4月に入り、常套中学校にも新入学の一年生の子供たちが、何の屈託も無い様子でやって来た。

まだあどけない顔と、少し大きめの制服に身を包んで、子供たちはまだ『小学生』を引きずっていた。

おしなべて女子の方が成長は早く、体つきなどを見るともう、大人の女性に近いのだと思う。反対に男子などは、女子と、30センチも違うのではないかと思うほど背の高さも違い、まだ幼児の体系を思わせる子も少なくないのである。

これが一年もすると、男子の方がぐんぐんと背が伸びだしいつしか女子を追い抜いてしまう子がどんどん出てくる。

心と体の成長のアンバランスが、様々な事象を引き起こしていく。

中学校は、3学年が卒業して新入生が入ってくるわけだが、送り出した3学年の先生方が、たいていはそのまま新入生の担当となる。

3月末までは、前の3学年のメンバーで新入生の学級編成の準備をするのである。

もちろん転勤や学年間の移動は多少あるがそれは年度始めの編成で滞りなく引き継がれる。

 峰子は、学校の環境も変わり、新たな気持ちで学校へ通えるようになっていた。

職員室などで、峰子の話題が出ることも無くなっていた。クラス編成が行われる時、幸恵一派とは一緒にならないように配慮された。だから普通にクラスに溶け込んでいた。

峰子は学校でも、明るい女の子に戻っていった。峰子を取り巻く女の子も何人かいて、峰子の学校生活は、充実しているようだった。

高田はほっとした。こうした峰子のような事件を起こす子は、中学生活を送る間に何人か出てくるものだ。

今、入学してきたなんの屈託も無いように見える一年生の子供たちも同じである。

子供たちを取り巻く性の問題は成長期の体と心のアンバランスに起因するものが多いと高田は考えていた。

加えて、マスコミの垂れ流す過剰な情報の中で、子供たちは溺れてしまいかねない。そして、学校側はこうした子供たちの対応に追われる。

ある意味、いたちごっこかも知れないがこうした中で、的確な生徒指導をしながら、社会に適応できる人格を育成していくのが高田たち教師の使命なのだと考えていた。

峰子の心の闇は、完全に静まったかどうか、高田は確信が持てないでいた。

しかし、峰子が受験に向けて前向きな気持ちで取り組み始めた手ごたえを感じていた。

峰子の心が成長していつか、高田たちが峰子にとって良かれと思ってとった手立てに気付いてくれる時がくるのだろうか。

思い出して、自分のとった行動を恥ずかしいと思う時がくるのかもしれない。

それでも苦い青春の一ページは、封印されてこのまま前向きに人生を歩んでいって欲しいと思うばかりだった。


     <完>
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すみません。昨日の最後を少し変えました。

思い違いがありました。読んでくださった皆様、申し訳ありませんでした。