2016年作品/米・独・仏/135分
監督: オリバー・ストーン
出演: ジョセフ・ゴードン=レビット
2月5日(日)、TOHOシネマズ六本木のスクリーン3で、9時45分の回を鑑賞しました。題材や時間帯の割に意外と観客が多く、半分程度の座席が埋まっていたように思います。
米国家安全保障局(NSA)がテロ対策として極秘に大量の個人情報を収集していたことを、元NSA外部契約社員のエドワード・スノーデンが暴露した事件、いわゆる「スノーデン事件」について、社会派映画監督オリバー・ストーンが、スノーデン(ジョセフ・ゴードン=レビット)を取り巻く背景や彼の繊細な内面を交えて描きだします。
TOHOシネマズ六本木、何年ぶりかです。六本木は新宿と違っておじさんには少し敷居が高いのです。
映画は、2013年、香港のホテルの一室で、ドキュメンタリー作家ローラ・ポイトラス(メリッサ・レオ)とイギリス・ガーディアン紙のコラムニスト(ザカリー・クイント)に、スノーデンが自ら歩んできたCIAとNSAでのキャリアを語り始めるところから始まります。
冒頭で、もともと彼は愛国心が強く311の同時多発テロに危機感を覚え軍に志願入隊したものの、大怪我によってその道を諦め、CIAでサイバーセキュリティに携わるようになったことが語られます。
そして、彼のこの国を愛する精神が、最後まで首尾一貫していたことが映画を観ているとよく分かります。
米国家安全保障局(NSA)がテロ対策として極秘に大量の個人情報を収集していたことを、元NSA外部契約社員のエドワード・スノーデンが暴露した事件、いわゆる「スノーデン事件」について、社会派映画監督オリバー・ストーンが、スノーデン(ジョセフ・ゴードン=レビット)を取り巻く背景や彼の繊細な内面を交えて描きだします。
TOHOシネマズ六本木、何年ぶりかです。六本木は新宿と違っておじさんには少し敷居が高いのです。
映画は、2013年、香港のホテルの一室で、ドキュメンタリー作家ローラ・ポイトラス(メリッサ・レオ)とイギリス・ガーディアン紙のコラムニスト(ザカリー・クイント)に、スノーデンが自ら歩んできたCIAとNSAでのキャリアを語り始めるところから始まります。
冒頭で、もともと彼は愛国心が強く311の同時多発テロに危機感を覚え軍に志願入隊したものの、大怪我によってその道を諦め、CIAでサイバーセキュリティに携わるようになったことが語られます。
そして、彼のこの国を愛する精神が、最後まで首尾一貫していたことが映画を観ているとよく分かります。
当時29歳の青年が、キャリアを捨てて国家反逆罪に問われてまで告発に踏みきったのは、アメリカという国を愛し信じていたからこそ、だったのでしょう。
オリバー・ストーン監督ということで、アメリカ合衆国を痛烈に批判する硬派な内容を想像していましたが、実はナイーブな青年の苦悩や彼を支え続けるリンゼイ・ミルズ(シャイリーン・ウッドリー)との恋愛や日常生活を描くドラマが正面に出ていて、人間スノーデンにフォーカスした作品でした。
スノーデンとリンゼイの関係にかなりの時間が割かれています。この場面のリンゼイの赤いニット帽と青のセーター、非常に印象的でしたよ。
もちろん、メールやSNSを通じて知らない間に個人情報を吸い上げられ、リモートで個人の生活が国家に監視されてしまう事実など、「テロの防止」という名目のもとで、何の関係もない一般市民までが国の「監視下に置かれる」恐怖も描きだしています。
少し真面目に社会のことも考えたい。
でも、あまり堅苦しいのは苦手。
やっぱり映画は面白くてナンボ、という方にオススメしたい作品です。
(以下、ネタバレあり)
映画のなかで、携帯電話のSIMナンバーから人物の所在地を特定し、ピンポイントで空爆して殺してしまう模様が描かれています。それが、モニターからの映像で無音であるため、まるでゲームのように痛みを感じないのです。
スノーデンがそれを見て、「この画面の人物が確かにその携帯電話の所有者であることは調べたのか?」と質問するのですが、もちろん答えはNOです。もう、とにかく怪しい奴は片っ端から殺してしまえという感じで、311以降はテロ撲滅のためなら何でもありのようになるのですね。
そうすると、怪しい人間に繋がっている友達の友達はみな友達だの形式で、ネットワークが世界中にドンドン広がって行って、もう怪しい奴だらけになるのですが、そこをオリバー・ストーン監督はイメージ映像で面白く表現しています。
もともとオリバー・ストーン監督は、「プラトーン(86)」「ウォール街(87)」の頃から、社会的テーマを扱いながらも、それを娯楽映画としてラッピングするのが上手い監督でありました。
「スノーデン」でも、その作風は変わっていませんでしたね。ただし、これら往年の作品と比べてみると、「スノーデン」の切れ味はあまり鋭くなく、問題への突っ込み方がオブラートに包まれているように感じました。
それと、本作ではジャーナリズム側の難しさも描かれています。
スノーデンの内部告発を記事にして出すのか出さないのか、出すなら内容はこれで大衆に伝わるのか、ワシントンとロンドンの時差がある中でタイミングはどうするのかなど、香港にいる記者たちがイギリスの本社とやり合う姿が描かれ、この辺りも面白いですね。
さて、トランプ氏がアメリカ大統領に就任し、本当に今後何が起きるか分からない状況ですが、この作品が今という時期に公開されているのは単なる偶然かもしれないものの、色々と考えさせられてしまいます。
「いつも正しい判断ができる人間が権力を握っているとは限らない」というなかでは、たとえ仕組みだけであってもそれを完成させてしまうのは危険であるという話が本作では出てきます。
日本についても、「スノーデン事件」を対岸の火事のように見るのではなく、自分ごととして捉え、誤ったことが無関心のうちに進んでいくことのないように考えなければならない時期にあるように思います。
キャストのなかでは、ジョセフ・ゴードン=レビットがスノーデンに成り切っていて、昨年の「ザ・ウォーク(15)」に引続き、好演しています。あと、久しぶりに、ニコラス・ケイジがCIAの教官として登場していましたよ。
童顔、なで肩の女性的な印象の強いジョセフ・ゴードン=レビットですが、少し貫禄が出ています。
あと、ルービックキューブが小道具として上手く使われていましたね。これはネタを言ってしまうと面白くないので、ぜひ映画館でご確認下さい。
オススメ度: 4
5 必見
4 お薦めです
3 興味があれば
2 もう一つ
1 駄作
この項、おわり。