【CDについて】
作曲:バルトーク
曲名:中国の不思議な役人 (31:41)
弦楽器打楽器とチェレスタのための音楽 (30.24)
演奏:ブーレーズ指揮 シカゴ交響楽団
録音:1994年12月、シカゴ Orchestra Hall
CD:447 747-2(レーベル:DG)
【曲について】
弦楽器打楽器チェレスタのための音楽は、旧バーゼル室内管弦楽団を創設したザッハーの委嘱により作曲され、ザッハー指揮によって同楽団で初演されました。弦楽合奏に数々の打楽器などが加わるこの曲は、バルトークの代表的な曲のヒトつとなっています。澄み切って、かつ不思議な雰囲気を持つ曲であり、「シャイニング」に大変効果的に使われていたのが印象的でした。
【演奏について】
ちょっと前、弦楽器打楽器とチェレスタのための音楽を聴きたくなったのでいろいろ探していた時、このCDを持って無かったことに気づきました。ずーっとライナーの演奏にお世話になっていたので、今度はブーレーズの一連のバルトークの録音でも聴いてみたいと思ったのです。その後、無事ゲットしましたが、その時はすっかり冷めていて、今日やっと聴く気になったという次第です。
前半は、中国の不思議な役人です。このブログを始めてから、NYPとの旧盤を一度聴いています。今回は、シカゴ交響楽団とのデジタル録音で、音質的にはかなりパワーアップして帰ってきたという印象です。冒頭の街の喧騒の場面のインパクトも強かったです。演奏は、音も厚くダイナミックになった気がしました。音楽自体の表現の幅が増した分、この曲がわかりやすくなった感じがします。通俗的な内容を持つ劇と密接に結びついた音楽なので、ストーリーを追い、想像しながら聴くと面白いと思います。
そして、弦楽器打楽器とチェレスタのための音楽に入ります。モヤモヤとした冒頭部分から始まりますが、思っていた以上のモヤモヤ感でした。そして、そのまま徐々に盛り上がっていきますが、意外に静かでおとなしく感じます。美しい弦楽器の音が続きますが、ちょっと今までのイメージと違ったかもしれません。
第二楽章も綺麗ですが、何かおとなしいですね。もっと尖った曲のイメージがあったので、年がたち時代も変わり、私も20世紀の音楽に慣れたのかなと思いました。ブーレーズの演奏が、すごく美しいものに聴こえてしまいます。これが本来のこの音楽の姿なのでしょうか?尖らない、穏やかなブーレーズを聴いています。第三楽章も同様に、弦の美しいアンサンブルが、じわじわ広がっていきます。透明度が高く、一音一音を無駄がなく、じっくり聴かせる演奏で、緊張感もかなり高いです。第四楽章に入っても、やはり角がとれた感じで進んでいきました。
私は、これを聴きつつ、従来持っていたこの曲の演奏のイメージとは、かなり違うものを感じました。大変美しく、緊張感もある演奏だと思いますし、この曲が、柔らかく、メロディアスでロマンティックな音楽に聴こえたことに少々衝撃を受けつつ、演奏表現というものの不思議さを感じたのでした。
【録音について】
素晴らしい録音でした。シカゴ交響楽団の音が残響豊かで、かつ細部までクリアに聴こえます。
【まとめ】
ブーレーズというと、研ぎ澄まされた演奏というイメージが強かったのですが、これは、研ぎ澄まされた緊張感は保ちつつ、穏やかなの美の世界を追求したような感じがしました。この時点のブーレーズの成果として、記憶したいと思います。
購入:2023/07/18、鑑賞:2023/10/01