はじめに以下の文章は ペットバードレポート誌に掲載された
記事を著者の許可を得て再投稿したものです。
2000年の記事なので、内容が現状に合わない箇所もあるかも
しれませんが、何とぞご了承願います。

(クルマサカオウム@NPO法人TSUBASA)
Touched by an Angel
(天使がくれた感動)
Sam Foster(サム・フォスター)
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この大切なヒナが確実に良くなってきているので私は有頂天に
なりました。私たち夫婦のどちらかをインカが噛んだのはこの
ときが初めてであり、このとき以外は二度と噛むことはありま
せんでした。
暖めたフォーミュラをスプーンで口元に持ってゆくと、インカ
は頭を後ろにそらせて食べ物に向かってきて、頭を上下に動か
しました。怪我を負った私たちのヒナは、実に空腹だったので
す。
何口か食べると、何分間か抱っこさせて顔をなでさせてくれた
後、ダンボール箱の仮のおうちに戻りました。1時間してから
様子を見ると、箱の端から端に向かって生野菜を放っていまし
た。自分で食べていたのです(少なくとも遊んではいました)。
その日の午後、再び注射をしてからインカはもう少しフォーミ
ュラを食べました。他のさし餌ヒナたちに食べさせて安全に「
おやすみ」させてから、再び、あの小さい仔のところに行って
やさしく抱きあげ、今後何年かの間インカと私の双方にとって
寝る前に必ず行うお約束事となろうことを始めました。
このヒナを胸に抱いたまま私は安楽イスにもたれ、彼女はくち
ばしを伸ばしてきて私の下くちびるを優しく引っ張りました。
そしてインカはリラックスし、頭を私の首にくっつけてきて、
2分後にはすぐ眠ってしまうのでした。夫が私たちを毛布で包
み、私たちは身動きもせずイスで1時間以上も眠りました。
翌朝、夜明けの直前に、インカがくちばしを箱の壁にこすりつ
ける音で私は目覚めました。私たちのベッドのすぐ隣が彼女の
定位置となっていました。
私は乗り出して彼女をベッドの上に持ち上げました。彼女は首
を伸ばして私の下くちびるにキスをしてくれて、それからごは
んをねだる声だしました。
フォーミュラを少し食べてから、彼女は私の腕に上り胸元に来
て、私の顔のほうに触れようとしました。顔をかがめると、私
たちの可愛い天使は、この上なく優しく、私のまつ毛にプリー
ニングをはじめました。
箱に戻るとインカはすぐに水に浸したシードを食べだしました。
まだ弱ってはいましたものの、私たちが新しく迎えたこのトリ
が、ようやく回復への道をたどっていることが解りました。
その朝、初めてインカの写真を撮りました。本当に可哀相な姿
をしていました。輸送用の箱に長く居たために尾羽と腹は汚れ
ていて、右半身は血液と手術で使われた消毒液で赤く染まり、
小さな身体に生えている羽毛のすべてがボサボサして見えまし
た。この素晴らしい生物の表面はみすぼらしく見えても、その
底は、生きようとする強い意志で覆われていました。
インカは明るく輝く瞳で私たちを見上げ、頭を少し片方にかし
げ、そしてとても低い音で喉を鳴らしながら私たちの顔をプリ
ーニングしようと伸びてきたときに、愛情と知性がこの小さな
トリから発散されているのを感じ取ることが出来ました。イン
カは苦痛から生き延びられるように助けてくれたのだと、私達
に感謝してくれているのが何となく解りました。
(つづく)