光る新緑の中、佇むツミの雄。

 

(2024.5.18 千葉県北部)

 

 

今回は街の公園や神社に住むタカ、ツミのお話しです。

 

(注意! 今回は捕食シーンがありますので、ご了承ください。)

 

 

 

ツミに出会う

 

神社の森で出会ったツミ。まだ若い個体のようでした。

 

(2024.5.14 千葉県北部)

 

 

いつもお世話になっている鳥仲間の御夫婦から、ツミが県北の神社にいるよと教えていただき見にいくことにしました。

到着後すぐに「キーキーキー!」とけたたましい鳴き声と共に、いきなり1羽の鳥が頭上をかすめます。そして、なんと目の前のマツの枝にとまったのでした。「あっ!ツミ!」そう思いすぐさまカメラを構えましたが間に合わず、すぐに飛び去ってしまいました。間違い無くあれはツミです。しかもしっかりと獲物の小鳥(多分メジロ)を捕まえていました。突然の出現に驚きです!しばらく周りを散策しましたが見つかりません。しかたなく元いた場所に戻ると…あれま…ちょこんと枝にとまっているではありませんか。な~んだこんなに近くにいたんだ。

 

よく見るとお腹の横縞模様が太くまだ若い個体のようです。しばらくじっととまっていましたが、向こう側からもう1羽のツミの声がしました。するとすぐさま飛び立ち、声のする方へ去っていってしまいました。

 

結局その後は数回声がしただけで姿を現してはくれず、時間的余裕も無くなり、その日は観察を断念することに。う~ん残念。

 

 

 

 

公園のツミ夫婦

 

いや~しかしこうなると、どうしてもツミの成鳥が見たくなってしまいました。そこで、他の鳥仲間の方より情報を得て別の場所へと赴くことにしました。

 

ツミの雄成鳥

 

(20245.5.16 千葉県北部)

 

 

教えていただいた街中の公園に着くやいなや、、、「キーキーキー」と太く甲高い声。あっ!ツミ!どこだ?またもすぐの出現です。

 

声の方を見ると…おおっ!これまた、あっさりと見つかりました。しかも成鳥雄です。やったー!そして雌の姿もあり、つがいのようです。きっと、ここら辺で繁殖するのでしょうね。

 

しかしなんだか落ち着かない様子のツミの御夫婦。激しく鳴きながら、始終周りにいる同大程の鳥の小群を追い回しています。いや、逆に追われる場面もあり、小競り合いが絶えないご様子。

 

で、その同大の鳥とはこの方…

 

オナガです。

 

オナガたちも激しく鳴きツミを威嚇していました。「ギュウエー!ギュウエー!ギュギュギュ…」と鳴き続け、オナガも負けていません。

 

オナガは全長37センチ程のカラス科オナガ属のカラスの仲間。ユーラシア東部に生息し、日本では本州以北に留鳥(一年中同じ所に生息する鳥)として生息します。餌は昆虫や木の実などです。

 

彼らはしばしばツミの繁殖地で、自分たちも繁殖をします。これは彼らの外敵(特にハシブトガラス)対策と言われています。

ツミはなりは小さいものの、やはり猛禽類。心強い用心棒となるようです。またツミにとってもオナガたちがいれば、警戒の目が増え、外敵の侵入にいち早く気付くことができるはずです。

 

こう書くとお互いWin-Winの関係ということになるのですが…ことはそう上手くはいきません。

 

なぜならツミはオナガを時に襲ってしまうからです。またツミにしても、オナガが自分たちの雛にちょっかいを出さないとも限りません。

 

つまり、いて欲しい相手ではあるけども、そんなに近くにはいて欲しく無い相手なのです。(なんだかな~)

 

なので、ある程度広範囲の緑地ならいいのでしょうけれど、街中の公園には面積に限度があります。そんなわけで、なかなか折り合いがつかないようです。

 

 

こちらは、ツミの雌です。

 

 

 

オナガたちに向け、怒りの雄叫び!怒り心頭のご様子。

 

どちらかといえば、雌の方がより激しくオナガたちに突っかかっていました。

 

 

で、そんな時に雄はというと…

ツミ雄が「は~い」。

 

…ではなく、頭をカキ…

 

 

カキカキカキと…あ~痒い。

 

 

その後は…はいッ、ちょい失礼!

 

う~ん緊張感無い(笑)

 

雄は時折、このような姿も見せてくれました。

 

 

観察を終え帰ろうとすると、最後に雄が、その姿をしっかりと見せてくれました。

 

う~ん!やはり美しいですね。雌の虹彩は淡色ですが、雄は暗色でなんとなく黒目がちに見えます。なので雄の方がちょっと可愛らしい印象です。

 

ん?なんだかそのつぶらな瞳が、急に白くなったぞ?

 

これは瞬膜を閉じたからです。

(瞬膜とは、は虫類や鳥類、一部の哺乳類にある目を保護する半透明の膜です。)

 

 

 

 

街での生活

ここでツミとはどんな鳥なのか、ご説明をしましょう。

 

ツミは雄で全長27センチ程、雌は一回り大きく30センチ程の非常に小型のタカの仲間です。分類的にはタカ科ハイタカ属に属し

オオタカやハイタカなどと同じ仲間です。小鳥類や昆虫類を餌とし、ユーラシア東部に分布します。以前は本州などでは夏鳥でしたが最近は一年中見られる地域もあるようです。ちなみに先島諸島には別の亜種リュウキュウツミが生息しています。

 

近年は都市公園や街中の神社などで繁殖する個体が目立つようになりましたが、千葉県では山間部などでも夏場に見られ、繁殖しているものと思われます。

 

今シーズン2回ツミと出会えましたが、更にもう一度観察する機会に恵まれました。

 

場所は前回のつがいのいた公園です。

 

今回は鳥仲間の御夫婦と共に、街の猛禽ツミの生態に迫ります!

 

 

現地に着くとまたも鋭いツミの声がしました。ただ、今回はやや遠くからします。早速声のする場所に急行すると…

 

 

なんと!いきなり、小鳥を捕えた雄のツミが現れました!

 

(2024.5.18 千葉県北部 鳥仲間撮影)

 

 

 

雄は捕えた獲物を雌に渡し、再び道路を挟んで向こう側の林へ飛び去りました。

雌はすぐさま獲物を食べ始めました。

 

 

 

羽毛を抜き…

 

もの凄い勢いで食べていました。

 

ところで、今回捕えた小鳥の種類は?

 

御夫婦が撮影した獲物を掴んだ雄の写真、そして雌の採餌中の翼の写真を、羽に詳しい若き鳥仲間に調べていただき、総合的に出した結論はシジュウカラ。シジュウカラはちょうどこの時期に巣立つので、おそらく巣立ち雛を捕えたものと思われます。

 

 

 

 

ちょっとここで、独り言…よくこのようなシーンが出てくると「弱肉強食」とか「野生の掟」とかいう言葉が出てきますよね。

 

う~ん、、、申し訳ないのですが、どうも個人的にはそのような言葉は使いたくないかな…って思っちゃいます。

まあ確かにそのような側面が自然界にはありますが…う~んでも、どうしても違和感を持っちゃうんですよね。(ホント、すみません。)

 

例えばこのツミたちですが、ここまで成長するのはとてつもなく大変だったことでしょう。親離れしたと同時に猛禽類は自らで獲物を捕えなければ生きては行けません。きっと一緒に生まれた兄弟姉妹のほとんどが、上手く獲物を捕れず飢えたり、敵に襲われたりなどして死んでしまったはずです。そして運良く大人となった今も、営巣をし繁殖をするという大仕事があります。つまり次世代を育てなければならないのです。その為には生まれてきた雛たちの分も、より多くの獲物が必要となります。自分の身を削りながらの狩りをしなければならず、これはかなりの重労働。しかもおちおちしていると、獲物をカラスなどに狙われる心配もあります。いや、それどころか彼らより更に大型の猛禽であるオオタカやハヤブサに、油断しているところを襲撃される危険性だってあります。そうなると、下手をすれば一家全員の命すら危うくなるのです。

 

それに彼らの主食ともいえる小鳥たちだって、早々簡単に捕まってばかりはいないはずです。少しでも体調を崩したり、ちょっとでも怪我をすればなおのこと。素早い小鳥たちを捕えることは到底できないでしょう。そうなれば一家全員が飢えてしまい、それは即ち「死」に直結します。

 

つまり彼らの生活は常に危険と隣り合わせであり、小鳥たちや昆虫たちによってその命は生かされているのです。

 

そう考えると、「弱肉強食」とかいう言葉は、使いたくないんですよね。

 

自然界は、皆等しく厳しいのです。

 

野生生物に強いも弱いも無いのです。

 

食事が終わると雌は巣材である小枝集め。小枝を折ろうとしているようでした。

 

これがなかなか大変そうで、結局この枝を折ることはできませんでした。

 

雄はこの間またハンティングに出かけていました。

 

ツミの雄は今回のように求愛給餌(雄が雌に獲物を与え求愛する)をよくします。頻繁におこなうこのハンティングは、無論求愛行動でもありますが、同時に産卵前の雌に十分な栄養をつけてもらうという意味もあるのでは…とも思いました。

 

また雌は営巣場所に留まり、営巣作業や巣の周りの防衛に専念しているようで、それぞれ役割分担をしているようでした。(まあ、個人的な推測も含まれておりますが…)

 

日光浴をする雌。食事も、営巣作業も一段落。人心地ついたご様子。

 

 

雄も戻って来て一休み。

 

 

こちらは別の場所の雄。こちらの雄は本格的にマ~ッタリタイムしてました。

 

 

 

 

尾羽を広げてストレッチ…静かな時間が過ぎる午後の一時です…。

 

 

…ということで、今回は、街に生きる猛禽ツミたちをご紹介いたしました。

 

いや~ツミの生活をほんの一部とはいえ、じっくりと覗かせてもらいましたね~。

 

ホント!個人的には大満足です!

 

そんなわけで…今シーズンのツミの観察と撮影は、これにて終了したいと思います。

 

まあ~これ以上やって、彼らの繁殖活動のお邪魔になってもいけませんからね。

後は彼らの繁殖が、成功するように願うばかりです。

 

人の営みの傍らで、懸命に生きるツミたちに幸あれ~!…です!

 

 

 

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。また、次回お会いしましょう。

 

では、皆様~👋またでーす!

 

 

追伸…身近な野鳥といえども繁殖期は、どこでどう警戒されるかは分かりません。ですから、繁殖期の野鳥観察は、細心の注意を持ってお願い致します。《私も含めてです。》そして、今回お世話になりました皆様、どうもありがとうございました。また、どうぞよろしくお願い致します。