「夜天一族」
オリジナル作品です
トリササ流チャネリングファンタジー小説書いてます
キャラクターがチャネリングしたり
筆者がダイレクトにチャネリングして高次元よりメッセージを受け取ったりしたものを
作品に活用しています
「夜天一族」
第十章「天上の館」後編
第十章「天上の館」 テンジョウノヤカタ 後編
「∞∞∞∞∞☆∞∞∞∞∞☆∞∞∞∞∞☆∞∞∞∞∞☆∞∞∞∞∞☆∞∞∞∞∞!」
宙を浮いていたコザル王女の口からも、謎の言葉が迸る。
「イーシャ!ナニを?コザル王女まで、まさか!?」
ユージンも予想だにしない事態が発生する。
「∞∞∞∞∞#∞∞∞∞∞#∞∞∞∞∞#∞∞∞∞∞∞#∞∞∞∞∞#∞∞∞∞∞」
月の女神イーシャとコザル王女の二人の言葉が意味するものは一つしかない。
月の塔を消滅に導いたと同様の現象が起きようとしていた。
「コン兄、また王女が破滅の呪文を唱え始めたのかしら?」
「それは・・・多分、そうかも知れない。ここにいては危険だ。避難した方が好さそうだ。菫青、星葉、外へ出ろ!」
片手で菫青の腕を掴み、もう片手で星葉の腕を取り金剛は出口へと走る。
「えっ、コン兄?王子はどうするの!」
突如、腕を引かれた星葉が混乱しながらコザル王子を捜す。
王子も王女と同調するように謎の宇宙語を唱え始めている。
「コザル、お、う、じぃぃ!」
月の女神とコザル兄妹の「破滅の呪文」の振動が月神殿のドームにまで影響を及ぼし始めていた。
双子が半分ほど破壊した水晶群に大きな亀裂が走る。
それはやがて無数の細かなヒビ割れとなり、硝子片のように砕け散ってゆく。
「∞∞∞∞∞☆∞∞∞∞∞☆∞∞∞∞∞☆∞∞∞∞∞☆∞∞∞∞∞☆∞∞∞∞∞」
「∞∞∞∞∞♡∞∞∞∞∞♡∞∞∞∞∞♡∞∞∞∞∞♡∞∞∞∞∞♡∞∞∞∞∞」
「∞∞∞∞∞※∞∞∞∞∞※∞∞∞∞∞※∞∞∞∞∞※∞∞∞∞∞※∞∞∞∞∞」
三人の口から迸る破壊の宇宙語は益々ヒートアップしてゆく。
巨大水晶群は跡形もなく瓦礫と化しユージンとユージニーを避けながら、
彼等の回りに破片が山積みとなっていた。
「見事に壊してくれたな。もう月神殿の再生はご免だ。どうせなら、全部破壊してくれていい」
ユージンはその場に佇みドームの天井を仰ぎ視る。
どうやら、ドーム自体は何事もないらしい。
月の塔とは違い月面ドームはイーシャが造り上げた虚像ではないせいか影響はなさそうだ。
反対に巨大水晶群はイーシャの本体であるユージニーが造り上げたものだったせいか影響も甚だしい。
三人の呪文が次々と月神殿の内部破壊を引き起こし、破壊はやがて終了の時を迎えた。
月の女神の姿が陽炎のように薄らいでゆく。
そして、コザル兄妹の姿が突如として、その場から消え去った。
水晶群のある月神殿の外へ退避していた「夜天家」の三兄弟は、隣室で何が起きているのかを気にしつつ待機していた。
落ち着きなく行ったり来たりを繰り返すのは菫青である。
隣室ドームはワンフロアに何もないだだっ広いホールとなっているため、動き回るには障害物がなくて丁度好い。
「隣りはどうなっているのかしら~気になるわー。コザル王女と王子はどうしているのかしら?まだ、あの変な宇宙語唱えているのかしらね」
幸い破壊が起きているのは巨大水晶群だけだったように思う。
「気になるのは分かるが、少し落ち着け、菫青」
落ち着きなくウロ着く菫青の気持ちは分からなくもない。
金剛とて残して来た彼等がどうしているのか気にならない訳がない。
「アタシは図太い神経のセイとは違うわよ。気が気じゃないわ。コザル王女も王子も無事かしら」
云ってる傍から益々、ソワソワと落ち着きをなくす。
図太いと称された星葉は床に横になり眠っているようだ。
本日、二度の破壊工作は星葉に取っては重度の疲労が蓄積されるに充分であった。
「菫青!上!」
ウロウロが止まらない菫青の頭上から、金色の光の塊が顕われた。
「え?あっ!」
既視感を覚える状況に、菫青は金色の光に向かって両手を掲げた。
「キンちゃん!無事でしたのね」
頭上から現れたコザル王女が菫青を視付けた。
「王女!アタシ達は大丈夫よ。ここはなんの影響もないのだもの。セイはくたばってるけど」
「そうですの。キンちゃん達に何事もなくて好かったですの。セイちゃんはすっかりお疲れですのね」
菫青の目線の位置まで降りて来る。
「コザル王子は?」
確か、コザル王子も宇宙語を唱えていたはずだ。
「お兄さまもいるですの。セイちゃんのところに」
言葉の先を追うと、横たわる星葉を見下ろすコザル王子の姿があった。
「あっホントだ。それでユージン様や月の女神はどうなったの?」
肝心なことを忘れてはならない。
「イーシャは姿を消しましたの。月の貴公子は変わりないですの。水晶の神殿は粉々に壊れましたけど」
浮いたままの状態で応えるコザル王女は、この件に関してはほぼ関心も感心も消失しているようだった。
「王女、かなり疲れてる?」
疲労が王女のイラつきに繋がっているようにも視えた。
「キンちゃん・・・はい、疲れているかもですの」
云われるまで気付かなかったが、破滅の呪文は結構な割合で身体的疲労を伴うものだ。
「そっか、それじゃあ、さっさとうちに帰りましょうか。帰ってゆっくり休んでからティータイムにしましょうね」
疲労が蓄積されているであろうコザル王女を早く休ませたい。
「はいですの・・・」
菫青に応えたコザル王女の全身から力が抜けて落下し始める。
「王女!」
落ちて来る王女を両手を広げて抱き留める。
コザル王女の睛は閉じられ、完全に意識を手放しているようだ。
「お疲れ様」
これでひと段落出来そうな雰囲気にホッとひと息吐く菫青だった。
「コザル王女は大丈夫か?」
今までの状況を視ていた金剛が様子を伺う。
「コン兄、王女を連れてこのまま家に戻るわね」
心配気に傍らに立つ金剛に告げる。
「そうか、分かった。先に王女を連れて戻ると好い。あとは私が見届けよう。それと、星葉達も一緒に連れて帰ってくれるか」
未だに床でゴロゴロしている星葉に視線を投げる。
「分かったわ。セイと王子を回収してゆくわね」
それをキャッチした菫青が応える。
「回収・・・あれは物か」
双子の兄弟であるのにこの云われようには片割れが気の毒だ。
「なにを云われようともセイは気にしないから大丈夫。コザル王子も同様よ。あの二人は似た者同士だわ」
仲々、手厳しい。
「ホラ、セイ!家に帰るわよ。いつまで寝てるの!王子も先に帰りましょ」
床に横たわる星葉とコザル王子に声を張り上げる。
「わかったニョロ、キンちゃん」
王子が素直に返事するのとは対照的なのが星葉である。
「ウン?もう帰るの?コン兄は?」
目を開けて視線を向けた先に映る長兄に訊ねる。
「私はユージンを待つよ。元々、奴の依頼で呼ばれたからな」
「夜天家」の月の邸宅で聞いた彼の母親の話を思い出す。
眠っている場処が問題であると云っていた意味が分かったような気がする。
まさか、人が入れるほどの水晶の中に自らを閉じ込めるとは予想外も甚だしい。
地球では考えられない次元の話となれば、月は多次元で地球は三次元の影響を色濃く残しているせいか、考えられない現象がここでは可能のようだ。
「そうなの、ユージンさんに何か依頼されたの?」
のそのそと起き上がると、星葉は金剛に向き合った。
月へ来てから久々に面と向かった長兄に『なんだかやっぱり大人だなぁ』などと呑気に思うのである。
「そうだが、完了するにはまだ時間が掛かりそうだし、おまえも疲れただろう。菫青達と先に家に戻ると好い」
目の前に立つ弟の頭に手を添えグシャグシャと髪を撫でる。
「うん。今日は二度も暴れたから疲れたよ。先に帰るね。アレ?」
金剛の掌の心地好さに再び眠くなりそうなところで、視界の端に人影を捉えた。
「ん?どうした?」
星葉の視ている方向に振り向くと、月神殿から現れた人物に視線を留めた。
「お待たせした。悪いが帰宅するのはもう少し待ってくれないか。君達にも最後に立ち合って貰いたいのだ」
ユージニーを抱き上げて現れたユージンは帰り支度を始めた面々に懇願する。
「立ち合うとは?」
眉間にシワを寄せながら金剛が問う。
出来ればこのまま双子達を帰路に就かせたいところである。
「イーシャを完全に封印し、ユージニーを覚醒させる」
月の女神の封印とユージン母の覚醒になんの因果があるのだろうか。
「それはどう云う意味なのか説明してくれないか。弟達を早く帰したいので手短に手早く頼む」
若干イラつきながら、金剛はそれでも冷静だ。
「分かった。すぐ済ませよう。イーシャも準備は好いか」
ユージンの背後に隠れていた月の女神を名指しする。
「ええ、仕方ないわね」
先ほど陽炎のように薄らいでいたはずのイーシャの実体があった。
まだ、この場に姿を留めていたようだ。
渋々と云った体で月の女神が応答する。
その様子を視ていた菫青は、腕の中のコザル王女が無意識の状態でなにか反応し始めたことに眉を顰めた。
「王女?またナニか起きるのかしら」
コザル王女の口から、あの謎の言語の呟きが始まった。
それはコザル王子も同様で、少し離れた位置にいる月の女神も呪文のような文言を唱えている。
「∞∞∞∞☆∞∞∞∞☆∞∞∞∞☆∞∞∞∞☆∞∞∞∞☆∞∞∞∞☆」
「♡∞∞∞∞∞♡∞∞∞∞∞♡∞∞∞∞∞♡∞∞∞∞∞♡∞∞∞∞∞♡」
「∞∞∞※∞∞∞※∞∞∞※∞∞∞※∞∞∞※∞∞∞※∞∞∞※∞∞∞※」
耳を澄ますと、それぞれ違う発音、異なる音程であるのに、どこか統一感があり不思議とマッチしている。
「あっ」
菫青が突如、驚愕の声を上げる。
呪文のような言葉に反応して?否、呼応してイーシャとユージニーの二人の全身が発光してゆく。
床に寝かされているユージニーとイーシャの融合が始まろうとしていた。
「∞∞∞∞∰∞∞∞∞∰∞∞∞∞∰∞∞∞∞∰∞∞∞∞∰∞∞∞∞∰∞∞∞∞∰」
コザル兄妹に加わりユージンも呪文を唱え始める。
イーシャがユージニーと同化し完全に二人が一人と化す。
それはまるでイーシャの魂がユージニーに宿ってゆくようにも視えた。
『うわぁ、まるでなにかの儀式みたい。魔法でも観てる感じだわ』
地球がリアリティの星なら、月はスピリチュアルかファンタジーの星と云えよう。
不可思議が常識であっても可笑しくはない。
それが月の世界だ。
「∞∞∞∞∰∞∞∞∞∰∞∞∞∞∰∞∞∞∞∰∞∞∞∞∰∞∞∞∞∰∞∞∞∞∰」
「「「・・・・・」」」
ユージンの言葉が合図になったのか、他の面々が一斉に沈黙する。
月の女神イーシャの姿はなく、ユージニーが床に寝かされたまま未だ目覚める気配はない。
その場にいた者全員が固唾を呑んで見守る。
「さぁ、もう好い加減起きろ!いつまでも寝た振りはよせ」
おもむろにユージニーの肩を両手で掴み、上半身を烈しく揺さぶり起こそうとする。
その動きがピタリと止まった。
「う、も・・・」
「「「「「「?」」」」」」
呻くようなユージニーの声に、その場にいた全員が疑問形の反応を示す。
「も?」
ユージンがその場の代表として問う。
「もう少し丁寧に扱わんか!ワレ!」
もの凄い勢いでユージンに喰って掛かるユージニーは、菫青だけでなくその場にいる者達の度肝を抜いた。
「ワレとはなんだ。散々、寝腐っていたのはどっちだ。職務放棄も甚だしい。職務怠慢だ!」
いきなり襲い掛かって来たユージニーを躱しながら反論する。
「家督を継ぐのは息子の役目でしょ。だから、その座を譲ったまでのこと!なのでこの機会に引退を表明します」
少ないギャラリーではあるが、そんな他人の目などお構いなく親子ゲンカが始まってしまった。
そして、一気に興醒めしてゆく。
「コン兄、やっぱりアタシ達は先に帰るわね」
月神殿の親子の痴話ゲンカに巻き込まれるのはご免だとばかりに、菫青がそっと金剛の傍に忍び寄る。
「ああ、好いよ。これは茶番だしな。切りの好いところで私も引き上げるから、それまで二人の気の済むまで見守っているよ」
一応、依頼主であるユージンを放置する訳にもゆかず、金剛の出した結論は只々「生温かく見守る」そこに至った訳である。
「ご苦労様なことだわ。それじゃあ、またね」
再び意識を飛ばしているコザル王女を抱えて、菫青は出口へと向かう。
跳んだ天上人がいたものだ。
一気に疲労感が菫青を襲う。
途中、こちらも再び床に寝転がる星葉を拾い、浮遊している王子も回収して月神殿である別名「天上の館」を後にした。
第十章 「天上の館」了
「夜天一族」
第十一章「銀河の中心にあるのはブラックホールの際限ない収縮」前編
#11-1へつづく~
キャラ紹介
「シトリン」
黄水晶の化身
宇宙最強のヒーラーチャネラー
今回は出番がありませんが
パラレルストーリーではコザル兄妹とつながりがあります
別物シリーズ
「三日月鉱石標本店」
「citrine magic」にて登場予定
まだ書き終わってないからね
↑↑↑
あれから幾年月?
進歩のカケラもなく
只々
停滞しております
現在はまた新たな作品制作に入りました
想うに私
完成させたくないのかも知れません
ずっと関わっていたい
終わりにしたくない
完成させたらまた自作を創り上げればいいだけのことなんですが………
今日は2/3節分
またまた新年の節目らしいですね
明日が立春
もう春の気配がやって来る季節なんですね〜
この間
旧正月だったような気がするのに
まあ
うち夏まで喪中だからあんまり意識してないのだけどね
いやはや一年早いねー
夏と冬の時間の速度が違うのは地球の地軸の傾き加減によるとかなんとか
ご拝読サンキューね!
(=゜ω゜)ノバイバイキーン!
■「夜天一族」スピンオフ