トリジローのTHE BEATLES全曲解説 & My Best Ranking -3ページ目

トリジローのTHE BEATLES全曲解説 & My Best Ranking

THE BEATLESファン歴は、約半世紀にて、また、研究し続けて、早40年の、トリジローと申します。

まだ、誰も成し得ていない、全213曲+のランキングと解説を、同時に、そして独自に掲載していきます。

これぞ、究極のTHE BEATLES解説にも挑みます。

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★19位

【While My Guitar Gently Weeps】

<THE BEATLES(WHITE ALBUM)>1968.11/22=4:45=

 

個人的に思うには、ジョージの書いた曲の中では、これが最高傑作だ!

 

素晴らしいVoのメロディライン、自然に溢れ流れていくような曲構成、泣きのギター、繊細で泣き叫ぶVo、完璧としか言いようがない。

“Something”も“Here Cones The Sun”も名曲中の名曲だが、サビの構成が多少、自然さを感じない部分が個人的には僅かにマイナスなのだ。しかし、この曲にはその無理さが一切ない。流れるようなメロディは本当に素晴らしいからだ。

 

ここで語るまでもなく、ギター(ソロ)はエリック・クラプトンが弾いている。

ジョージ自身の自信作であるにも関わらず、当初はジョンとポールをさほど興味を示さず、ジョージは煮詰まっていた。

その時に、友人となっていたクラプトンはジョージの家の近くに住んでおり、車で一緒にロンドンに行く際に、レコーディングに参加して欲しいとクラプトンに話を持ちかけたが、当初、BEATLESとのセッションは恐れ多いと固辞した。しかし、ジョージは“これは僕の曲なんだ。その僕が頼んでいるんだ“と説得して、ようやく了解して貰い参加することになった。

CREAMのエリック・クラプトンがスタジオに現れると、人間は不思議なもので、外部の人間がいるだけで(しかもクラプトン)、バラバラになりかけていたBEATLESのメンバーはよそゆきの顔になり、良い緊張感となって真剣にジョージの曲に向き合ったのである。

(これが、後のゲットバックセッション時のスタジオ内が険悪な時に、ジョージがビリー・プレストンを連れてくることに繋がるのである)

 

言うまでもなくクラプトンは楽曲を理解した繊細で、チョーキングを多用した泣きまくる最高のギターソロを弾いた。しかも、1テイクで決めたこともさすがである。

 

しかし、この曲が素晴らしいのはクラプトンのギターだけではない。他のすべてが素晴らしいのだ。

まず、ジョンの掛け声“Eh, Up!”から始まり、イントロのポールが弾くピアノのイントロが圧倒的に素晴らしいのである。このフレーズがこの曲のイメージをすでにイントロだけで作り上げているといっても過言ではない。

ちなみに、ジョージもこのイントロは大のお気に入りで、後年、ソロでのライブの際に、このポールが弾いてレコーディングしたフレーズを一音一音、正確に弾かせた程である。

 

そのイントロは、コード「Am→Am7→D7→F…」で、ポールの弾くピアノがAの単音を鳴らし続けるところに、ジョージのアコースティックギターが、得意なクリシェのコード進行を用いて低音で「A→G→F#→F」と入ってくるところから始まる。

 

更に、素晴らしいのは、クラプトンも“自分のギターはポールのベースには敵わない”と絶賛した、ベースプレイだ。

オーバーダブでの、リッケン4001のゴツイ音での和音弾きである。サウンドや音色、フレーズは考え尽くされていて、曲全体を支配している。

 

ジョージは、リッケンのギターの他にアコースティックギターを鳴らし(アンソロジーでアコギVer.は聴ける)、ハモンドオルガンも弾いている。

ジョンは音は小さくミックスされてはいるもののバッキングのギターはなかなか良いのである。

リンゴは控えめなプレイだが、ハイハット、リムショットと効果を上げている。

 

サビは、Amのキーから1音半下がってのAメジャーに転調している。

しかし、まったく無理のない転調で、ムードも俄然上がる効果も素晴らしい。ポールやジョンの転調曲と同様、この無理のなさにも、ジョージの成長ぶりが感じられるのである。

 

この曲もステレオとモノラルではミックスが違う。

ステレオでは、エンディングのフェイドアウト前にジョージが哀しく泣くように歌う印象的な「yeah yeah yeah~♬」のVoが入っているが、モノラルではカットされている。

 

 

 

 

 

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★20位

【I've Got A Feeling】

<LET IT BE>1970.5/8=3:36=

 

解散間際に魅せた奇跡の1曲とは正に、この曲の事である!

 

そう、ジョンとポールがデュエットするだけでなく、それぞれの違う曲を合体させたもので、しかも、異なる2曲が融合している。

詳しく言えば、聴いての通りだが、ポールの曲(I've got a feeling)→ジョンの曲(Everybody had a hard year)となり、最後は、この2曲が同時に歌われているという、いわゆるクラシックでいう対位法で構成されている曲なのだ。

それが可能なのは、キーがAメジャーで、A→Dの同じコードの簡単な繰り返しであることだ。

しかし、これが見事に溶け合っている。

最初のポールのパートのVoは狂おしいほどのシャウトで歌い、次のジョンのパートはそれをスカしたようなクールでシニカルな淡々とした歌い方をしているのが対照的で、この曲のグレードをグッと上げているのだ。

しかも、そのままの互い正反対のテンションのまま、最後の同じ演奏で違うメロディをそれぞれ2人が歌うのだから、鳥肌モノなのだ。

コーラスで歌っても最高。別々に歌っても最高。つくづくレノン=マッカートニーは至高のソングライティングチームであると同時に、古今随一のボーカルデュオでもあると思い知らされます。

もっと言えば、こういうロックバンドは他にいそうでいない…というか、今の今まで誰も真似出来なかったのである。

 

繰り返し、またVoの話になるが、ポールのVoの気合いは凄い。この歌い方を暑苦しくて好きじゃないという意見もファンからも多少聞くことがあるが、個人的には、ポールのシャウトの中では1番好きといっても良いくらいのお気に入りだ。稀に見るキレてイッてしまっている時のポールのパワフルさは手が付けられない。例えジョンでも歯が立たないのだ。

だからこそ、季を見るに敏感なジョンは逆説的にクールに歌った節もあるかも知れないがいかがだろう?

 

歌の内容にについては、ポールのパートは当時の婚約者であるリンダに捧げた歌詞で、ジョンのパートはBEATLESの過去の回顧した歌詞なのである。

 

アルバム「LET IT BE」に収録されたものは、Dig A Pony 同様、ルーフトップでのライブ録音である。

サウンドも一発録りのノリのよい雰囲気がそのまま凝縮されている。

 

ジョージが弾くギターのコードワークを中心としたオブリガードや、3連符を強調したストロークなどが凄く良い味を出している。

1発ライブなので、多少のリズムのズレはあるが、かえってそれが生々しさを感じさせているので、ポールが目指した“このセッションは昔のようにオーバーダブなしでバンドサウンドで演ろう”というコンセプトに1番沿った、成功した曲ではなかろうか。

 

それに加えて、ビリー・プレストンの出しゃばら過ぎない渋みを効かせたプレイがまた良いのだ。

まあ、ビリーが参加したからという訳ではないのだが、この曲はロックではあるけれども、ソウルテイストの黒っぽい要素が強い楽曲でもあると思う。

ジョージのカッティングや、特にポールのベースのうねりは強烈で、それを感じさせるからです。Bass&Voの1発ライブなので、いつものメロディベースもなく音数も少ないけれど、その分のうねりが効いているのですが、このライブ演奏に懸けるポールの意気込みがこれでもかと伝わってきますね。

 

追記だが、ジョンが作ったパート“Everybody had a hard year”は、ゲットバック・セッションが行なわれる前に2回レコーディングされている。

アップルスタジオで先にレコーディングされたVer.テイクは、1996年に発売された「アンソロジー3」に収録されたが、元はアルバムに収録される予定ではあった(上記の通り、ルーフトップのライブVer.が最終的には使用された)。

 

ポールのこの曲に対する後の発言がある。

“僕らはまだ一緒に仕事をしていたんだ。お互いの曲を気に入ってなかったら、あんなに簡単に一緒に録音は出来ないよ”

 

 

 

 

 

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★21位

【Day Tripper】

<Single & PAST MASTERS Vol.2>1965.12/3==2:48

 

BEATLESのギターリフの代表曲はというと、間違いなくこの“Day Tripper”になるだろうという、余りに印象的なリフの名曲中の名曲!

 

ジョンとポールがずっと2人で歌っていて、珍しくどちらが作っててもおかしくないような曲調だし、ポールのソロライブでも何度も演奏しているので、ポールの曲か?と思いきや、ジョンの作品である。

但し、歌詞の一部をポールが手伝っている。

“Day Tripper”は、12月に予定されているシングルの締め切りに書かれた「強制された」曲でもあった。直感型で、曲作りも手早いジョンにしては時間がかかり、苦労した曲とも言っている。その分、良い曲が出来たと自負している自信作である。

ジョンのブルースをベースにしたギターフックは、ローリング・ストーンズの「Satisfaction」に対する彼の答えとも言われているが、“Day Tripper”の方がより複雑で、サウンドの厚みとアレンジの妙の絶妙の組み合わせだった。

 

ジョン自身がお気に入りのタイトルが“Day Tripper”は、直訳すれば"日帰り旅行者“の意味だが、実はそうではなく、それに引っ掛けた“トリップ”…要はドラッグのトリップの歌だ。

恐らく、BEATLESが書いた最初のドラッグソングでもあろう。

ジョン自身は、“僕らはフルタイムのトリッパーだけど、日曜だけドライブするような、流行りでちょっとだけ手を出して、私はトンでる女よ”みたいに言う人を皮肉った歌だと言っている。

 

楽曲の話へいこう。

まず、この余りにも有名なリフはジョンが考えたものだが、レコーディングではジョージがダブル(2本のギター)で弾いている。

そこに、ポールがユニゾンでベースを弾く。但し、1回目ハイポジションと2回目ローポジションと使い分けている。あとは、微妙に最後のフレーズを崩して変えているね。

 

Aメロはポールが主旋律を歌い、ジョンが下のパートをハーモニーで歌っているが、サビになるとジョンが主旋律となり、ポールに加えてジョージも加わり、上のパートを歌い3声コーラスとなる。

実にBEATLESらしい上手い構成だ。

まあとにかく、サビメロがカッコイイ。文句なし!

2コーラス目のAメロの歌い方を変えてるのもソウルフル…というより初期のファンクといった感じがナイス(ソウルフルなDrive My Car程ではないが…)。

あとは、ジョンの最後のファルセットもゾクっとくるし、エンディングの“Day Dripper Yeah~”の繰り返しの終わり方も好きだ。

 

得意の転調も忘れてはいけない。

間奏で、B7に転調して、そのまま上昇コーラスになり、またイントロに戻るもの。

変化を付けたかったのでしょうが、ちょっと変わった構成ですよね。

 

“Day Dripper ”はシングル曲になった曲だが、当初は“We Can Work It Out”がA面候補だった。しかし、“Day Tripper”の出来も良く、メンバーとスタッフでどちらをA面にするかで意見が割れた。メンバーは前者で、スタッフはこの曲だった。

ただ、作者のジョンもこの曲を押した為か、結局は両A面となり、英国では“Day Tripper”の方がチャートの1位になった。アメリカでは“We Can Work It Out”がA面になり全米1位。“Dy Tripper”は5位止まりだった。つまり、英国での、この曲の評価は高い。それはロック色が強いBEATLESのイメージに沿った楽曲だったというのも大きいと思う。

 

世界初のPVのことを以前書いたが(“We Can Work It Out”参照)、こちらの曲は、まずまずだった“We Can Work It Out”に比べて少々、垢抜けない。まあ、仕方のないところか…。

 

ちなみに、日本公演のBEATLESとポールのソロでのどちらでも演奏されたBEATLESナンバーのは3曲のみで、そのうちの1曲である。

(他の2曲は、“Yesteday”と“Paperback Writer”)

 

 

 

 

  

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★22位

【For No One】

<REVOLVER>1966.8/5=1:58=

 

正にポールの隠れた大名曲とは、この“For No One”のことであろう。

 

たった2分にも満たないこのクラシカル調の「小品」には、とてつもない深さがあるのだ。

そして、ポールの長いキャリアの中でも最上級に位置する曲。

 

風変わりなコード進行、二人称で冷ややかに描かれたもの悲しい歌詞、そして、どこからともなく聞こえるようなフレンチホルンのソロに至るまで、“For No One”は、“Hey Jude”や“Yesterday”と同じ次元ではめったに語られないほど過小評価されているポールのソングライティングの金字塔なのだ。

 

使用される楽器も、ピアノとホルンとリズム楽器だけによるシンプルさで、ピアノの代わりにクラビコードを用いてもいる。間奏と最後のAメロにはホルンが使われており、新たな方向性を見い出している。

ホルンが、この美しい曲をより格調高く響かせ、ポールの歌声に溶け込んでいる。

定番の3部コーラスもバックコーラスもなく、いたってシンプルなボーカルである。そう、この曲にコーラスは要らないのだ。

 

そして、ポールが初めてピアノをメイン楽器で使用した最初の曲だということも付け加えておきたい。

 

“Yesterday”などと同様に、殆どポールの独壇場の曲である。

印象的なフレンチホルンのアイデアはポール自身で、この曲には通常なら(過去の経験からからも)ストリングスが合うだろうというところが、それをポールが嫌がった。

大仰な感じではなく、子供の頃から好きだったフレンチホルンの音色が頭にあったらしい。早速、そのメロディが浮かび、ジョージ・マーティンに聴かせ、マーティンはホルンの使用には賛成だったが、ポールの口ずさんだメロディはフレンチホルンでは通常は出さない高い音域の音があった。だが、フレンチホルンの案も、ポールのメロディも気に入ったマーティンは、これくらいの音なら無理して出して貰おうと言ってのけたのだ。一流プレイヤーにはそうした技術があることをマーティンは知っていた。ジョージ・マーティン…意外とロックンローラーだな!(笑)

マーティンが連れて来たフレンチホルン奏者は、アラン・シヴィルというフィルハーモニア管弦楽団の主席ホルン奏者。見事な名演でしたね(後に、A Day In The Lifeにも参加します)。

このセッションがこの日の3つ目の仕事だったそうです。ポールは、この人の実績を理解しておらず、もっと上手く演奏してくれと指示して、彼をムッとさせていたとか(出たな、後の鬼ポール・笑)。

 

ベ-スラインは、サビの"And in her eyes you see nothing..."からの2小節目と4小節目で階段を登るような8分音符を奏でており、Voの上昇ラインと上手く調和している。

必殺のクリシェも効果を挙げ、見事なベースアレンジとなっている。

 

上記の通り、ポールの独壇場の曲なので、リンゴ以外…ジョンとジョージはレコーディングに参加していない。

リンゴは、Drを10テイク録ったが、最終的にほとんど消されてしまった。その後のオーバーダビングで、シンバルとマラカスを入れて、効果を挙げている。

 

歌詞は、ジェーン・アッシャーとの愛の悲しい結末とも言える内容である。2人がスキー旅行に行った際に口喧嘩になったことから生まれた歌詞とポールは語っている。

それを、見事に韻を踏んで、心を奪われる歌詞となっている。文学のようでもある。

 

こんな美しい曲を、さり気なく作り、さり気なくアルバムの後半の片隅に収録し、通り過ぎた者だけが感動を得られるということに凄さを感じる。

ポールは、80年代の映画「ヤア!ブロードストリート」でこの曲を再録しているが、それは、美術館の展示品のようにしておくのが嫌だったからというのも頷ける。ファンにはお馴染みの曲でも、一般的には、発表以来ライブでも1度も演奏されたことがない“隠れた名画”のような楽曲という証であろう。

ちなみに、ライブでは、遂に2004年に披露されたのである。

 

 

 

 

 

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★23位

【You Can't Do That】

 

個人的には大名曲だと思っている初期のジョンの傑作!

 

英米で特大ヒットとなった“Can’t Buy Me Love”のB面曲だが、もちろん“Can’t~”も好きだが、この曲の方が好きだ。黒っぽいロックフィーリングが最高だから。

一早く、R&B風な雰囲気が醸し出されている楽曲というのも凄いし(ウィルソン・ピケット風にしようとしたとジョンは語っている)、これギターサウンドの妙技も味わえるし、ジョンのざらついた最高のVoが聴けるし、とにかく楽曲がカッコイイの一言。

 

しかも、ただのロック曲だけでなく、7thや4度のコードなどジョンらしさも満載で、サビのコードの展開も素晴らしく、絶妙なのだ。

ブルース進行崩れのAメロと異なって、サビのコード(B7→Em→Am7→Bm7→G7→B7→Em→Am7→Bm7→D7)も、なかなか美しいパターンを展開している。

 

とにかく、ジョン全開の曲で、ジョンのリズムギターの素晴らしさはいうまでもなく、この曲では、間奏もジョンがリードを弾く。というより、カッティング・ソロと言った方が良いだろう。

リズムの刻みながら、合間にチョーキングがバッキングでのソロプレイなど、リズムの勢いのまま弾きまくっている。例えていうなら、BEATLESのラスト曲“The End”のあの3人ギターソロのジョンのパートを思い出してくれれば良い。小気味が良いのだ。

 

歌詞もなかなかに凄い。

“お前は嫌がるかもしれないが 言わなきゃいけないことがある”とやや脅し気味だ。嫉妬深い独占欲のある男の歌で、後のジョンのソロの名曲“ジェラス・ガイ”のようだ。

忙し過ぎて余り家に帰れないジョンのシンシア(当時の妻)への猜疑心から来る歌とも言われたが、真相はいかに?

 

ジョージはリッケンバッカーの12弦ギターを使用してる。実は、BEATLESがリッケンバッカーをレコーディングに使った最初の曲でもあるのだ。

ジョージがアメリカツアー中に、リッケンバッカー社から送られたものだ。それを使用したのだ。

BEATLESか使用したことで、リッケンは有名になり、後にポールのベースもリッケンで革命的なプレイをしたお陰で一大ブランドになった。お陰で今の今でも自分はリッケンのベースを買えていない(笑)。

 

そして、ブリッジ部で登場するリンゴの、裏からのシンコペ気味の3連打が最高にクールだ。

 

更に凄いのは、3人のVoとコーラスがすべて演奏と一緒にされたライブ録音であることですね。

デビューしてからだと、ライブ演奏を1番こなしていた時期でもあるので、演奏力の充実ぶりを感じさせます。

しかも、たった1日の録音。1964年2月25日。つまり、ジョージの21才の誕生日。1番年下のジョージは前日まで20才だったというのが恐ろしいですよね。

 

そんな凄い曲が、アルバムでは、さり気なく最後から2番目の場所に収録されている(B面6曲目)。

それも信じがたい事実だが、それもまたBEATLESである。そして、隠れた名曲としてマニアからは愛されている(?)のかも知れない。

 

ジョン自身も実は、アルバム「A HARD DAY’S NIGHT」では1番の自信作と言っているのだ。

このアルバムは13曲中10曲がジョンの単独作で「ジョンのアルバム」とまで言われているアルバムである。タイトル曲を始め、珠玉のジョンの10曲でこれが1番とは嬉しいことを作った本人が言ってくれているではないか(^O^)/。

そういう意味でも、ジョンは確かに凄いが、BEATLES全員も凄い、…そう、大傑作です!

 

 

 

 

 

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★24位

【Yesterday】

<HELP!>1965.8/6=2:04=

 

世界で最もカヴァーされた曲としてギネスブックに載る(その数3000曲以上)、誰もが知るポールの名バラード。

 

時は1965年。ロックバンドとして、世界で初めて弦楽四重奏を使った曲としても革命的な曲でした。

それまで、BEATLESの音楽を“ただの騒音”と言っていた大人達や、そしてクラシック畑の人達までも唸らせて、BEATLESそのものの価値観を根底から変えてしまった曲でもあります。

 

この名曲の誕生話はすでに有名で世に知られてはいるが、おさらいしよう。

ポールは、朝、寝ていて寝ざめようとした時に、ふとこの曲のメロディが浮かんだのだ。それは一瞬だった。で、それを忘れない為にすぐに家のピアノで書き留めた。

朝起きたばかりに出来た曲なので、とりあえず「スクランブルエッグ(Scrambled Eggs)」と名付け、そう歌っていた。

“Yesterday”は、1965年8月に発表されたが、曲が浮かんでから1963年の11月にはメロディは出来上がっていた。つまり、曲が浮かんでから1年半以上も眠らせていたのだ。発表までは2年近くにもなる。

それには理由があった。

ポール自身、余りにも簡単に、かつ自然に出来てしまったが為に、自分が作った曲ではなく、過去に誰かの曲ではないかと心配になり、メンバーを始め、ジョージ・マーティン、スタッフ、友人に至るまで“この曲って知ってる”と聞いて廻った。もちろん、誰の答えも“聴いたことはない”だった。これで、ポールはようやく自分のオリジナルということに確信が持てたのです。

数々の名曲を生み出した天才ポールの初期の頃の微笑ましいエピソードだけれど、それだけ特別な“何か”自ら感じていたのでしょう。

 

元々、ロックバンドの…BEATLESの曲調ではないのではということで、当初はポールのソロとして発表する予定であった。

しかし、最終的にはBEATLESの楽曲として発表することになったのだが、アルバム「HELP!」のB面7曲目という何とも地味な曲順に置かれたばかりか、英国ではシングルカットもされなかった。

歴史や伝説が生まれる瞬間というものは得てして、多分こういうものなのだろう。

しかし、アメリカではシングルとなり、大ヒットとなった。奇跡はアメリカから起こり始めていたのだ。

 

ということで、この曲にはポール以外のメンバーは参加していない。

開放弦の響きを出したかったポールは、エピフォンのアコースティックギターの弦をすべて1音下げ、キーが「F」の曲を「G」で弾いて録音した(だから、普通にFのキーで弾いても、この曲の感じが出ないのである)。

だが、ジョンとは好対照に自分楽曲はいつも概ね曲構成や入れる楽器が頭の中で先に構築されているポールにしては、珍しく今回のアレンジについては決めかねていた。

そこで、登場したのがジョージ・マーティンの弦楽四重奏を入れてみたらという当時としてはあり得ない、驚くべき提案だった。

ポールはその意見を取り入れたが、アレンジ自体はポールのアイデアが元になったものである。そう、全部がジョージ・マーティンが全部1から考えた訳ではない。

ロックバンドのサウンドには拘りがあり、チェロの音だけを同じフレーズではなくブルース調にしたいとか、バイオリンにビブラートをかけないで欲しいとか、弦楽奏にはタブーなことを提案し、甘くなり過ぎないよう辛口テーストのアレンジに拘った。

ジョージ・マーティンは“バッハなら絶対にこんなことはしない”と言ったが、この曲には何かを感じていたのだろう、ポールの意見を聞き入れ、最善を尽くして弦楽四重奏のスコアを書いた。

ここが、ポールだけでなくマーティンが“Sir”の称号を貰った所以である。ポール&ジョンは最強の名コンビだが、ポール&マーティンもこれ以降、最高のチームになっていく。

そうそう、同じスタジオには不思議とジョージ(ハリスン)だけはいて、彼自身も弦楽四重奏を強く推したという発言もある。

 

この曲は、バラード名曲のイメージそのものかも知れないが、実は楽曲の内容そのものは、定型を外れていて王道ではないもので、まず、コード進行が普通じゃない。歌い出しのF→Em7→A7からして意表を突いている。

それに、歌い出しの“Yesterday~♬”の部分がFのコードなのに、Fの構成音が入っていない「レ(要はD)」の、音から始まるという意外性と不思議感。

そして、Aメロが7小節という不可解な構成でもある。しかし、不自然さをまったく感じさせないのは、メロディの流れが余りに自然なので、まったく気が付かないのだ(サビは普通に8小節であるが)。

 

ちなみに、この曲の歌詞は、14歳の時に亡くなったポールの母メアリーのことを歌ったものと言われています。

 

余談だが、この日(1965.6/14)の“Yesterday”Vo&ギター録音は、夜の行われたが、朝から「I've Just Seen A Face(夢の人)」を6テイク歌い、次に、あのキーの高い「I’m Down」を7回シャウトして録音した。そして、そんな声の中で平気で“Yesterday”のVo録りをしたのだ。この時代のポールの声(喉)の強さには驚くばかり(ジョンなら声が潰れていただろう)。

ラストアルバム「ABBEY ROAD」の“Oh! Daling”を毎日練習してようやくVo録りに挑んだ際に“5年前だったら、あんなの簡単に出来たのに”と言ったのも頷けますね。

 

BEATLES通を名乗る人ほど、この曲の評価を上げたがらないと思う傾向があるかも知れないのですが、音楽的に分析すればするほど、屈するしかないほどに練られた完璧な曲なんですよね。

 

 

 

 

 

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★25位

【We Can Work It Out(恋を抱きしめよう)】

<Single & PAST MASTERS Vol.2>1965.12/3=2:14=

 

BEATLESが初期から中期に差し掛かろうとする時代の名曲中の名曲!

 

シングル両A面(片面は“Day Tripper”)の2曲ともジョンとポールの共作というのはこの盤が最初で最後です。

 

ポール主体の楽曲ながら、ジョンとポールの双方の曲を合体させた最初の曲であり、それが、300%くらい効果を発揮させた曲の代表例!

 

もちろん、2人の天才ソングライターは、それまでも別々の曲を断片を持ちより、それを2人で発展させたものはあるが、ここまで明確に分業させた例が初めてということである。

但し、正確には分業というよりも、楽天的な甘い感じのメロディを書いてきたポールの資質を良く知るジョンが悲観的な歌詞で応対し、辛口で哀しげなメロディを加えている。2人の性格や作風の違いといっても良い。

この効果が絶大で、元のポールのメロディが素晴らしいだけに、もう1つ背反する素晴らしいメロディが登場してくるのだから名曲にならない訳がない。

 

Aメロとサビの主旋律はポールの作曲で、流れるようなメロディはもう世界最高のメロディメーカーの本領が全開といったところで、歌い方もとにかく前向きで明るい。ポールのVoはダブルトラックである。

相反して、中間部のジョンの書いた哀愁美のメロディを歌うジョンの切なさと、コーラスの哀愁感が何とも堪らない。しかも、2小節、2拍3連になり、これが絶大な効果を上げてもいる。さり気ないアレンジも素晴らしいのだ。

その、この曲の素晴らしき点である「中間部とサビからラストにかけてのリズムがワルツになる部分」は、ジョージのアイデアである。このワルツをポールは“ドイツワルツのような”と表現している。

 

この時期、ポールはジェーン・アッシャーとの会計や想いを歌にした歌詞が多く見られる。これは、後のジョージのパティへの思いや、ジョンのヨーコへの思いを歌にした歌詞が多く登場してくるものの先駆けともいえる。

ただ、この2人と違うのは、ポールとジェーンと関係が良好な時代のものから最終的に破局に向かって行く、徐々に曲によっての、その過程の歌詞の変化があることだ。

 

楽器構成はシンプルだ。

J-160 Eのギターは、ジョンではなくジョージだ。ジョンはギターすらも弾いていない。

但し、ジョンはハーモニウムを弾いていて、これがとても印象的だ。あと、タンバリンを叩いている。

 

ポール自身は、この曲を、“アップテンポのC&W”と称している。

 

ちなみに、“We Can Work It Out “と“Day Tripper”は、初めてプロモーション・ビデオが制作されたBEATLESの曲である(モノクロ映像)。

正確には、最新のシングル発売に合わせてのPVということであれば、世界初のPVは“Paperback Writer”ということになるのだが、TV出演が出来ない代わりにという意味で作られた映像を含めれば、この曲が最初ということになる。

それまでは、映画のシーンが切り取られられる形での映像はあったものの、1曲としての作品としての映像は、これが“世界初”だったのである。

 

この曲は、多くの人に愛され続けてきた楽曲でもある。特にアメリカで。

人生に迷っている人、落ち込んでいる人が救いの歌にもなったのだ。

(ちなみに、アメリカでは、BEATLESの全楽曲人気投票で2位になったこともあるくらい人気曲なのである)

 

とにかく、純粋に楽曲のレベルが高いに尽きる!

同じく名曲“Day Tripper”との両A面となったのも頷けるが、でどちらも出来が良過ぎて、最後までどちらをA面にするかはメンバー、マーティン、スタッフは迷っていた。

BEATLES史上、“Penny Lane”と“Strawberry Fields Forever”の両A面曲と並び称されるほどに双璧な、最強のシングルである。

 

余談だが、この最強の両A面シングルと&アルバム「RUBBER SOUL」は本国である英国では同日に発売されたのだ。

当時、この発売日(後日でも)にこの両方を買って聴いた人は、心の底から幸せだったに違いない。

 

 

 

 

 

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★26位

【Blackbird】

<THE BEATLES(WHITE ALBUM)>1968.11/22=2:19=

 

ポールの、アコースティックギター曲の傑作中の傑作!

 

黒人蔑視がまだ根強かった1960年代のアメリカでの公民権運動が活発となり、黒人女性を励ます為に書かれた曲である。

そう、“Blackbird”とは、「クロウタドリ」のことで、実は、黒人女性のこととポールは言う。英国…時にリヴァプール辺りでは、女性のことを“Bird(小鳥)”と表現するらしいのですね。

ただの小鳥のことを歌った牧歌的ソングではないのである。

 

しかし、ポールの弾く独特の2フィンガー奏法の爪弾く音は瑞々しく煌びやかだ。

指弾きによるストロークとの中間的な演奏が聞け、3弦開放音(G音)が通奏的に鳴り続けているのが特徴。

ジョンもこのギターを褒めている。

マーティンD-28だ。

そこに、敢えて鼻歌のように淡々と歌うポールの声がまた良いのである。

サビだけ、ポールのダブルトラッキングである。

 

元は、ジョージと共に習ったバッハの練習曲「リュート組曲第1番の“ブーレ”」から着想を得たものと、後年、ポールはステージでも話している。

 

ポールとジョージ・マーティンとジョンとの3人で、本作のアレンジについての話し合いを始め、ポール自身は「2番目のヴァースから入ってくる弦楽四重奏」を考えたが、マーティンは「演奏が一度止まる箇所までポールのギターとVoのみで通し、そこで遠くからアレンジされた音が聞こえてくる」という案を出した。結果、この案でまとまったのだ。

ちなみに、ジョンは、アコースティック・ギターとピアノでのアレンジが良いと発言していた。

 

ポールという人が凄いと思うのは、曲を思い付いた時に、即座に、どの楽器を使ったら良いかというイメージがすぐに出来ることだ。

この曲に関しても、どうして、この方法が良いと浮かんだのかは分からない。

それはまず、リズムパートだ。

足元にマイクを置き、メトロノームを鳴らして、足音でリズム音を出している。これがレコーディングされているのだ。

ここは、ドラムのハイハット音や何かの楽器を普通なら入れるだろうが、ポールはそうしなかった。その感覚が凄いのだ。

実際、これしか考えられないという程に、この足音と、D-28のギターの音が凄くマッチしている。

 

モノラルとステレオでは、小鳥のさえずりのサウンド・エフェクトの挿入箇所が若干異なる。またエンディングではステレオの方が、遅く始まる分、少し長くさえずっている。これは、ミックスの段階で追加したからということである。

 

こんな凄い名曲を、録音から~ミックスまで、たったの6時間で仕上げてしまったのだから脱帽である。

 

ポール自身お気に入りの曲で、今でもライブのSet Listに加わっている。

 

ジョンも1行だけ歌詞を手助けしている。

ジョン“あの曲には歌詞を1行提供しているよ”。

さて、何処でしょう?

 

 

 

 

 

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★27位

【Because】

<ABBEY ROAD>1969.9/26=2:45=

 

3声のコーラスワークの最高傑作!!!!!

 

何故か、この曲を聴く度に、遠い世界に誘ってくれるような気持になるのだ。それは40年以上、変わらない。

 

ヨーコが、ベートーベンのソナタ「月光」を弾いていた時に、ジョンが面白半分で楽譜をひっくり返して、“これで弾ける?”というと、あるパートをヨーコが反対に弾き出したことからジョンがヒントを得たという曲。

どこまでが真実かは分からないが、充分に有り得る話だ。ジョンという人の、インスピレーションされた時の才能の爆発は凄い。こんな美しい曲を思い付くのだから。

ポールは、他のジャンル音楽を取り入れて昇華して名曲を書く天才なら、ジョンは正にインスピレーションの天才だ。

 

このハーモニーは、3声を3回重ねて、9声にしたものである。

上がポール、真ん中がジョン、ジョージが下のパートだが、例によって、途中でパートが入れ替わる。敢えて難しいことをやるのが彼等だ。

 

レコーディングの日、3人のBEATLEは“Because”を何度も何度も歌い、恐らく1回につき20回から30回は歌った。

元々、音を外すことはほとんどない彼等は、自分のパートを覚えるのも得意で、ピッチも問題はなかった。しかし、この曲に関しては、それぞれの言葉を正確に同じタイミングで始め、終わらせるフレージングをするのは簡単ではなかった。

"その日はジョンも珍しく忍耐強く、ポールを1、2回叱責しながらも、ある時は「何だよ、もう勘弁してくれよ...こんなの書かなきゃ良かったよ!」と自らキレてもいたという。

ジョン・エメリックは回想する。

「でもジョンはやり続けたし、ジョージ・ハリスンも驚いたことに、一言も文句を言わなかった。彼らは、自分たちが何か特別なことをしていることを自覚し、それをきちんとやり遂げようと決意していたのです。その日、道化も冗談もなく、みんなとても真剣で、とても集中していた」と。

"彼らの目標は、それぞれのパスを最初から最後まで歌い切ることでした。それはほとんど誇りのようなものでした。

というのも、フレーズとフレーズの間にブレスが入ると、ドロップインが一目瞭然になってしまうから。

「その日、私はビートルズの4人の最高のパフォーマンスを見た。全員が100%の集中力を発揮し、リンゴも目を閉じて静かに座り、そして、ガイド替わりのハイハットを刻んでいた。バンドメンバーに最高のパフォーマンスをするように静かに促し、全員が一丸となってあのボーカルに釘付けになったのだ。だから4人のBEATLESの結晶曲なのだ。それは、長年にわたって欠けていたチームワークの顕著な例であった」

もし、BEATLESがこの精神をもう少し長く持ち続けていたら、どんなことが出来ただろうと想像してみたくなる。

 

そんな最高のコーラスワークも、後年、ジョージによると、最高のハーモニーだったとしながらも、

“あのコーラスには心残りがある”と発言している。

自信や全体像が完璧ではなかったことを言いたかったのか。…いや違うと思う。歌うだけで精いっぱいで無難なコーラスになり、彼等特有な誰も真似出来ないようなコーラスアレンジをもう少ししたかったということなのではないだろうか。今となっては真意は分からないが、何という志の高さの意識なのだろうと感心してしまったものだった。

 

ホルンのような音を鳴らす、当時、最先端のモーグ・シンセサイザー(世界初のシンセサイザー)が絶大な効果を挙げている。アレンジも素晴らしい。弾いているのはジョージ。

そして、ジョージ・マーティンが弾くイントロのエレクトリック・ハープシコードのアルペジを奏法が重要な役割を果たしている。

ポールは珍しく、甘い音を出す為かベースを指弾きで弾いている。

 

コード進行は、D→Ddim→C#m→D#m7(-5)→G#→A→C#m→A7→A7(13) となかなか神秘的なのである。

キーは、DではなくEなのである。しかも、途中でF#に1音上げの転調となる。

 

ジョンはピアノで伴奏しつつハミングでメロディを口ずさみ、ヨーコに聴かせた。

聴かせ終わってジョンがヨーコを振り返ると、彼女は穏やかに微笑んで言った。

「素敵よ…宇宙的ね…」。

ジョンがどれだけ嬉しかったか、想像に難くない。

 

愛についての歌だけれども、哀しいほどの青い空を歌った部分、

Because the sky is blue, it makes me cry

Because the sky is blue

が、シンプルながら極上の歌詞だと思いますし、毎回、感動してしまうのです。

 

 

 

 

 

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★28位

【Penny Lane】

<Single & MAGICAL MYSTERY TOUR>1967.2/17=3:00=

 

恐らく、ポール・マッカートニーという人のメロディメイカーとしての能力が頂点に達したことを意味する名曲である。

 

ジョンが、故郷リバプールを描いた作品が“Strawberry Fields Forever”なら、全き違う切り口で故郷を描いた曲がこの“Penny Lane”。

この世紀の名曲2曲は、同じ時期に作られた。

同じテーマでも見事なまでに曲調が違う天才同士の、圧巻の仕事ぶりである。

 

ポールの“Penny Lane”は、何の不純物と翳りのない幸福感に満ち溢れている。

そう、旋律と演奏もさることながら、歌詞のおいての情景描写が素晴らしいの一言で、例え行ったことがなくても、誰もがこの街とこの通りを歩いて、魅せられてしまっている。そんな魔力すらも感じる。

 

そして、それまでのポール&ジョンではなく、ポール&ジョージ・マーティンという新たなコンビの幕開けといっても良い作品で、アレンジなどの“Yesterdayや”“Eleanor Rigby”とのタッグ作とも違う本当のタッグが、この曲から生まれたような気がするのは筆者だけであろうか。

 

ポールは、すでに頭に中に曲の明確なサウンドのイメージは出来上がっていて、マーティンにフルート、ピッコロ、ホルンのアレンジを依頼している。

しかし、ポールは何か物足りなさを感じていた。そんな時に、偶然、TVでバッハの「ブランデンブルグ協奏曲」を聴いた。

その甲高いトランペットの音に魅せられ、翌日、ジョージ:マーティンに”あの高い音色の楽器は何だい?“と聞いた。すると、マーティンは、“それは、ピッコロトランペットだよ”と答える。

その音色が気に入っていて、すでにポールの中では、この楽器でのメロディが浮かんできたという。

翌日、ポールが口ずさむメロディーをマーティンが譜面に起こしたのだ。

そして、マーティンは、ピッコロトランペット奏者の友人がいるから連絡をして来て貰おうと提案し、すぐに取り掛かることが出来た。

現れたのは、デヴィッド・メイスンという名の知れた奏者だったが、素晴らしい演奏をした。この曲が世に出ると、彼は一躍、名奏者として名を馳せることとなった。

 

更にポールは、ピアノにも拘り、数台のいろんな音色のピアノをオーバーダビングしている。

中には、アンプを通して、トレモロまでかけているものもあったようだ。それらが3~4台分、完成版の音源からは聞こえるのである。

 

ベースは得意の4ビートで、1番効果のあるクリシェを入れてくる。

リンゴのDrは、スネアにコンプレッサーがかかっていて、タイトなサウンドでこの曲の抜けた明るさを際立たせている。

もちろん、効果的に部分的に入れるコーラスアレンジも心憎い。

 

キーはBメジャーであるが、Aメロの途中でBmやE6、G#m7-5、GM7も入れるなど変化に富んでいるのだが、何といっても、この曲をただの明るい能天気な曲にしていないのが、“転調の効果”である。

まず、4小節目で突如Bm7が現れ、同主調のマイナーキーに転調する。

そして、サビ前で1音下げのAの転調になる絶妙さと、また元に戻る絶妙さには、何も言うことはないくらい“音楽の妙”を見せ付けられる。

更に、キーBからキーAへの流れをさらに2回繰り返す。

最後はサビで締める展開なので、ではキーはまたAに下がるかと思いきや、何とBのキーのままのサビである。曲中のサビはキーが全部Aだが、最後だけ1音上げになるのである。

しかも、メロディが余りに自然な流れなので、余程、音楽に精通している人でもない限り、転調に気が付かない程に自然である。これが本物の転調というものだろう。

 

メロディやアレンジだけでも完璧な曲なのに、音楽的にも非常に高度な、非の打ちどころのない楽曲なのである、Penny Laneは。

 

余談ですが、良く考えてみても分かるように、“Penny Lane”と“Strawberry Fields Forever”の余りに強力なA面B面(両A面)の2曲をアルバムに収録しなくとも、Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Bandという歴史的名盤を作れてしまうところが、BEATLESの圧倒的な凄さなのである。

 

 

 

 

 

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