「ジャン・クリストフ」は、言うまでもなくロマン・ロランの

名作であり、主人公の名前でもあります。ベートーヴェン

の魂をイメージして描かれていることは有名です。

 この長い物語の中で、一つの印象的な短いエピソード

あったように思います。印象的なのに断定できないと

いうのは、私の記憶が曖昧になってしまっているのと、

少し調べてみても、該当箇所が見つからないためです。

 ですから、少しあやふやなままですが、私の頭には、

はっきりとした映像が残っています。それは、とある田舎

の見知らぬ村で、意気消沈した主人公が村人の踊りに

誘われるまま、手を取り合って踊り興じる場面です。


 この場面を想い出したのは、今朝、たまたま郵便受け

に案内状が来ていたからです。それは、兵庫芸術文化

センター管弦楽団の公開リハーサルへの招待でした。

嬉しい、二度目の会員特典だったのです。

 11月2日の本番前日に行われる公開リハーサルの曲

は、ベートーヴェンの劇音楽「シュテファン王」序曲op117

が予定されています。演目は序曲だけなのですが、この

音楽の終曲は「万歳、我らの子孫」という合唱です。

 思い起こすと、「合唱」のフィナーレ、歌劇「フィデリオ」

の終曲など、ベートーヴェンには、民衆が手を取り合って

人間賛歌を謳う理想郷があったのだと思います。

 その理想郷に対する共感が、ロマン・ロランにもあった

のだと思います。その想いを、現代から未来に向けて、

どうしても私は伝えなければならないと、改めて決意した

次第です。


 「ジャン・クリストフ」を、また読むことにしました。