[ご参考] 画面中央右下のテレビCMを見てください。

http://sodan.e-65.net/index.html?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=201207


 このCMを、最近よく見るようになりました。全体的に、

とても柔らかいものです。認知症を誰もが罹る病気だと

言い、気になったらすぐ近くの医者に相談できるとして、

医療機関の紹介ダイアルをPRしています。

 「早く対応すれば、今の生活を、より長く続けることが

できる」との口上は、大変抑制された言い方で、好感を

持つことができます。ちびまる子ちゃんと友蔵じいちゃん

が、暗い話題を明るくしています。


 ひところ、公共広告機構が、さかんに良心的なCMを

流していましたが、最初、私はその類だとばかり思って

いました。ところが、最後の場面で、奇妙なものに気が

付いたのです。

 それは、まるでキャプションのように挿入されている、

2社の製薬会社のロゴマークです。よく考えてみれば、

認知症の治療には、薬が使われることが少なくありま

せん。何のことはない、薬の広告だったのです。


 この広告には、私はとても深く考えさせられました。

一つは、高く評価する立場からです。直截な表現では

なく、認知症に悩む人や家族に対して、とても優しい

情報提供です。強制的な圧迫感はありません。

 薬の広告には、押しつけや脅しに近いものが、結構

たくさんあります。それらの品のないものに比べると、

この広告はスマートで好感の持てるものです。


 ただ一方では、とても怖ろしい陰謀を感じもしました。

つまり、とても自然に多くの人へ、認知症への恐怖を

植えつけているように思ったのです。

 このCMに乗せられて相談して、認知症と言われて、

診断と投薬の生活に入る人が、「今の生活を、より長く

続ける」ようになることが、本当の意味で幸せなのか、

少し疑問に感じるのです。


 私の亡くなった両親も、晩年は認知症だったかもしれ

ません。診断を受けなかったのは、認知症との意識が

本人の意欲にマイナスになるのではないかと思ったの

と、目立つような支障がなかったからです。

 これは、とても難しい問題です。このCMを単純に非難

するのも、私には何か抵抗感があります。ただ、こうして、

認知症への流れが作られてしまうことに、私は少し、ひっ

かかりがあるのです。

 これは私の、ごく私的な、認知症に対する、ささやかな

抵抗なのかもしれません。