はじめに以下の文章は ペットバードレポート誌に掲載された
記事を著者の許可を得て再投稿したものです。
2000年の記事なので、内容が現状に合わない箇所もあるかも
しれませんが、何とぞご了承願います。

(クルマサカオウム@NPO法人TSUBASA)
Touched by an Angel
(天使がくれた感動)
Sam Foster(サム・フォスター)
時が経つとともにインカは回復し、個性も出てきました。
翼からピンを外す時期になったので獣医の事務所に行き
ました。インカは、パニックを起こすことなく、獣医の
腕にのぼり彼の顔をプリーニングしだしたので皆びっく
りしました。
その日以来、車にインカを乗せて移動して彼の事務所近
くを通るときは、先生にご挨拶するため事務所に立ち寄
らなくてはならなくなりました。いつでもOKのご招待
を受けたのです。インカは暖かく、優しく接してくれる
する人には、自ら喜んでその人のところに行くのです。
インカが私たちの家族に加わったのは素敵なことでした。
しかしながら他のペットのオウムたちとは仲良しにはな
りませんでした。インカは「ママ」の特別な仔だったの
です。
彼女が私たちと過ごした時間は言葉にできないほど特別
なものです。毎日がインカにとって楽しい出来事であり、
最も満ち足りた人生を過ごしたのです。とても幼い頃に
失われてしまいそうになった命だったせいしれません。
毎朝いちばんにインカは、私たちのベッドの隣に置いて
ある就寝用カゴから出て、カバーの下からよじのぼって
「ママ」に抱っこしてもらいに来ました。昼の間は、他
のトリ兄弟姉妹と一緒にトリ部屋で昼用ケージに入って
過ごしたり、私たちに抱っこしてもらったり一緒に遊ん
だりしました。
私がヒナにさし餌をしていたり、ヒトやトリのために食
事支度をしていたり、読書していたり、電話で話をして
いたり、テレビを見たりしていたり、私がそんなことを
していようと、インカは私と一緒に居るだけで完全に満
足しているようでした。
彼女は私の安楽イスの肘掛けの上にとまって、その堂々
とした冠羽をプリーニングして欲しがりました。私が手
を休めようとすると、くちばしを伸ばして私の手を持ち
上げ、指の下に頭をくぐらせ、あの美しく微笑む顔で私
を見上げるのです。どうして断ることができるでしょうか。
居間に古い敷物をしいたところ、インカは遊び場として
受け入れました。おもちゃで一杯になっている柳細工の
バスケットを与えたら、彼女はバスケットの端に止まり、
頭を立てて何か特別なものが見つかるまで覗き込みまし
た。そしてバスケットにはい下りてその宝物を取り出し、
バスケットの上にそろそろと戻ってとまり、そのおもち
ゃを足で握り、調べたり壊したりするのでした。
ときおりインカは遊んでいるうちに全く手がつけられな
い状態になることがありました。特段の理由も無いのに
冠羽を立てて翼を広げ、小さな円を描くようにクルクル
と回り出しました。まるで犬が自分のしっぽを追いかけ
ているかのように。
彼女のこの行動がみなさんの目にうかびやすいように、
楽しんでもらえるように、私たちの家について説明しま
す。オーストラリア北部は、南国の気候のため、昼の間
はドアを開け放しで網戸は張っていません。
インカがクルクル廻り出すと、まるでこまが廻るように、
横の方にも動き出しました。何度かは、回転が早すぎて
しまって、彼女(または私たち)が何が起きたか気づく
前に外のベランダに出てしまい、さらにそこから地面に
落ちて、インカは突然に止まりました。インカは頭を上
げて辺りを見回し「いったい何がおきたの?」と言うか
のようでした。
(つづく)