「冬の旅」などを聴いていると、シューベルトという人は、
いかにも魂の彷徨者と呼ぶに相応しい人だと思います。
それも、浮揚する魂が音符として聴こえ、それをそのまま
音楽にできた人です。
だからこそシューベルトは、聴く者の魂の中に何の抵抗
もなく、純粋な魂の響きをストレートに伝えてくれるのです。
シューベルトを愛する人が、その音楽に惹きつけられるの
は、まさに、この点にあると思います。
幻想曲の「さすらい人」や「アルペジオーネ・ソナタ」など、
シューベルトの作品の中で、彷徨う魂の描写がある音楽
の例には事欠きません。
ただ、シューベルトの場合は、暗いだけの彷徨者ではあり
ません。むしろ、彷徨していることを愉しんでいるようにも
思えるのです。
愛する人と手をつないで、込み上げてくる歓びを噛みしめ
ながら、気ままに花園の小径を散策するのも、シューベルト
の彷徨であり憧れなのです。
この曲こそ、その集大成であるように思います。
それだけに、とても演奏の難しい曲だと思います。私は、ピアノを弾く
ことができませんが、音楽としての心の伝え方は、楽器を
超えて共通するものがあると思うのです。
まず、素直で純朴な魂の主でなければなりません。ピアノ
の技巧などを感じさせる演奏では、とてもシューベルトの心
を伝えることはできないと思うからです。
その意味で、私はヘブラーの演奏が大好きなのですが、
公開されていません。同じ意味で、ミケランジェリにも期待
するのですが、こちらは聴いたことさえありません。
前回貼付したブレンデルが、私が望むような演奏に最も
近いものでした。今回は、私が見つけた演奏の中で最長
のリフテル(47分)と最短(32分)のホロビッツを貼付します。
[ご参考①] リフテルの演奏です。特に、第一楽章を極端に
ゆったりしたテンポで弾いています。
http://www.youtube.com/watch?v=ZbJtHzaFpBQ&list=PL08AD0154CB17CE57&index=1
[ご参考②] ホロビッツの演奏です。とてもシューベルトは、
この速さでは弾けなかったでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=m4BRfVqWHgk&list=PL08AD0154CB17CE57&index=9