囲碁では、一つの勝負を「一局」と数えます。碁敵から、

「一局どうですか?」と言われたなら、勝負を挑まれたと

思わなければなりません。

 この一局と人生が似ているのは、特に、最初から終わり

までを反芻する場面においてです。人生は、生まれてから

ずっと反省の連続です。何事にも不器用な私などは、あの

時こうすればよかったなどと思い煩うことが多いのです。



 実は囲碁でも、私はしきりに反省しなければなりません。

他のゲームでも、もちろん反省は大切です。けれども囲碁

では、人生以上に反省することがあります。

 あそこでこう打てば、勝てたはずだ。我ながら巧い手を

思いついたものだ。勝っても負けても一局を反芻します。

自分の愚かさを悔いてみたり、相手の妙手に感心したり。

さながら人生そのものに思える所以です。


囲碁の実力を向上させるためには、プロの棋譜(勝負の

経緯を記録したもの)や上級者との打ち碁を再現すること

(「石を並べる」と言います)が、大いに役立つ方法です。

 人生においても、偉人の伝記などを読むことが大切だと

思います。私のように意志の弱い人間には、目標を持って

努力するための、発奮の起爆剤なるのです。



 囲碁では、一局が終わるとさっそく感想戦が始まります。

昔、勝負の経過を並べ直すことができれば、アマチュアの

の初段だと聞いたことがあります。

プロでも、自分の打ち碁や昔の名人の打ち碁を、じっくり

並べ直して学習されるようです。人生でも、自分の行動で

反省すべきところを直したり、他人の人生から学んだりする

ことがあるものです。



 人生にも囲碁にも大きな岐路が沢山あります。そのような

選択に迷う場面では、それぞれに自分の価値観に従って、

優先順位を付けて前進するのです。

 選択肢が多いことも、囲碁が奥深く人生と同じだと言われ

る原因になっています。ですから私は、囲碁から人生を学ぶ

こともできると思っているのです。