青山です
私はとあるヤクザ稼業をする人に支援をした事があります。
ヤクザと聞けば日本の方は毛嫌いをするかもしれません。
私も今のヤクザは嫌いです。任侠道なる生き方を今でも守ってるヤクザは稀有です。人を騙してお金を稼ぐ事しか考えてないというのが今のヤクザの結論です。ただ、一部にはそうじゃない人も居ます。
だから私はヤクザに支援したのではなく、その男、その人間、その個に対して私は支援したのだと思ってます。
彼は田中さん(仮名)という40歳の男性で、日本で大きな組織に所属してる幹部でした。ある時、私の知人を通して田中さんと知り合ったのですが、見た目や物言いなどは、世間がイメージするヤクザとは似ても似つかない風貌であって、非常に紳士的で礼儀正しい男性でした。
最初はその方が組のお金を横領して大変な問題を起こしてる事や、人を傷付け刑務所に服役した事など、全く知る由もありませんでした。
知人からは
「今日紹介する人はヤクザである」という事だけしか知らされてなかったので、詳しい事をこちらから聞くのも失礼ですし、他愛もない世間話しや事業の事などを話すだけに終わりました。ただ、私に人を紹介するくらいですから、何か裏があるというか、何かお願いなりがあるのだろうという事は察してましたので、また後日にも改めて別件で連絡が来るのではないか?とは予測しておりました。
案の定、その田中さんから連絡がきました
「青山さん、先日はありがとうございました。私のような若輩者の話しを懇切丁寧に聞いて下さり非常に感謝しております。また私はヤクザ稼業をしてる身であるにも関わらず、何の偏見もなくお会いして下さり、その胆力には感服致しました。今日はお察しかもしれませんが、私が現在抱えている問題について是非相談に乗って頂きたくご連絡差し上げました。単刀直入に言いますと、私に支援をして頂きたいのです。」
このような流れで会話が始まり、まずは会う事になりました。この当時はまだ私も日本に居ましたし、病気も無かったので元気でした。
彼の話しをまとめるとこうです
「昔から実直な性格でまっすぐに行動をする人間だったため、信頼する兄貴に着いてきて、人よりも早い速度で出世をして、早いタイミングで幹部の座まで登る事ができた。けれども、この世界は嫉妬もある世界で、出世を好まない同僚や先輩連中も多い。そんな中で自分がお世話になった兄貴分が病気で逝去し、その機会を他の者たちが座を狙って根も葉もない罪(組のお金を横領した疑い)を帰せられ、お金を返済をしないと家族もろとも命が危険な状態になってる」という内容です
ヤクザの世界であれば、確かに映画で見るようなシーンですが、あり得なくもないお話しです。私は最初は信じれませんでした。何故なら、何の証拠もなければ、彼が私を騙してお金を取ろうとしてるかもしれないからです。ヤクザですから、そういった詐欺まがいな事を平気でする人も居る事でしょう。
でも、私が田中さんを直ぐに信じてみようと思った出来事を目にします。その日にお話しを聞いて、まずは少し検討させて欲しいという事なり、田中さんの自宅まで車で送る事になりました。方角が同じだったのと、当時は私も運転手が居たので、お客様を送るのを礼儀としておりました。
腐っても大きな組織のヤクザの幹部です。さぞかし豪邸にでも住んでると思ったのですが、何と彼が住んでいたのは普通の木造アパートでした。映画の世界みたいな話しですが、小さな子供を4人も育て、奥さんは玄関先で赤ちゃんを背負ったまま「主人がお世話になっております」と非常に丁寧な挨拶をしてきたのです。
彼を慕う子供達を見れば、彼が日頃からいかに家庭的で、子供を愛し、妻を大切にし、そして実直で真面目に生きてきたのかがその光景で直ぐに解りました。
後から解った事なのですが、彼はあまりにも忠義心が強く、若い頃からお世話になった兄貴分を裏切る事ができず、ヤクザ稼業が道徳として反してる事が解っていても、兄貴を立てる事と、妻子が出来てしまった事で何としても食べさせないといけないという想いで、足を洗う事ができなずに気がつけば出世してしまったというのです。でも元々が真面目で質素な人間なので、贅沢はせず全て兄貴分にお金を上納したり、妻の実家の借金を返済したり、自分の親が病気でお金に困ったりで、自分の事は後回しで全て身内や友人などのためにお金を使ってきた人生だったようです。
だから貯金もなければ、家も質素で、車も普通の乗用車でした。私は、今の世の中でもこんなヤクザの幹部もいるのだなと非常に驚きました。
私は田中さんにその場で直ぐに言いました。
「田中さん、私はあなたを信じます。私の支援はお金を貸す事ではありません。お金を差し上げる事です。貸せば返済を意味します。返済ができなければ貸す前の人間関係に歪が生じます。そうなるくらいなら、私はお金を人にあげた方がマシであると思ってます。これが私の信念です。ただその代わり、田中さんが人間として本当の善行を行い、妻子や親、友人たちを幸せにしてくれる人間道を歩んでくれる事を私はただただ願います。ヤクザの世界のしきたりは私には解りません。けれども、ここで私が田中さんに御支援する3000万円のお金が田中さんと田中さんの周りの人間全てを幸せにするキッカケになるのなら、私にとっては安い買い物である思ってます。どうか、正道を歩んで下さい。」
それから数カ月後、指が無くなって頭を丸坊主にし、けれども笑顔には何の汚れもない純真な田中さんが私の元へ来ました。
「青山さん、指が無くなっちゃいました。でも、指の変わりには僕は自由を得ましたよ。今は妻の友人の車工場で仕事してます。まだ慣れてないですけど、毎日が本当に楽しいです。妻も一番下の子を保育園に入れて仕事を始めて、二人で仕事して何とか生活はやっていけてます。3000万はいつ返済できるか解りませんけど、毎月少しでも返済しますのでどうかお許し下さい」
私は言いました
「田中さん、私は田中さんに3000万を差し上げたんです。だから返済する義務はありません。それに田中さんは私が思った通り、行動の人でしたね。ちゃんと正道を見据えて行動してくれました。きっと奥様も喜んでいるでしょう。それに子供の将来を考えれば、今回の選択は正しかったはずです。私の3000万円が一人の人間、家族の行く先を変化させられたと思えば、非常に満足です。嬉しいです。そして、今後も私との人間関係を続けさせて下さい。私が出会った人は私の人生における財産なのです。だから、今日のようにまたお暇があればいつでも拙宅にいらっしゃって下さい。」
田中さんは目に真実の涙がありました。彼は泣いてました。虚栄のヤクザ世界で強く生きて来た男児も、心を改めて本当の意味で強い男になったのです。
今でも田中さんからは季節ごとにお手紙があります。私の一生の友です。