私も企業戦士だったことがあるので、東電の混乱はよく
わかります。普通の会社なら、もっと酷い状況になっていた
ようにも思います。曲がりなりにも、原発事故をここまでに
留めていることは、「東電ならでは」の一端かもしれません。
けれども、だからと言って東電が責任を逃れられるとは
思っていません。東電は日本を代表する優良企業であり、
人材や財務などの経営資源にも恵まれていたのですから、
現在の対応は、できて当然のことです。
組織が混乱するのは、指揮命令系統が機能しなくなる時
です。どれだけの緊急時であっても、東電ほどの会社で
指揮命令系統が混乱することはありえないことだと思います。
東電が混乱しているのは、日本政府や諸外国、財界や
原子力産業界、大口顧客、被災者や国民などを睨んで、
どのように説明するかを考えるからです。このような意識は、
企業として当然のことなのです。
ですから、東電の混乱は、利害の一致しない相手に納得
の行くようなストーリーを考えていることに起因しています。
これまでのポジションを守ろうとするあまり、矛盾した説明を
強弁していことのデメリットが見えなくなっているのです。
必要不可欠なエネルギーである電力の担い手として、
東電には保身を顧みない真摯な姿勢を望みたいと思います。