを交えながら緩急自在にドラマを進めていきます。

そして、本作の面白さを決定づけているのは、何と言っても悪役のアボットを演じているピーター・ローレの魅力でしょう。

!額に大きな傷を持ち、左目は半眼、頭髪の一部が白いというアボットの不気味な顔立ちが与えるインパクトは強烈で、主人公のローレンスを食ってしまうほどです。
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この反省があったからでしょうか、リメイクした「知りすぎていた男」では悪役はあまり強い印象は残らず、逆にローレンス夫妻を演じたジェームズ・スチュワートとドリス・デイはアメリカが理想とするような夫婦像で、好感度バツグンのキャラがクリアに立っていました。

ざっくりとした印象ですが、「知りすぎていた男」の根底にあるのは〝家族の物語〟で、母親の子供への愛情が強く出た感動的な作品。
一方で、「暗殺者の家」は同じく家族の物語ではあるものの、純粋にサスペンスを追求した緊張感に溢れたダークな作品だと思います。

さて、「暗殺者の家」の最大の見せ場はアルバートホールで行われているコンサート中に遂行される某国の高官の暗殺場面。これを、ジルがいかに阻止するのかー、というところです。
ここは、ぜひ「暗殺者の家」と「知りすぎていた男」を比較しながら観てみたいですね。

!「暗殺者の家」のアルバートホールにおけるジル。「知りすぎていた男」では様々な改善がなされていて面白いです。
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そしてラストでは、暗殺者のアジト「家」を舞台にしての激しい銃撃戦が展開されます。ここの描写が結構しつこくて長いのに驚きました。
ヒッチコックの作品の中でも、思い出すかぎりこれだけの銃撃戦は他になかったのではないかと思います。

今の映画のように血が噴き出したり、派手に人が死んだりがなくて、淡々と行われるところは物足りないのですが、当時はこれでも凄かったのでしょうね。

!それより、ここでも強烈な印象を残すのがピーター・ローレでした。妙に悪役のほうに感情移入してしまい、いけませんねえショボーン
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巻き込まれ型サスペンスの古典である「暗殺者の家」。お時間があれば、ぜひ「知りすぎていた男」と一緒にご覧になってください。

オススメ度: 3
5 必見
4 お薦めです
3 興味があれば
2 もう一つ
1 駄作


この項、おわり。