【2】生命倫理の基本原則
種々の倫理原則が存在するにしても、それらの倫理原則には上下関係があるのである。そして、生命倫理の『基本原則』とは、まさに上位の原則であり、種々の事柄の倫理的是非を検討する場合にまず適用してみなければならないものである。
1)侵害回避の原則
・『無害』の原則、『無危害』の原則などとも呼ばれる。
・他者を故意または直接的に害しないようにすること、および害悪を被る危険に他者をさらさないようにすることである。
◆避けるべき害悪
①生体(身体)的害悪
②利益の侵害
③所有物の不当な奪取
④言動または行動の自由の不当な制限
・患者に対す侵襲行為は『二重効果』の原則により正当化される。
・その意味はある1つの行為がよい効果と悪い効果の2つを生ぜしめる場合に、その行為はよい効果を意図しているなら正当化されるというものである。
・『侵害回避』の原則は、他者(患者)に何らかの害悪または危険を与えることについて、その理由を適切に説明できることを要求するのである。
2)恩恵の原則
『善行』の原則とも呼ばれる。
①害悪を妨げる…予防的医療
②害悪を除去する…腫瘍の切除
③善を促進する…生殖補助医療
『恩恵』の原則は、互恵を確保しようとするものである。
・医療における『恩恵』の原則の原型は『ヒポクラテスの誓い』の中の『医師は自己の能力と判断に従って患者に恩恵を与える』というパターナリズムである。
・このパターナリズムが医の倫理として、強く批判されてきているものである。
◆個人にとっての『最善の利益』とは
①生体的な善
②心理的な善
③社会的な善
④法的な善
⑤宗教的な善
⑥職業的な善
⑦美的な善
⑧その他の善
・医療者は、何が患者にとっての『最善の利益』であるのかを知るためには、患者自身にそれを問わなければならない。
・『恩恵』の原則は、『医師の患者自身の判断に従って患者に恩恵を与える』に変更されなければならない。
・医科学実験において、被験者には恩恵がないであろうことが予想される場合には、被験者の自由意志に基づく同意が絶対に必要である。
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