労働時間や休日は、労働者の生活に大きな影響を与える

ものです。労働者は時間を切り売りしている、との考え方も

ありますが、一人の人間を、労働と生活に分けることは容易

なことではありません。

 公私混同は非難されることですが、実は、時間軸の中で、

公私を峻別することは難しいことです。「仕事が人を作る」と

言われるように、労働と生活は密着しているのです。


 労働時間等については、細かく就業規則に定められてい

ます。けれども、わざわざ就業規則を、改めて確認する人は

多くありません。ただ行動ベースで考えると、その日の終業

時間を気にして働いている人は、少なくないと思います。

 特に、終業後に私的な予定があれば、残業にならないよう

いつもより仕事を効率的にしたり、新しい仕事に手をつけない

ようにするものです。社員としては、褒められることではありま

せんが、人情としては理解しやすいことです。


 ところが、仕事は自分のペースで進むわけではありません。

むしろ、努力の及ばない理由で、忙しくなることの方が多いと

思われます。ですから、残業を命じられて、涙を呑んで予定を

変えなければならないこともあるのです。

 どれだけ苦労して、チケットを手に入れた演奏会であっても、

仕事の具合によっては、どうしても会場に行くのを断念しなけ

ればならないことだって起こります。諦めざるを得ません。

 中には、事前に職場の理解を求めたり、前もって休暇にして

しまうなどの工夫をする人もいます。このような我がままを許し

てくれると、「理解のある職場」だと感じるのです。けれども、

そのような職場の業務効率が、いつも良いとは限りません。


 よく言われるのは、デートの約束があるとき残業を命じられ

たら、仕事を選ぶか恋人を選ぶかの問題です。私の若かった

時代は、間違いなく仕事が優先していました。

 その後、確かに、恋人を選ぶ若者が増えていたようですが、

今はどうなのでしょう?もちろん、恋人との関係や仕事の重要

性によって、現実には選択が変わるのでしょうが。