ちょっと思い出話を…


私が中学受験生だった頃のこと。


たまたまテストができて、実力以上のクラスに入ってしまいました。


席は自由だったけれど、一番後ろの席が定位置。

なるべく目立たないように

自分だけ問題が解けなくてもバレないように

分からなくても分かったフリして

気配を消して授業を受けていました。


夏期講習のある日。

普段は見かけない若い男の先生(バイト講師?)がきました。

その日も気配を消して授業を受けていたのですが、

先生とやたら目が合う。近づいてくる。

だんだん距離が縮まり、隣に座ってくる。話しかけてくる。


距離が近すぎる!


劣等生だから気にかけてくれる、という類のものではなく、

これは好意だ、贔屓だ、面倒なことになったと思いました。


ある日一斉に問題を解いている時、

また先生は隣に座ってきて、私にだけ聞こえるようコソコソヒントを言い始めました。

先生のあからさまな対応に、周りの子達もなんだかおかしいと気付き始め、目線が痛い。

もう来ないで!放っておいて!!と変な汗が出始めました。

先生のいきすぎた好意に集中できず、全く解けませんでした。


これだけ特別にヒントをあげたのだから、さぞかしできただろうと、私のノートを覗いた先生。

バツだらけのノートを見て一言。


「なんだよ、できてねーじゃん!!」


静かな教室に響き渡る先生の声。

今の言葉で言うと公開処刑みたいなものでしょうか。

みんなの前で晒し者になってしまった瞬間。

一気に涙が込み上げてきて、もうその日は何もできませんでした。

それ以来、先生はもう隣に座るどころか目も合わせなくなり、私は完全にクラスにいない存在のような扱いになりました。


季節講習が終わり、その先生はいなくなりました。




娘が塾に通うようになり、当時のことを思い出すようになりました。

塾はとっても楽しくて、友達もたくさんできて、良い先生にも恵まれ、良い思い出として残っています。

でも、このことだけは今でも思い出すと、当時の気持ちが鮮明に蘇ってしまいます。