1914.9.24(承)



 反戦的だった一母親の手紙の本文です。少し長が目の引用

をしておきます。



 「あの子供たちを、すべて祖国という観念のために殺すという

思想、その思想の中で最も野蛮なものが、私に戦慄を起こさせ

ます。……全フランスを風靡している、この偉大な英雄的な気風、

この偉大な呼吸は、私の個人的な不安にもかかわらず、時には

私に一種の陶酔を与えます。それは、何と美しいことでしょう!

……私の愛児、甘やかされた優しい少年だった彼が、一人の

英雄に変貌したことは、未だかつて経験したことのない母性愛

の充溢を私に与えました。」



 この手紙に関して、ロランは「注目すべきこと」として、次のよう

なことを記録しています。



1. すべての魂を一掃する旋風の力強さ

2. 今日の人々の魂の正確な尺度、その最高の表現は愛国的

理想、それが含むあらゆる犠牲、暴力、そして盲目

3. 今日の人間はまだ動物にごく近い

4. 存在の充溢を遂行させる戦闘において、動物性のために身

を捧げることが、人間の個人生命の、人間の歓びの、そして

人間の美徳の絶頂であるのだ!



 母親の手紙には、人間の本質的な感覚が表現されています。

哀しいことに、戦争に息子を取られたという感情よりも、英雄を

生んだという満足感が優先されているのです。反戦の女性でも、

戦争を間近に見ると、このように変貌してしまうのです。

 それは、与謝野晶子の「君死に給うことなかれ」とは、まさに

対極にあります。その晶子でさえ、その反戦思想も、実は徹底

していなかった、との意見もあります。

 人間が闘いを放棄して武器を手放すためには、死の美意識を

超えなければならないのでしょうか?平和を貫くことの難しさが、

ロランのメモには込められているのです。