この曲は、シューベルトにしか創ることのできない、魂の
孤高を謳った作品です。ここには、憧れを求めて彷徨う魂
の軌跡が描き込まれています。
「冬の旅」では、ミュラーの言葉の力を借りました。その
シューベルトが、同じように憧れを謳う曲を、今度はピアノ
だけで表現しきったのです。
[ご参考①] エンヤの讃美歌111番Adeste Fideles
「神の御子は今宵しも」です。
http://www.youtube.com/watch?v=VHafW6OpA6w&feature=related
まず、最初に、この讃美歌をお聴きいただいたのは、この
メロディが、ピアノ・ソナタ全体の重要なポイントになっている
からです。実際、第一楽章の終わりに、この讃美歌がかなり
明確な形で出てきます。
何かを求めて音が彷徨う第一楽章は、このピアノ・ソナタの
核となっている楽章だと思います。そして、その中での長い
彷徨の後に、ついに憧れの讃美歌に到達するのです。
けれども、ここはまだ最初の楽章であり、終曲ではありま
せん。ですから、讃美歌を想い出して落ち着く和音とともに、
冒頭にも現れた不気味なトリルが低く響き、次の楽章を要求
するのです。
第二楽章では、再び魂が永遠の憧れを求めて動き出します。
ゆっくりと静かに、一音一音を確かめるように、音を求める旅
が始まるのです。そして第三楽章では、気分転換をして踊り
出したくなるようなスケルツォに酔い痴れます。
第四楽章になると、もう目標を定めたように、シューベルトに
迷いはありません。勢いよく転がるようなテンポで、前に進み
始めるのです。
[ご参考②] ブレンデルの端正な演奏です。
http://www.youtube.com/watch?v=s2irIzawVcc&feature=bf_next&list=PL08AD0154CB17CE57
いきなりですが、この有名な讃美歌をお聴きください。