この「しりとり物語16」というテーマのBlogでは、2018年10月からスタートしたFMおたる「木曜Cheers!」内のコーナー、「しりとり物語~ひとかけの未来」のストーリーをご紹介して参ります。コーナーの仕組みはこちらのBlogをご参照下さい。

 

 

ひとかけの未来~第8話「ゲーム音楽~草むらに潜む影」

レベル2のヒントとは、いかなるものだろうか?そもそも、レベルが変わると、どのような違いが表れるのだろうか?そんなことを思いながら、俺は電車に揺られていた。電車にまつわるゲームについて考えたり、中吊り広告にゲームの話題を探したりしていたが、これといってピンと来るものはない。

その時、車両がガタンと揺れた。立っている乗客の吊り革を掴む手に、グッと力が入る。誰もが事なきを得たと思った瞬間、左耳に電子音が飛び込んで来た。これはゲーム音楽だ。だが、なぜ電車の中で、それも突然流れ始めたのだろう。

音のする方を向くと、大学生くらいの男性がスマートフォンに指を滑らせている。耳にはイヤフォンが装着されているにも関わらず、音は俺の耳にもハッキリと聞こえた。どうやら、先ほどの揺れでイヤフォンが抜けてしまったが、ゲームに夢中で気づいていないようだ。

乗客たちも徐々に気づき始め、怪訝な表情を浮かべる者もいる。伝えるべきだろうか?だが、電車を降りるまでの短い付き合いだ。自ら気づく可能性もあるわけで、疎ましく思われるかもしれない状況で、わざわざ乗客の代表になることもないだろう。

「イヤフォン、抜けてるよ。」
「あ、すいません。」

一瞬の出来事だった。反対隣りに座っていた男性が、一瞬で問題を解決したのだ。ゲーム音楽は止み、気にかけていた乗客にも安堵の表情が窺える。誰もがあるべき平穏取り戻し、俺の心だけがざわついた。面倒に巻き込まれまいと躊躇した数秒前の自分を恥じた。

「ゲーム音楽」という言葉は、確かに未来へのヒントになっていた。そして、俺は未来を選択した。結果としてバツの悪い想いしたが、これもまた自分で選んだ未来である。

翌朝、俺はアポフと立ち上げ、設定画面を開いた。次のレベルに行くことも考えたが、もう一度レベル2を試そうと思い、設定画面を閉じるとToday’s pieceをタップした。表れた言葉は「草むらに潜む影」だった。

(次週に続く…)

 

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げんこつ