柳宗悦は、私たちが日常生活の中で使う道具の中に美しさ

があることを発見しました。それは、人間の長い歴史が培って

きたものです。生活の知恵、美を愉しむ心、人間への思いやり

などが、道具や手仕事には篭められているのです。

 柳宗悦の「手仕事の日本」は、日本各地に残っている、道具

使った手仕事を20年以上の取材に基づいて纏めた労作です。

昭和18年に、「後記」が書かれているのですが、戦争の影響

により、出版されたのは昭和23年になってからです。


 柳はその「後記」の中で、日本に残っている手仕事が「昔に

比べたらずっと減って」いると述べています。ところが今はもう、

それから70年以上も経っています。現代日本に残る手仕事は、

今や、絶滅危惧になろうとしているのかもしれません。

 確かに「手仕事の日本」に描かれた道具の数々は、普段の

生活からは姿を消したように思われます。もっとも、観光地の

土産物や一部の専門店にはあるのかもしれませんが。

 もちろん今もなお、「日本の手仕事」が生活に密着している

シーンも、どこかにはあるに違いありません。ただ、それらが

珍しくなってしまったことは事実だと思うのです。


 「手仕事の日本」を、決定的に日常から駆逐したのが、欧米

から持ち込まれた生活スタイルでした。そこに、電気の活躍が

あることを見逃すことはできません。安全を顧みない低価格の

電気によって、手仕事は淘汰されつつあるのです。

 電気による利便性の多くは、時間と労力の節約です。そこで

大切になるのは時間と労力の使い方だと思います。現代人は、

情報やエンタテイメントを求めています。ここでも皮肉なことに、

電気は中心的な働きをしているのです。


 私たちにとって大切なことは、電気に使われるのではなく、

賢明な電気の使い方を学ぶことだと思います。電気の使い方

が賢くなれば、電気の作り方も賢くなるはずです。

 つまり、短期的な利益で原発を稼働させるのではなく、安全

や放射性廃棄物の処理技術が完成されるまでは、原発封印

の結論が導かれるに違いありません。そうすれば心の篭った


手仕事の美が、再び蘇ることも期待できるのです。