ある日手紙が届いた。それを見たるいくんの表情がスっと不快そうなものへと変わる。

「どうしたの?」

「……いえ、何でもありませんよ」

 ゴミ箱に丸めて捨てると、るいくんは植物の水やりに行ってしまったので、好奇心に負けてそっと広げた。

 中にはたった一言『復讐するは我に有り』と書かれていた。

ーーああ、そういうことか。

 これは単純に見るならば『お前は本来のショゴスでは無いのだから、復讐劇に手を出すな』ととれる。

 それはそれで同族に拒絶されたことになる。

 そして、本来の意味ならば、『神が復讐するから手を出さずに待て』となる。

 しかし、るいくん自身も、種族的にも、信仰してる神は特になく、そちらの意味ならば『どこの神が手を貸すというのか』と、うちの息子ならば不愉快になるだろう。

 もともと神が妖怪かすら曖昧な付喪神ではあったが、反転した今、彼にその要素は残されておらず、地球生命と同じ祖の遺伝子を組み替えて生まれた生き物へと落とされているので、もはや神の要素もない。

 どう転んでも、るいくんは何者かにお前は手を出すなと言われているのだ。

(神と言えば)

 思い当たる相方が一匹いた。

 差出人もなく、世紀の投函方法では届いてなさそうな手紙。

 そして、身内に甘い、身近な神の末端。

(まさか、ね?

  息子が不快になる第3の選択肢を脳裏から追い出すように、本好は拾った手紙を元通りにゴミ箱へと捨て直した。