Ⅰ.用量と作用

1.用量

・ヒト(患者)または動物に投与する薬物の量のことを用量(dose)という。

・1回量や1日量で示すが、特に動物の場合では体重1kg当たりの量(mg/kg)で表すことが多い。

・特殊な例としては、薬物の用量を体表面積当たりの量として算出する場合があり、抗悪性腫瘍薬に適用されることがある。


2.用量-反応曲線

・薬物によって生体に引き起こされる反応は、機能的な変化、または生化学的変化として測定される。

・一般に薬物の用量が増すと反応も多くなる。

◆横軸に用量、縦軸に反応をとって、用量と反応の関係を図示するとS字の曲線が得られる。これを用量-反応曲線という。

◆作用の強い薬物ほど、その用量-反応曲線は左側、すなわち低用量領域に位置することになる。

・薬物の効力は臨床用量の設定や類似作用薬の効力比の算出などに役立つ。

◆用量-反応曲線で反応が頭打ちになる部分、すなわち最大反応または最大効果といわれるものは、薬物の効力を示す指標となり、治療薬の選択においても重要となる。

・目的とする治療効果の程度によって、薬物の選択は分かれる。


3.無効量

◆薬理作用を発現しない用量を無効量という。


4.最小有効量・最大有効量

◆薬理作用を発現する最小の用量を最小有効量という。

◆薬物が最大の作用を発現する用量を最大有効量という。


5.最小致死量・確実致死量

・薬物の用量を増加していくとき、動物が死亡し始める用量を最小致死量といい、全例(100%)が死亡する用量を確実致死量という。


6.中毒量

・中毒症状が発現する用量のことを中毒量という。

・ジギタリスを中毒量投与すると激しい嘔吐を起こし、進行すると重篤な不整脈で死亡する。

・投与経路や生体側の状態によって変化する。


7.50%有効量(ED50)

・薬物を投与した一群の動物の50%において、基準と定めた効果を発現すると推定される用量で、効力の強さを示す指標である。


8.50%致死量(LD50)

・薬物を投与した一群の50%を死亡させると推定される用量で、単回投与毒性(急性毒性)の強さを示す指標である。

・さらに用量を増やすと確実致死量に至る。

・現在では概略の致死量(おおよその最小致死量)を求めればよいとされる。


9.安全域(治療係数)

◆LD50とED50の比が大きい薬物ほど安全である。

◆安全域=LD50/ED50

・安全域の狭い薬物としてジギタリスが知られている。


今日はこれで終わります。