Grown-up Christmas List~今、サンタに願うなら


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「Grown-up Christmas List」


Do you remember me
I sat upon your knee
I wrote to you
With childhood fantasies


Well, I'm all grown up now
Can you still help somehow
I'm not a child
But my heart still can dream


So here's my lifelong wish
My grown-up Christmas list
Not for myself
But for a world in need


No more lives torn apart
That wars would never start
And time would heal all hearts
Every man would have a friend
That right would always win
And love would never end

This is my grown-up
Christmas list


What is this illusion called?
The innocence of youth
Maybe only in their blind belief
Can we ever find the truth?


There'd be no more lives torn apart
And wars would never start
And time would heal all hearts
Every man would have a friend
And right would always win
And love would never end


This is my grown-up Christmas list
This is my only lifelong wish
This is my grown-up Christmas list


【シーン1】


おがわとーるのブログ-Grown-up1

おもちゃ売り場から、スポーツ用品売り場に移動する。野球用品のコーナーへ行き、整然と並べられたグローブを眺める。気に入った物に手を持っていくと、人差し指を押し付け、そのまま左へすーっと動かす。緑色の靴下の上で手を止め、指を離すとグローブは靴下の中に消え、サンタクロースの声が流れる。


「ふぉっふぉっふぉ~!スコット君が欲しいのは、このグローブで間違いないかなぁ?」


靴下の横に2本のキャンドルが現れる。1本には炎が灯され「Yes」と書かれている。もう一本のキャンドルには「No」の文字があるだけだ。「Yes」をクリックすると、靴下は星空へと吸い込まれ、再びサンタクロースの声が流れる。


「クリスマスまで良い子にしているんだよ、スコット君!Merry Christmas to all!ふぉ~っふぉっふぉっふぉ~!」


あとはクリスマスの朝になれば、サンタの格好をした宅配便の人が、プレゼントを家に届けてくれる。


8歳のスコットが知っているクリスマスは、全てコンピュータースクリーンの中にありました。



【シーン2】


おがわとーるのブログ-Grown-up2

サンタさんとの会話を終え、キラキラした画面を閉じると、スコットの頭に1つの「はてな」が浮かんで来ました。


「もしコンピューターがなかったら、どうやってサンタさんにお願いするんだろう?」


一生懸命考えているうちに、「はてな」はどんどん広がっていきます。すると、おじいさんが部屋に入って来ました。スコットはおじいさんに訊いてみることにしました。


「ねぇ、おじいちゃん」
「何だい、スコット?」
「おじいちゃんが子供の頃にも、サンタさんはいたの?」
「ああ、いたとも。おじいちゃんも今のスコットみたいに、毎年プレゼントをもらったもんだ」
「どうやって?おじいちゃんが子供の頃にも、コンピューターがあったの?」
「なるほど、そういうことか。じゃあ教えてあげよう。ちょっとこっちへ来なさい」



【シーン3】


おがわとーるのブログ-Grown-up3

おじいさんは紙と鉛筆を持って来ました。


「おじいちゃんの頃は、こうやってサンタさんにお手紙を書いたんだ。例えば、そうだなぁ・・・『サンタさんへ 僕は新しいクレヨンが欲しいです』、と。そうすると、クリスマスの朝、枕元にクレヨンが届いているんだよ。」


スコットはちょこんと上を向いて、しばらく考えていました。


クリスマスの朝、目を覚ますと、枕元に箱が置いてある。その箱は綺麗な紙に包まれ、リボンが掛けられている。リボンを解いて、包み紙をはがし、箱を開けると、中には欲しかったグローブが入っている。


スコットは「枕元にプレゼントが届く」というアイディアがとても気に入りました。クリスマスの朝を想像しているだけで、わくわくして来ました。そして、あることを思いついたのです。


「おじいじゃん。僕、パパとママのサンタさんになる!」



【シーン4】


おがわとーるのブログ-Grown-up4

小さなサンタさんの準備が始まりました。


「パパはいっつも、書くものがないって探してるから、鉛筆とメモ帳をあげよう。」


スコットは、机の引き出しから長めの鉛筆を3本取り出し、それを綺麗に削りました。次に、まだ使っていないメモ帳を見つけ、表紙にクリスマスツリーの絵を描きました。


「ママはお花が大好きだけど、枯れちゃうのが寂しいって言ってるから、枯れないお花をあげよう。」


スコットは、色紙とティッシュペーパーを使ってお花を作りました。ティッシュペーパーに水で溶いた絵の具を染み込ませたので、色んな色のお花が出来ました。


「よーし、あとちょっとだぞ!」


引き出しや押入れをガサゴソと探し回り、包み紙とリボンをかき集めます。パパには青い紙と金色のリボン、ママには赤い紙と銀色のリボンを選び、プレゼントを綺麗に包みました。


「出来たぁ!おじいちゃん、出来たよ!」
「どれどれ、ほお!こりゃ良く出来とるなぁ。よ~し、ここからはおじいちゃんサンタの出番だ。こっそりパパとママの枕元に届けておくからな。」
「うん!おじいちゃん、ありがとう!」



【シーン5】


おがわとーるのブログ-Grown-up5

まだ薄暗い部屋に、こっそりと忍び込んだ銀世界の空気が、クリスマスの朝を知らせます。身震いに布団をかぶり直したママは、視界の隅に赤い何かを捉えました。今にも眠りに戻って行きそうな瞳でその方向に目を遣ると、ついさっきまで「大人になった夢」を見ていたかのような錯覚に襲われます。ぼんやりとした意識の中で、自分がスコットの母親であるという現実を手繰り寄せ、ふっと目を覚ましました。隣で眠るパパの枕元に青い包みを見つけると、ようやく何が起こっているのかが分かりました。


「ちょっと、起きて。」
「ん・・・どうした・・・まだ早いだろ?」
「良いから起きて!サンタさんからプレゼントが届いているのよ。」


2人は部屋の寒さも忘れて、夢中で包みを解き始めました。それは、長い間しまいっ放しになっていた「幼い頃のクリスマス」を、心の箱から取り出すことでもありました。パパとママはしばらくの間、布団に包まったまま、お互いのクリスマスについて話しました。


パパは、小さなサンタさんがくれたメモ帳を使ってお礼の手紙を書き、そこに1枚の古いメモを忍ばせました。



【シーン6】


おがわとーるのブログ-Grown-up6

外はもうすっかり明るくなっています。「小さなサンタ大作戦」に没頭したスコットは、ぐっすりと眠り、いつもより遅いクリスマスの朝を迎えました。


「そうだ!パパとママにちゃんとプレゼントは届いたかな?」


スコットは、パジャマのままこっそりと部屋を出ました。足音が聞こえないように、一段一段ゆっくりと階段を下りて行くと、リビングルームに流れるクリスマスソングが、少しずつ大きく聞こえて来ます。踊り場からそっと部屋を見渡しましたが、どうやらパパもママもいないようです。


「おじいちゃん、ちゃんと届けてくれたのかなぁ。」


ちょっぴり心配になったスコットの心に、ぱぁ~っと明るい景色が広がりました。リビングルームのテーブルに、スコットの作った花が飾られていたのです。駆け寄ってみると、花瓶はママのお気に入りで、その下には「サンタさんへ」と書かれた封筒が置いてあります。スコットは花瓶の下からすっと封筒を抜き、中から手紙を取り出しました。


「サンタさん、素敵なプレゼントをありがとう。私たちはもう十分なプレゼントをもらいました。だから、これからは全ての人にこのリストに書かれているものを配ってあげてください。」


手紙と一緒に、クリスマスリストが入っています。スコットはおじいちゃんに手紙を見せました。


「おじいちゃん、僕、パパとママからお手紙をもらったんだ。」
「ほう!そりゃ良かった!サンタ作戦大成功じゃな。」
「でもね、こんなリストが入ってて・・・僕どうしたら良いの?」
「どれ、見せてごらん。」


おじいちゃんはメモを見て驚きました。茶色がかった古いメモ用紙に書かれた文字は、紛れもなくおじいちゃんが書いたものだったのです。



【シーン7】


おがわとーるのブログ-Grown-up7

それは、スコットのパパがまだ幼い頃ことでした。彼はクリスマスリストを書きながら、パパ、つまりスコットのおじいちゃんに問いかけました。


「ねぇ、パパはサンタさんから何が欲しいの?」
「パパの欲しいものかぁ・・・」
「僕、大きくなったらサンタさんになって、パパにそれをあげるから、ここに書いてよ。」


パパは窓の外を眺めながらしばらく考えると、ペンを走らせました。


No more lives torn apart
That wars would never start
And time would heal all hearts
Every man would have a friend
That right would always win
And love would never end


Not for myself
But for a world in need


人生を引き裂くような争いが 二度と起こらないように
深く刻まれた心の傷が 時に癒されるように
すべての人が友に恵まれ 真っ直ぐな志が報われ 愛が永遠であるように


自分自身のためではなく
全ての命のために


「ほら、これがパパの欲しいものだ。」
「見せて見せて!え~っと・・・難しくて分かんないや。僕、どうしたら良いの?」
「これは『みんなが仲良く幸せでありますように』っていうことだよ。」
「ふ~ん。でもパパ、それって物じゃないよ。」
「あははは!そうだな。パパの欲しいものはお店には売っていないんだ。」
「そっかぁ・・・でもサンタさんはそれをプレゼント出来るんだよね?じゃあ僕、サンタさんになるまでこのリスト取っておく!」



【シーン8】


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チャイムの音が、スコットとおじいさんを呼び戻します。


「そうだ!僕のプレゼント!」


スコットは走って玄関に向かいました。ドアを開けるとそこには、サンタさんが立っています。


「君はスコット君かな?」
「はい、そうです!」
「ちゃんと良い子にしていたかな?」
「はい、していた・・・と思います!」
「ホントかな?」
「はい!していました!」
「は~っはっは~!それじゃあ、スコット君へのプレゼントだ!」


サンタさんは、白い布の袋から、緑の包み紙に赤のリボンが掛けられた箱を取り出し、スコットに渡しました。


「わ~い!サンタさんありがとう!」
「Merry Christmas!」
「Merry Christmas・・・あ、サンタさん、ちょっと待って。」


スコットは、おじいちゃんから茶色がかった古いメモ用紙をもらい、サンタさんに耳打ちをしました。


「あのね、サンタさん、僕もサンタさんなんだけど、こんなクリスマスリストをもらっちゃったの。これってサンタさん持ってる?」


サンタさんは、ちらりとおじいさんの顔を見ると、スコットの方に向き直り、こう答えました。


「これは『みんなが仲良く幸せでありますように』っていうことだよ。」



「Grown-up Christmas List」


膝の上で夢描いた
僕を覚えてますか?


時を重ね 描く夢に
現れてくれますか?


今最後の
僕のクリスマスリスト
全ての命のため


傷つけ合わず
時が痛み
癒すように
友に恵まれ
夢むくわれ
愛よ永遠に


これが僕のクリスマスリスト


真っ直ぐに描く幸せは
ただ幼い夢物語なの?


もう傷つけ合わず
時が痛み
癒すように
友に恵まれ
夢むくわれ
愛よ永遠に


今描く夢を
最後の願いを
これが僕のクリスマスリスト

【キャスト】

脚本・訳詞: おがわとーる

題字: 北条香奈子

絵: 塩谷恭子

※上演時の朗読は村岡啓介、BGM・歌はおがわとーる


「Grown-up Christmas List」

music: David Foster

Lyrics: Linda Thompson-Jenner