スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」 第2番 スメタナSQ (1976) | クラシックCD 感想をひとこと

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ベドルジハ・スメタナ生誕200年 ②

スメタナのアニバーサリー鑑賞の2回目は、弦楽四重奏曲を聴きましょう。スメタナの曲の中でも演奏機会の多い曲で、私もCDで聴いたことがあります。ただし、もうネタが尽きつつあります(笑)。

【CDについて】

作曲:スメタナ

曲名:弦楽四重奏曲第1番ホ短調「わが生涯より」 (27:43)

   弦楽四重奏曲第2番ニ短調 (18:12)

演奏:スメタナ四重奏団

録音:1976年2月12-16日 プラハ スプラフォン・ジンコフ・スタジオ

CD:COCO-73096(レーベル:DENON、販売:日本コロムビア)

 

【曲について】

50歳頃から急速に聴力を失っていったスメタナは、「わが祖国」の作曲を急ぎますが、その合間に自分の人生を振り返るように作曲されたのがこの弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」でした。そしてその6年後、スメタナの病状は脳にまで及び、精神異常の兆候まで表れるようになりました。頻繁に起こる記憶喪失や幻覚のため、作曲は1日に数分しかできなかったと言われていますが、そんな中で、スメタナは最後の作品である、弦楽四重奏曲第2番を完成させました。

 

【演奏について】

スメタナの2つの弦楽四重奏曲。私は第1番の方しか聴いたことがないのですが、生誕200年のこの機会に2曲を聴いてみたいと思います。演奏は定評のあるスメタナ四重奏団です。

弦楽四重奏曲 第1番 ホ短調 「我が生涯より」は、難聴の中で自らの生涯を振り返った作品。その表現内容も友人への手紙という形で説明されています。第1楽章は、「青春時代の芸術への強い情熱と愛情。言葉 では表し難い憧れ。そして不幸の知らせ。」ということです。冒頭の慟哭のような主題は「不幸の知らせ」であり、続く優美な主題は「芸術への情熱」で、二つの主題が交錯し葛藤を表現していきます。不幸の知らせは、この曲全曲を通して現れ、基調となる雰囲気を形作っています。第二楽章は、「楽しかった青春時代」舞曲の作曲に熱中していた青春時代の回想です。特に中間部の舞曲風のメロディが楽しい楽章です。

第三楽章は、「忠実な妻となった少女との初恋」。死別した先妻との思い出が語られます。哀しみがチェロによって語られた後、先妻との優しい時間がとても美しい音楽で描かれます。死別の悲しみから美しい回想に至る音楽です。そして、第四楽章は、「国民音楽を発展させ、軌道に軌道に乗った矢先の失聴による挫折」。前半はチェコの舞曲を基調とした音楽が自信に満ちて演奏され、いよいよ終結部という時に音楽は突然の休止。失聴の始まりを告げる耳鳴りのような音が奏でられます。そして、「不幸の知らせ」が回想され、無念さの中で静かに幕を閉じます。

 

非常に標題的な音楽でメロディも面白く、交響詩のような雰囲気です。生誕100年にあたり、この音楽でスメタナの生涯を振り返るのもいいのではないでしょうか。第2番の方は、さらに病状が悪化した時期の壮絶な音楽です。第二楽章の舞曲風の音楽の仄かな暗さやもどかしさ、第三楽章の激情の噴出など、当時の音楽にはない激しさを持っているのではないでしょうか。スメタナ四重奏団の演奏は、自らの曲のように手中に収めた曲を熱演していると思います。そして、その中に、一人の作曲家の壮絶な人生を聴くことができると思います。

 

【録音について】

DENONによるスプラフォンとの提携のPCM録音です。スメタナ四重奏団の音が詳細に捉えられ、迫力のある録音になっています。

 

【まとめ】

生誕200年にあたり、スメタナの生涯を振り返ることができました。チェコの国民音楽の開祖であり、激しい抵抗勢力との葛藤や家庭の不幸を乗り越えてきた作曲家に対する晩年の失聴という大きな不幸が重くのしかかった状況での音楽になっています。この二つの曲を聴くことによって、スメタナの人生をうかがい知ることができました。

 

購入:2024/01/19、鑑賞:2024/01/25

 

スメタナ生誕200年シリーズから