1914.9.20
ある老フランス人(パリ学区名誉視学官ペリエ氏)から、
9月9日付の手紙を受け取って、ロランはとても感動してい
ます。それは、ロランが8月29日に発表した、ハウプトマン
宛の手紙に感動した手紙でした。
この手紙は、第一次世界大戦を、最終戦争にするつもり
でいた、当時の好戦的な大半の人々から孤立無援だった
ロランには、力強い励ましになったものと思われます。
また、ドイツの詩人リアハルト・デーメルが50歳で軍隊を
志願し、初めての新兵としての勤務を、子供のように喜ん
でいるとの報に接し、戦死したペギーを想い出して、自嘲
するように嘆いています。
「デーメルやペギーのような二人の人間が、世界の自由
のために、同じ熱誠をもって殺し合いうる戦争というものは、
奇怪であり、滑稽ではないか?」
私は、恐らく戦争とは絶望的な誤解から始まるものでは
ないかと思っています。お互いに、相手に対して妥協でき
ないという幻想の中で、相手の意思を抹殺しようとの決断
に至るのです。
その結果、善意の人が殺し合うことになってしまいます。
ロランが「奇怪」、「滑稽」というのは、この誤解が招く重大
な結果を嘆いたものなのです。
また、これとは別に、ロランはベルンのドイツ系スイス人
であるフェッター教授(仔細不明)から、慇懃な長い手紙を
受け取りました。
その手紙で、フェッター教授は、「この戦争が少なくとも、
大国家の無意味さを諸民族に感ぜしめ、民主的、連邦的
理想の実現に彼らを導くことを望んでいる。」と、ロランと
似通った思想を表明していたようです。