私が住む近畿地方では10月29日に、そして関東地方では
11月18日に、いずれも気象庁から「木枯らし一号」が吹いた
との発表がありました。関東地方では、昨年より23日も遅い
とのことでした。
この「木枯らし一号」は、気象庁が明確に定義しています。
つまり、「10月半ばの晩秋(ばんしゅう)から11月末の初冬の
間に、初めて吹く毎秒8メートル以上の北よりの風」とのこと
だそうです。
[ご参考①] 気象庁の「木枯らし一号」に関する説明です。
http://www.jma.go.jp/jma/kids/faq/a3_31.html
けれども、私が毎年感じる木枯らしは、このような科学的な
データとは、全く無関係なものです。私にとっての木枯らしは、
計測するものではなくて見るものなのです。今年は、まだ私は、
木枯らしを見ていません。
木枯らしが吹くまでは、秋風が吹いています。幸いなことに、
気象庁は秋風については定義をしていません。私にとって、
今も吹いているのは秋風なのです。
私にも、秋風は見えません。ただ、秋風は薫りを嗅ぐことが
できます。それは、豊かな稔りの匂いです。さすがに、今は、
その香りは薄まってしまいましたが。
さて、木枯らしが私に見えるのは、木枯らしによって色褪せ
てしまった紅葉の落ち葉が運ばれるからです。ある時は歩く
スピードより速く流され、また、ある時は円を描くように、同じ
空間を飛び跳ねる景色が、私の木枯らしです。
私の歩く道沿いには、わずかな紅葉しかありません。まだ、
しっかりと枝に支えられて輝いています。ただ、もうすぐ落葉
する予感がします。そうすれば、間もなく、木枯らしが見える
ようになるでしょう。
実は、木枯らしは目に見えるだけでなく、音でも聴こえてき
ます。ショパンの有名な練習曲(op25-11)です。激しい風で、
私がイメージしている木枯らしよりも、ずいぶん厳しい寒さを
感じます。日本とポーランドの風土が違うのでしょうね。
[ご参考②] 私の好きなボリーニの演奏です。
http://www.youtube.com/watch?v=YJMIIxm1bGo
凩(こがらし)に 匂ひやつけし 帰花(かえりばな) [芭蕉]
帰花は、「春や夏に咲くはずの花が、冬の初めの小春日和
に誘われて思い出したように一輪二輪咲く、その季節外れの
花のこと」(「週刊日本の歳時記」30号)だそうです。木枯らし
にも薫りがあるとは。芭蕉の感性に脱帽です。