動物との全面戦争を決定した代表者会議の議長は、早速、
決定事項を最長老のノルウェー・スプルース(えぞ松に似た木)
に報告しました。植物の世界では、代表者会議で決まったこと
については、最長老の了解が必要だったのです。
[ご参考] 世界で一番古い木、ノルウェー・スプルース
http://labaq.com/archives/50975558.html
または、
最長老は、新しい芽を吹きだした枝を揺らしながら、代表者
の興奮のために赤らんだ幹をじっくりと見ながら、おもむろに
口を開きました。
「私は一万年もの間、こうして大事な根を守って生きてきた
のじゃ。この世で起こる、色々なことを見てきたものよ。昔も、
同じようなことがあってな、我々が動物と全面戦争をしたこと
があったよ。」
「そうですか。最長老も戦われたのですね。」
「ああ。皆で固まって動物を近寄せもしなかったのじゃ。」
「やぁ、やはり我々は強かったのですね。今度も、皆で戦い
抜こうと結束しています。動物なんぞに負けてなるものですか。
今度は、私たち若者にお任せください。」
「ところがな。・・・・・・」
最長老は、もったいつけるように、ここで少し息を呑みました。
それから、血気に逸る若い木々たちを抑えつけるように、ぐっと
言葉に力を入れて話し出したのです。
「戦争は、後味の悪いものになってしまったのじゃ。動物たち
が、森からいなくなって、我々は上手く栄養分が摂れなくなって、
多くの仲間が枯れてしまったのじゃ。それで、その時に皆で決め
たことがある。それは、もう一度、動物との間で全面戦争が起こ
りそうになったら、ある決心をしようということじゃった。」