あまり知られていない名曲もたくさんありますが、人気の

ある名曲には、感動的な曲が多いと思っています。

 私は、何度も同じ曲を聴くことによって、感動が深まると

思っていますから、人気のある音楽を名曲だと思うのは、

聴き慣れているためだとも思います。それでも、やはり

心が揺さぶられることに違いはありません。


 「死と乙女」も、大変人気のある作品です。私も、学生

時代に、名曲喫茶などで聴き比べに夢中になったもの

でした。これには、音楽そのものの魅力だけでなく、表題

の中に潜む妖しさも、後押ししていたように思います。

 曲全体に、シューベルトの若い情熱が迸り出ています。

けれども、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲op20 より

深刻で切迫感があります。


 シューベルトは、ロザムンデなどのように、気に入った

メロディーをいろいろな曲に活用しました。この曲でも、

1817年に作曲したの歌曲D.531が、第二楽章の変奏曲で

とても魅力的な展開をします。

 曲想に恵まれていたシューベルトですから、安易に使い

まわしをしたのではなく、そのメロディの可能性を追求した

のだと思います。「さすらい人」「ます」「しぼめる花」の主題

も、歌曲だけに留まることなく、それぞれピアノ曲や室内楽

で活用されています。どれも名曲で大好きです。