【CDについて】
①作曲:ショスタコーヴィチ
曲名:交響曲第5番 ニ短調 op47 (45.46)
②作曲:コープランド
曲名:バレエ「ビリー・ザ・キッド」組曲 (20.29)
演奏:バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
録音:1959年10月20日
ボストン シンフォニー・ホール
CD:SICC 10268
(レーベル:SONY CLASSICAL、発売:SONY MUSIC ENTERTAINMENT)
【曲に関して】
私は、20代から30代くらいまで、ショスタコーヴィチファンだったのですが、まず入門曲となる、5番はよく聞いていました。そもそも当時は他の曲を聴くこと自体が大変でしたが、今ではたくさんの曲が普通にレパートリーとして定着しています。5番はもっぱら聴いていたのは、バーンスタインの新盤の方。かつてはヴォルコフの証言とかが出たので、この曲の終楽章の解釈も大きな影響を受けたなんて話もありました。
【演奏についての感想】
バーンスタインのショスタコーヴィチの第5番の旧盤の録音は、このCDのラーナーノーツにあるように、直前のソ連での演奏旅行で演奏し、ショスタコーヴィチ本人の賞賛も得た直後ということです。1959年と言えばキューバ革命の年で、その後キューバがソ連と接近し始め、キューバ危機前夜というタイミングでした。時を同じくしてアメリカのオーケストラのソ連初公演が行われていたということです。そんな微妙なタイミングでの、いろいろな高揚感もこの演奏には入っているのではと思料します。
私はもっぱら、東京文化会館ライヴの新盤の方を聴いてきたので、この旧盤はあまり聞いてこなかったのですが、新盤がどっしりした印象があるのに対し、ある意味粗削りながらも鮮烈で迫力のある演奏だと思います。また、第三楽章はとても美しいと思いました。
その新盤の演奏はヴォルコフの証言と同じ年ですが、証言の出版の数ヵ月前というタイミングでした。バーンスタインの第5番の録音は、いろいろと微妙な時に行われているものだと思います。
当時は、そういった背景を気にせずにはいられませんでしたが、今では評価も固まり、普通に音楽として聴くことができるようになりました。
【録音に関して】
1959年の録音ですが、最新リマスタリングのSACDです。そういう意味では最大限うまく分離され、改善されているという事でしょう。苦しい所もありますが、この録音をこれほどの解像度で聴けること自体が幸福というものだと思います。
【まとめ】
第二次大戦後、旧ソ連体制の歴史の中での、ショスタコーヴィチ、バーンスタイン、ニューヨーク・フィルの交錯の時期をとらえた録音です。不安定さは今でも解決されている訳ではないですが、そこで音楽をしていることの思いが伝わってくるCDです。
購入:2023/4/20、鑑賞:2023/04/29