某月某日、世界中のマスコミ各社に一通の手紙が届けられた。
そこにはこう書かれていた。
「○月×日、△△にて、新規プロジェクトの発表を行う。」
日付と場所のみが記された記者会見のおしらせ。
新規プロジェクトとは何か、それについても全く書かれていない。
いたずらだろうか。記者たちはこれを無視しようとした。
しかし、差出人の名前を見たとき、彼らに衝撃が走る。
「谷口」
谷口、日本のアイドル界でその名を知らぬものはいない。知らない人間がいたらそいつはモグリである、と言われるほどである。
伝説の力士アイドルグループ「おちゃんこ倶楽部」、昭和史にのこる歌謡界の歌姫「美空 へばり」、谷口は彼女たちをプロデュースした人物だった。
手紙には、確かに谷口と書かれていた。
あの谷口が、新たなプロジェクトを立ち上げる…?
世界中の記者たちの心がざわめいた。
本物の谷口だという確証はない。手紙はただのいたずらで、新規プロジェクトは真っ赤な嘘かもしれない。
それでも、記者たちはすでに自分がソワソワし始めているのに気がついた。
長年の経験でつちかった、記者の嗅覚が本物だと告げていた。
何かが、始まろうとしていた。
記者会見当日、谷口の指定した会場には、世界各国のマスコミ関係者が詰めかけていた。
騒がしい会場には、記者たちの興奮と期待が熱狂の渦となり、息苦しく熱がこもっていた。
谷口はまだか。
口々に谷口を待ち侘びる声があがった。
そして、谷口が現れた。
一目で只者ではないとわかる、自信と貫禄に満ち溢れたふてぶてしい顔。
山下清風のヘアースタイル。
ぽっちゃりしたお腹。
間違いなく、本物の谷口だった。
一瞬の静寂、そして鳴り響くシャッター音。
「谷口は本当にいたんだ…」
1人の若者がぼそりとつぶやいた。
何組ものアイドルをプロデュースし、数々の名曲を世に送り出してきた、天才プロデューサー、谷口。
あまりの偉大さに、都市伝説だと思ってしまうのも無理はなかった。
谷口の業績は神話そのものだったのだ。
谷口の口が開かれようとしていた。
再び静寂。
彼の言葉を、一言たりとも聞き逃してはならない。
それはもはや本能と呼ばれるものだった。
静寂。
谷口が口を開いた。
「アイドルグループ、『富山男子流』を、立ち上げる。」
静寂、そしてどよめき、シャッター音。
「富山男子流」とは何か。
全くわからない。
しかし、その場にいたすべての人間が、新しい時代の訪れを谷口に、「富山男子流」に、感じたのだったーーーーーーーー
富山男子流が誕生した瞬間だった。
