トリジローのTHE BEATLES全曲解説 & My Best Ranking -2ページ目

トリジローのTHE BEATLES全曲解説 & My Best Ranking

THE BEATLESファン歴は、約半世紀にて、また、研究し続けて、早40年の、トリジローと申します。

まだ、誰も成し得ていない、全213曲+のランキングと解説を、同時に、そして独自に掲載していきます。

これぞ、究極のTHE BEATLES解説にも挑みます。

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★9位

【I Am The Walrus】

<Single & MAGICAL MYSTERY TOUR>1967.11/27=4:34=

 

レノンワールドは、音のファンタジーである!

 

間違いなく世界中でジョン・レノンという人間にしか絶対に書くことが出来ない曲であり、とてつもなく個性的であり前衛的であり完成度が高い曲であり、狂気とシニカルさが同居した名曲中の名曲。

 

ジョン自身も100年後も通用するサウンドと自らが言ったが、すでに半世紀以上の月日が経ったが、まったくもって色褪せていない。200年後も通用するサウンドと楽曲だと思う。

 

メロディ、サウンド、歌詞に至る全編に行き渡ったナンセンスさは、非常に薄暗く退廃的な倦怠感に満ちている。

圧巻なのは突然変な効果音が挿入されてから曲全体が浮かび上がってミドルエイトへ向かう展開。ボーカルの効果はきつくなり、ストリングスがより前面に出てきて(しかしなんて退廃的なストリングスだろう)、そしてエンディングで次第に壊れていく。無意味な効果音が飛び交い、変なコーラスや、ラジオから流れる『リア王』が混沌を作り出していく。

圧倒的な混乱具合が陰惨さに繋がっている。そういう点で僕はこの曲とM8が対極的なものに感じる。

 

コード進行も異様である。

まあ、一応、音楽に絶対的な理論がある訳ではないので、ハチャメチャということではない。ただ、進行がジョンの独特な感性のみで作られているのだ。

イントロからして謎進行ですね。キーは一応「B」であると思われますが、すでに歌に入る前に「A」に転調してからの進行です。で、そのままAメロのキーが「A」なので、そのまま進行する。

(イントロのコード進行は、B→/B→A→G/F→E→E7→D→D7である)

Aメロ~サビも循環的なコード進行とは程遠いながらも、まだ音楽的ですが、問題はエンディングですね。

もはや無調性と捉えるべきという進行で。

 

特筆すべきは、ジョージ・マーティンが考え譜面を書いたバイオリンとチェロとホルンの絶妙なアレンジだろう。それらがこの曲のアレンジの要であると言って良いだろう。

 

フィルターがかった感じのようなジョンのVoだが、これは、またまたジョンがジェフ・エメリックに“月から聞こえてくるような声が欲しい”という無理難題を言って作った声である。

至るところに入るコーラスらしくないコーラスもこの曲を特徴づけている。エンディングの合唱団風の意味のないコーラスに至るまで、とても普通では考えもつかないフレーズを散りばめている。

 

演奏面では、やはりジョンが大活躍で、エレピとメロトロンまで弾いている。

曲が曲だけに、リズム隊はタイトにプレイしている。ポールも要所で速いフレーズが出てくるが基本は8ビートである。

プレイに対して悩んでいたリンゴに、ポールはベースを弾くのをやめてリンゴの側でタンバリンを叩いてリズムイメージを伝えた。これに励まされたリンゴは良いプレイをこの曲では聴かせている。リンゴは後々までこのポールのこの時のさり気ない励ましをBEATLES時代の1番の励ましで嬉しかったと回顧している。

 

歌詞についてだが、観念的な歌詞はジョン曰く、

“歌詞の1行目はある週末にアシッドでトリップしているときに書いた。2行目はその次の週末のアシッドトリップで、そしてヨーコに出会って全部埋まった。Walrus(セイウチ)は『セイウチと大工』からきている。『不思議の国のアリス』のね”と語っている。

しかし、それにしても無意味で本当にナンセンスな歌詞という意味では、BEATLESで1番だろう。しかし、文学的でもある。

あと、エロティックで危ない表現もあり、ジョージ・マーティンはこの歌詞を嫌っていたらしい。少女の下着を下ろせや、その少女を“Boy”と表現したり…この歌詞の世界観は異常というか…本当に意味不明である。

それを読んで不思議がってる我々を笑っているジョンもいるような気がするが…まあ、すべてはドラッグトリップと、ジョンの持ってる陰湿な部分をさらけ出してるところが交差しているのだろう。

個人的には、「Yellow matter custard dripping from a dead dog's eye (黄色い膿みたいなカスタード、死んだ犬の目から滴り落ちる)」がいつもヤバいなあと思っている。

ちなみに、ポールは、「“Sitting on a cornflake”なんて、かなり混乱した状態の歌詞だよね」と後に語っている。

 

エンディングがサイケの最たるもので、わざわざプロのコーラス隊を呼んで奇声を上げさせたり、ラジオで流れてきた「リア王」のセリフを取り込んだりと、これでもかという怒濤のエンディング。

特筆なのは、歌のリズムです。この部分は何と宮城県民謡である「斎太郎節(さいたらぶし)」をモチーフにしているのです。確かに「エンヤートット」というリズムなのが分かります。

ジョンはこの民謡と、1966年の日本公演の来日時に聴いたのです。

メンバー4人の中でも、特に日本文化への関心が高かったジョンは、ホテルで民謡のレコードを聴き込んでいたのだそうで、その中でもお気に入りだったのが、この「斎太郎節」だったのです。

 

余談だが、歌詞に出てくる「Egg Man」は、不思議な国のアリスにも登場するが、実はアニマルズのエリック・バードンが「エッグ」と呼ばれていたのだ。ジョンも参加した乱交パーティで、セックス中に女性の体の上で卵を割ることが性癖だったエリックを見ていたジョンが“行け!やれ!エッグマン”と叫んでいたという話が伝わっている。この頃のジョンは、生活も乱れ、相当にイッてしまっていたのだろうね。じゃなきゃ、こんな異端な名曲は生まれない。

 

録音もミックスも複雑な経路を辿ったために、この曲は公式音源で、モノで2種類、ステレオで6種類のVer.もあるのである。

 

 

 

 

 

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★10位

【Drive My Car】

<RUBBER SOUL>1965.12/3=2:27=

 

噛めば噛むほどに味があり、100万回聴いてもすべて全部が凄い曲と実感させてくれるポールの大傑作曲である。

 

何処が全部凄いのかというのは、順に追って解説していきたいが、何はともあれ、凄い以前に楽曲自体が名曲である。そして、死ぬほどカッコいい!

そして、隠し味ではなく、正々堂々と初めてソウルテイストを前面に出した黒っぽい曲で、しかも、白人ロックの中に完全に落とし込んでいる最初のオリジナル曲でもあるからだ。

(1965年のローリング・ストーンズではまだまだオリジナル曲では作れていない)

アルバム”Rubber Soul”はBEATLESが初めて見せた「クールな側面」だと思っているが、その開始を告げるのが1曲目”Drive My Car”なのだ。

正にファンキーな「黒ポール」を堪能することが出来ます。

 

まず、1番凄い部分から解説しよう。

ハーモニーの圧倒的な凄さである。ハイレベルで高度なハーモニーが多い彼等の中でも、恐らくBEATLES史上1番難解で、音を取るのが大変なハーモニーであるのだ。

ポールとジョンのどちらが主旋律を歌っているのか分からない(意識的にそうした)というのも斬新だし、つまり、どちらかがハーモニーになる訳だが、どちらが主旋律でも、ハーモニー側は3度5度というような通常なコード構成にあるキーは使わずに、テンションキーでのコーラスになる。

この曲は、歌に関しては、Aメロとサビしかないが、Aメロの部分は、D7とG7の繰り返しだけであるが(最後部はA7が入るが)、ジョンは「C」→「B」で歌い、ポールはずっと「G」で歌う。つまりジョンは「7th」で、ポールはSus4を歌っていて、コードで言えば「D7sus4」のハーモニーということになる。ここまではまだ良い。すでに難しいが、まだ序の口だ。

で、その後の「A7」の部分でジョージも加わり、いきなり「F」でハモる。ジョンは「C」、ポールは「G」でハモるのだが、ポール以外はコードの「A7」の構成音を歌っていないのだ!

ポールも、その「A7」の「7th」の部分のハーモニー(Aの1音下のGで歌う)なので、簡単って訳ではない。度肝を抜くテンション・ノートのオンパレードである。

音楽の知識のない人には分かりにくいかも知れないが、良くこんな複雑なハーモニーが出来るものだと感心するばかりだ。

ジャズでも、こんな高度なハーモニーは使わないので、ロック関係者は言うに及ばず、当時、ジャズ関係者にも驚きと衝撃を与えたハーモニーなのである。

ハーモニーの話はまだ長くなるので、後に歌詞の部分で書き足します。

 

ちょっと専門的な難しい話になったので、ライトな話題(楽器と歌詞)にしよう。

演奏部は、ポールの独壇場で、間奏のギターもポールで実にソウルフルな黒人R&Bを意識したプレイが見事だし、使い始めたばかりのリッケンバッカーのベースも低音が効いたソリッドなプレイは、オーティス・レディングの“Respect”でのドナルド・ダック・ダンからヒントを得たものだ。

そうそう、BEATLESのスライドギターといえばジョージの代名詞だけど、最初に披露したのは実はこの曲のポールなのです。ポールは何でも先駆者だよ。

加えて、ピアノもポールだ。この曲の肝ともいえるゾクゾクするようなピアノのオブリガード的に入るフレーズが最強だ!

そして、Vo。主旋律はジョンとポールの2人だが、やはりAメロはポールがメインで、喉を締めたような黒人風に歌うのも渋いし、間奏後の2コーラス目での言葉数が多い更に黒人風VoがポールのベストVoの1つと言って良いほど最高である。

 

イントロはジョージの弾くストラトキャスターのギターで始まるのだが、何と裏打ちから入ってくる。なので、普通にカウントしてると歌い出しが合わなくなる。さり気なく凝っているイントロも渋い。

リンゴのDrは、イントロの素早いフィルインが素晴らしいし、カウベルとタンバリンの効果がこの曲の雰囲気を作っている。

 

歌詞とタイトルについてだが、“Drive My Car”とは、古いブルースの隠語で「性的関係を持つ」という意味で、ズバリ、隠れた意味でSEXのことを歌っているのです。

ポールは当初、メロディはすぐに出来たものの、今でも歌詞の難攻した時の例え話で今でもするくらい、歌詞は難航した。最初の歌詞は「You can buy me golden rings」となっていて、ポール自身も「歌詞は悲惨だというのは僕には分かっていた」といい、事実ジョンからも、その歌詞はくだらないと言われ、二人で相談したが、なかなか良い案が浮かばなかった。突然ジョンが「You can drive my car」にようと思い付き、これから上記のような大人の歌に変化していったのである。

ちなみに、“Diamond Rings”という言葉は、はこれまでに2回“Can't Buy Me Love”と“I Feel Fine”ですでに使われていたのでした。使わなくて良かったですわ。ジョンに感謝!

 

黒人風ではあるにしても、サビのキメの部分である“Beep beep'm beep beep yeah”は余りにも印象的なフレーズだが、良くまあ考え付いたものだと、いつもながら感心するし、もうここでノッてしまうしかないよね。

で、皆で歌えるこんな楽しいフレーズだけど、ハーモニーが実はここも高度なのだ。コードは省略的に書けば「D7→G7→A7」だが、ハモーニーはそれぞれ「G」「A」「C」とまあ、複雑で音が取りにくい。

正に、ビートルズマジック!

 

BEATLESは、RUBBER SOULで音楽的な高みに達し、アーチストへと変貌するが、その1曲である“Drive My Car”がどれだけ重要な意味を持っていたか、そして、その変化した作風を今でも充分には理解出来るが、リアルタイムで体験した人は衝撃の何物でもなかっただろう。そういう曲なのである、この曲は。

ここから、中期BEATLESは始まった。

 

 

 

 

 

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★11位

【Tomorrow Never Knows】

<REVOLVER>1966.8/5=2:57=

 

1966年、前衛を通り越したサイケデリックで、アヴァンギャルドで、衝撃的な曲が誕生した、それがこの“Tomorrow Never Knows”だった。

 

そう、余りにも早過ぎた、当時の人の度肝を抜いた最高の実験的トリップソング。すべての音楽の常識を破って、覆してしまった歴史的な楽曲である。

しかも、こういう楽曲での自己満足の意味不明の音楽にはなっておらず、圧倒的に名曲なのがBEATLESたる所以で、言葉も出ない。

 

たった1つのコードと1つのリズムだけで曲を織りなす実験的な構成で、そこに逆回転のギターや他の楽器、果ては動物の鳴き声などの駆使して、それを録音テープの切り貼りによって、最早それが元々何の楽器で鳴らされた音なのかすら分からない“音”の洪水に、身を晒されていくのです。

そもそも、あれだけコードの魔術を操ってきた彼等が、逆説的に、たった1つのコード(ずっとCのまま。1ヶ所だけBb/Cになる。)しか使わないという常識破り自体が驚くべきことだが、その上にメロディを乗せるという、まったくもってソングライティングの定義に当てはまらない斬新な手法など、1966年という時代を考えれば驚嘆するしかないのだ。この次点でもう彼等はベートーベンですら超えてしまっていたのかも知れない。

 

その後の中~後期のBEATLEサウンド作りの要となっていくエンジニアのジェフ・エメリックは、正式なチーフエンジニアに昇格して、最初にレコーディングしたのがこの曲である。

つまり、まだ若くエンジニアとしてのキャリアも浅かった若干20才のエメリックは、それまでのレコーディングの常識に捕らわれることなく、BEATLESの常識破りの要求に次々と答えることが出来たのだと思う。

エメリックもまた飛び抜けた豊かな才能の持ち主だったからこそ、BEATLESと同等のアイデアを思い付き、すべての難題をクリアしていったのだ。つくづく、ここから参加してくれたことに感謝したいのだ。

 

自分の声が嫌いなジョンがジョージ・マーティンとエメリックに、“ダライ・ラマが山の頂上から歌っているようなサウンドにして欲しいそれでいて、歌詞がしっかりと聞こえるようにね”という、ジョンらしい抽象的な表現で早速、エメリックに難題を突き付けるが、まさかのレズリースピーカーを使ってサウンドを作り出し、それも見事にクリア。聴いての通りだ。鳥肌モノのジョンのVoだ。

そして、エメリックの最大の功績の1つが、今では当たり前に常識になっていることだが、ドラムのバスドラのヘッド(表皮)を外し、毛布や衣類などを入れて、マイクを仕込んだことだ。そう、マイクを近付けて音を録っている初めてのケースだ。

何だそんなの常識じゃん、と思われている方に声を大にして言いたいが、これを思い付き1番最初にやったのがジェフ・エメリックなのだ。しかも、この曲でね。

 

彼等は、エンジニアのジェフ・エメリックと共に、どんどん音楽の常識を崩し、革命を起こしたのだ。

 

特に印象的なカモメの鳴き声のような声は、ノイズをかけたギターの音を逆回転させて作った音だ。作って来たのはポール。ポールは、このようなテープループをたくさん作ってスタジオに持ち込んだのだ。ポールのこの曲での構成は大きい。

 

そして、演奏で素晴らしいのはリンゴだ!

当然、それまで通りの単純なドラムのパターンでは、この前衛的な楽曲のイメージに合致しない。リンゴは見事なまでにこの楽曲に相応しいビートを演奏している。

当初のテイクではもっと控えめだったリンゴのドラム(曲自体も全然違っていますが)。はこのパターンを思い付き、叩いたリンゴのセンスは凄い。凄いドラマーなのです、リンゴは。

楽器というのは、テクニックの披露ではありません。曲をどう活かすかがすべてです。2022年の今でも分かっていない人が多いし、ミュージシャンやドラマー自体ですら分かっていない人もいる。

 

書き遅れましたが、この曲はジョンの作品でリードVoもジョン。

ジョン“初めて書いたサイケデリックソングで、歌詞は僕が持っていた「チベットの死者の書」から引用した。タイトルにはリンゴが間違って口にした言葉を使っているのさ。哲学的で重苦しい歌詞を軽くするためにね”と語っている。

ポールも回想する。“あれはまさしくLSDの曲さ。恐らくはあの曲だけがね”と言っている。

そういう曲も、当初のタイトルは「Mark 1」→「The Void」であった。上記の通り、リンゴの一言でタイトルが変わったのだ。

 

余談だが、ジョンの最初のサウンドイメージは、バックで何千人もの仏僧がお経を唱えているようなものだと後に語っているのを知って驚いたが、当然それは不可能なことだったが、そのようなサウンドにならなくて良かったと言える(笑)。

 

名盤アルバム「REVOLVER」は、この曲のレコーディングから始まった。

「REVOLVER」自体も一歩進んだ革新的なアルバムだが、こんな最先端な曲からスタートしたなんて、到底、信じられないことだが、真実というのは面白い。

 

 

 

 

 

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★12位

【A Hard Day's Night】

<A HARD DAY’S NIGHT>1964.7/10=2:29=

 

衝撃的なる、古今東西、最高最強のイントロ最初の一音!!!!!

 

この一音が、4人がどういう音を出したのか、ようやく近年では概ね解明はされたが、決して完璧には解明された訳ではない。

リンゴは、スネアとバスドラの2つを叩いたであろうことは間違いなさそうだが、他の3人のギターとベースの音が問題だ。

決して1つのコードや単音を弾いていないので、不協和音的な響きであるが、余りに自然なので考え尽くされていると言われてきた。

実際のコードには論争があり、過去には公になっているだけで14のコードが、それぞれの主張で挙げられてきた。

その中で、1990年ごろまでは「G7sus4説」が有力であった。「D7sus4説」も根強かったが、ジョージが2001年に「Fadd9」だったと明らかにしたことで一件落着かと思いきや、確かに、彼のギターはそのコードで演奏したのですが、全体の音は違っているし、ジョージ以外のメンバーの演奏したコードがまだ分からなかったのです。

そこで、分析が進み、ポールのベースは「AとD」を弾いていて、ジョージ・マーティンのピアノが「高音部(右手)がF、C、Dで、低音部(左手)がA、D」を弾いていることが分かりました。

なので、コードは、絶対これだというのはないでしょう。DのコードにはAが含まれているし、楽譜上ではどのようにでも解釈出来るからですね。オンコードでも、テンションコードでも考え方で成り立つので、譜面上はOKだからです。

 

いきなり最初の一音の話にばかりなってしまったが、楽曲について述べていこう。

とにかく、すべてが完璧な曲で、ロックソング、乾いたハードさ、メロディアスなサビ、後のハードロックの原型のような間奏、アルペジオのエンディング…と非の打ち所がない。

初期の彼等の代表曲“Help!”“She Loves You”“I Want To Hold Your Hand(抱きしめたい)”などと比べても一段も二段もグレードが高いと個人的には思っている。

 

歌メロは作者であるジョンが歌っているが、曲構成はAメロ→Bメロ→サビだが、サビの部分だけポールが歌っている。キーが高いので、ポールに歌って貰ったとジョンは回顧している。それがBEATLESだからだとも言う。

ポールの歌うサビはマイナーコードでメロウになるが、それがポールに凄く合っている。偶然の産物だろうが、この選択も完璧である。

それにしても、このサビのメロディは、いかにもポールが書きそうなメロディアスなもので、昔はポールがこの部分を書いたと言われていたこともあるのだが、実は、全部ジョンの作ったメロディである。この辺りも面白い。

 

間奏は、当時(1964年)にしては非常に速いフレーズだが、これには秘密がある。

どうもジョージのギターの調子も良くなく、しかもまだ慣れない12弦ギターを使いこなすのと、12弦特有のチューニングの問題があった。

そこで、録音テープの速度を半分にして、ジョージは6弦ギターで弾いた。すると低音が弱い。そこで、ジョージ・マーティンがピアノで弾いてその低部分を補ったのである。そして、あのフレーズが生まれたのだ。

まあ、知らなくて良い事実なんだけれども、素晴らしいフレーズと音像であることには間違いない。

 

エンディングも、イントロのギターのコード(Fadd9)をアルペジオで弾いているのが、本当にセンスを感じさせるよね。

 

その12弦ギターの件を書くのが遅れてしまったが、かのイントロを始め、間奏以外で大活躍の12弦ギターは、BEATLESの特徴ともなっていくが、この曲で幕開けしたと言っても過言ではないだろう。もちろん、それまでも3曲(“Can't Buy Me Love”“You Can't Do That”“I Call Your Name”)で使われてはいるが、世に放ったインパクトは何といってもこの曲からだろう。

 

この曲のタイトルは、リンゴが発した言葉から決まったことは余りにも有名な話だが、リンゴは他の曲にもあるようにこういう、ちょっとした意味のあるようでないフレーズ(または間違った言い回し)を呟くのが得意?なんだと思うよね。

 

 

 

 

 

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★13位

【Across The Universe】

<LET IT BE>1970.5/8=3:46=

 

ジョンが作詞家としても作曲家としても頂点を極めた、そして遂に行くところまで行き着いた作品なのだと思う名曲中の名曲である!

 

タイトルの通り、宇宙の果ての次元まで感じさせてくれるメロディと楽曲。

静かに天に昇華するような詩的世界。

 

ジョンは言う。

“あの曲の歌詞はインスピレーションで生まれたんだ。そう与えられたんだ。Ⅰ~2ヶ所はいじった歌詞はあるけれど、僕が作り出したんじゃない。どこからか出て来たものだ”と。

ジョンにここまで言わせるのだから、完璧で、自分を超えた歌詞なくらいの出来だと自身で感じていたのだと思う。

 

東洋的な宗教観やヨーコの影響による松尾芭蕉の俳句が反映されている。

<歌詞↓↓↓↓↓>

https://lyriclist.mrshll129.com/beatles-across-the-universe/

サビの言葉とメロディによる”Nothing’s gonna change my world♬“に尽きるでしょう。これを効いて何も感じない人はいないはずだ。

そして、“ジャイ、グルゥ、デイヴァ…オーム” (♪Jai guru deva om)。

ジョンの力の抜けたVoがまた良い。メロディの循環が儚さと悟りっぽさを上手く表しているから。侘しく響いてきますね。

 

まず、イントロはジョンの弾くアコースティックギター(J-160E)で始まる。

もう1本のエレキもジョンである。つまり、ギターは全部ジョンによるものである。

ジョージはタンブーラというインド楽器を弾いている。

ベースが入っていない曲なので、ポールの弾くピアノも低音源を弾いている。しかし、ポールにしてはシンプルだ。

 

すでに1968年の“Lady Madonna“の時にシングル候補としてレコーディングを開始していて、ポールとジョージ(&素人女性2人の)コーラスを入れたVer.まで作るが、出来栄えに満足しなかったジョンはシングル発売を拒否。

再び、「ゲットバック・セッション」で取り上げられるが、リハーサル以上には進展しなかった。それはそうだろう、この企画自体がオーバーダブなしの生演奏のコンセプトだったからだ。

その時の音源が、この曲の改正版の原型となった(お陰でいくつものVer.が作られてしまう)。

だから、アレンジを詰めていないせいか、メンバーの覇気がないのか、演奏やアレンジには迷いがあるし未完成のままだった。自信作だっただけにジョンが憤りを感じたのは無理もないし、後にフィル・スペクターのアレンジと完成版を聴いて“奇跡”と言ったのも無理はないのかも知れない。

 

そう、この曲は、実は4ヴァージョンある。元のテイク(音源)は同じだが、オーバーダブとミックスが違う。

通常のフィル・スペクターがプロデュースしたアルバム「LET IT BE」Ver.、「アンソロジー」Ver.、「Naked」Ver.、「Past Masters Vol.2」Ver.、の4つである。

1番最初に発表されたのは、世界野生動物保護基金(WWF)のチャリティアルバム「No one’s gonna change our world」である。プロデュースしたのはジョージ・マーティンで、これは「Past Masters Vol.2」に収録されています。イントロとエンディングに鳥の羽ばたく音が加えられていることから、「バード・バージョン」と呼ばれています。

 

ジョンの後年の発言にこうある。

“本当に良い歌は、メロディがなくても歌詞だけでその価値を見い出せる、言葉だけで充分に成り立つものなんだ。それに該当する曲が「Across The Universe」だ”と。

天才の感覚はかくも凄いものである。

 

 

 

 

 

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★14位

【All My Loving】

<WITH THE BEATLES>1963.11/22=2:06=

 

初期のポールの1番の傑作を挙げろと言われたから、間違いなくこの曲だと言える。

メロディが完璧過ぎる一点の曇りもなく非の打ちどころのない完璧な曲とは、正にこの曲のことだろう。

個人的に思う、旋律だけで泣ける唯一の曲といったら言い過ぎだろうか?いづれにしろ、それくらいのポールの才能が一気に爆発した曲だ。

 

ポールの曲を、何だかんだで余り褒めようとしないあのジョンが”悔しいほど良い曲“と評したくらい!

 

ポールはこの曲を、ロイ・オービソンと廻ったツアーバスに乗っていたこともあって、珍しく歌詞から書き始めた曲である。発表した曲では初めて歌詞から書いた曲とポールは言っているし、その後も詞先ほぼないと思われる。

それくらい、歌詞を書いた後にごく自然にメロディが出来たのであろう。だから、まったく曲の流れに無理がないのであるのは、そのせいだ。

歌詞そのものは手紙をモチーフにしたラブソングである。“All My Love”と歌うのではなく“Loving”と歌うのが素敵だ。

 

しかも驚くのは、全米全英ヒットNo.1間違いなしのこんな傑作を敢えてシングルにしないと決めた彼等のセンスと英断は凄いなあと思う。

(セカンドアルバムWITH THE BEATLESのA面3曲目に収録)

 

この曲も、イントロなしのポールの“Close your eyes~♬”の歌から始まる。そしてVoはポールのダブルトラッキングであるが、このアルバム「WITH THE BEATLES」からBEATLESはダブルトラッキングを使うようになったのである。特に曲は、歌のキーがポールにしては低いので、厚みを付けたかったのだろう。

(ダブルトラッキングは、プロデューサーのジョージ・マーティンが考え出したもので、Voの音の厚みが出るからという理由で。マーティンはさすがだ。しかも、メンバーもとても喜び、これがスタンダードになっていく)

で、しかも、間奏後の2コーラス目の歌い出しは、ポールは3度上でハモっている。ここのセンスが良いよねぇ。

ポールのベースは、ランニングベース以前のウォーキングベースをコードから動きながら弾いていて、ノリを出している。他のメンバーは3連やシャッフルだけれども、ポールだけ4ビートなのは、じゃなきゃ歌えないよね、さすがに(^O^)/。

 

そして、ポールの書いたメロディと楽曲を数倍にもグレードを上げたのが、ジョンの弾く3連ギターだ。リッケンバッカー325である。

このテンポで、3連を完璧なリズムで弾くことは実はどれだけ大変なことか…他の曲でも感じるし、特に代表的なことで例えられるのがこの曲である。

ジョージも絶賛するように、ジョンのリズム感は本当に凄い。これは、ジョンやBEATLESファン以外の人には余り知らないことだろうけれど、何度でも声を大にしてい言いたいね。

この曲の影のMVPはジョンである。

ジョンはこの曲を書けなかったが、(きっとポールは弾けなかった)3連ギターを刻むことで、自分の名も刻んだのだ。

 

そして、それに付随するかのようなリンゴのシャッフル気味のビートが心地良い。

ジョージも3連の中抜きで“タッタタッタ”と弾いていてシャッフルになっている。ジョージは、間奏のギターもチェット・アトキンス風なソロを聴かせてくれる。

 

更に曲のエンディング、ギターやドラムのクラッシュシンバルで「ジャーン」と派手に終わるのではなく、ベースの一音で潔く終わるという部分もカッコいい。

 

実は、この曲のレコーディングした日のスケジュールは凄まじいものだった。

他の曲のレコーディングから始まって、インタビュー、TVライブ収録、そしてまたスタジオに戻りレコーディングして、何と最初の仕事から12時間後に、この曲のレコーディングが始まったのである。すでに22時を回っていた。いくら若かりし頃とはいえ、凄い音楽ドップリモードでいけたのだろうね。

 

余談ですが、「エド・サリバンショー」でのライブでは、間奏後のレコーディグではハモるポールのダブルトラッキング部は、ジョージが主旋律を歌い、ポールが上をハモる。これが実に良いのだ!

映像も音源も荒いものしか残っていないが、充分、その素晴らしさが堪能出来るので、ご一聴を♬

 

 

 

 

 

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★15位

【Nowhere Man(ひとりぼっちのあいつ)】

<RUBBER SOUL>1965.12/3=2:42=

 

コーラスの持つ奥深さをこれでもかと見せつけられたジョンの名曲中の名曲!!!!!

 

いきなりイントロなしのアカペラで始まるジョンのメインVoと共に、ポールとジョージのコーラスによる美しく透明感のある3声のコーラスが圧巻である。これでもう心を鷲掴みにされてしまう。

それは初めて聴いた半世紀近く前から変わらないのだから本当の本物だ。

 

素晴らしい重なり方をしたコーラスが響く落ち着いていて、孤独を歌った歌詞とコーラスの対比がなんとも切ない。

曲調は明るいのに、どこか空虚な感じがするのがこの時代のジョンらしくて、またRUBBER SOULというアルバムの持つ世界観になっている。

コーラスは、サビに入ると、完全にジョンのメインVoと、考え尽くされたポールとジョージのコーラスハーモニーも絶品そのもので、ラストのポールとジョージの高いパートに行くコーラスの高揚感も心を打つ。

コーラスはダブルトラッキングである。

 

コーラスの事ばかりを先走って書いてしまったが、そもそも楽曲そのもの自体がすでに完成度が高くて素晴らしいの一言なのだ。仮にコーラスがないとしても充分に名曲なのである。ただ、BEATLESは何処までも楽曲のクオリティを上げることは解散するまで怠らななかった(まあ、GET BACKセッションは別として)。

 

ジョンは、曲を書こうと何時間も粘ったが何も思い浮かばず、諦めて横になった途端に思い付いたという。

ポールの“Yesterday”と並んで好きな話だ。

 

ジョンはこの“Nowhere Man”の歌詞に自分自身を投影させていたと言われていますが、孤独に生きる人を決して蔑むことなく、さりげなく見守るその様子は社会に適合出来ずに悩む人々への応援歌のようで、歌詞の重みを感じます。

そのようなジョンの詩人としての深みも感じさせながらも、韻を踏んだり、言葉に複雑な意味を持たせていることも見逃せない。

例えばタイトルそのもののNowhere Manの “Nowhere”は、“No”と“Where”であると同時に、“Now”と“Here”という意味にもなるのである。意味はまったくの正反対になる。こういうセンスはジョンならではのものだろう。

 

さて、演奏についてだが、まず、コーラスに絡んでシンコペーション気味にジョンのJ-160 Eが入ってくる感じが何ともいえず良い。

そして、新しく入手したジョージの弾くストラトキャスターの音色が素晴らし過ぎる。この曲の要はコーラスと共に、この単音やアルペジオ気味に弾くギターのサウンドだ。実は、このサウンドはポールの提案で、トレブルを出来る限り効かせたもので、アンプの限界でも満足せず、嫌がるエンジニアのノーマン・スミス達にも意を介さず、別のフェーダーに繋いでトレブルを上げてくれといい、最終的にそれが上手くいって作り上げた音だったのだ。

更に、ジョンとジョージのユニゾンで弾く間奏のギターソロも素晴らしい。

もちろん、ソロの最後にジョージが弾くハーモニクスが最高だ!…こんな印象的なハーモニクスがそれ以前もそれ以降も聴いたことがない程だ。

 

コーラスとギターに耳が行きがちだが、ベースがまた素晴らしいのだ。

ポールのランニングベースもすでにここまで進化していて、下降したり上昇したりと、コードの動きの中で縦横無尽に動いている。

ただ、動いているだけではないと思うのは、ジョンの書いたVoメロディからのインスピレーションからひらめき、しっかりと踏まえた上でベースのメロディを構築している点だ。ここが、決定的に他のベーシストと圧倒的な才能の違いなのである。

 

余談だが、日本公演でも演奏されたこの曲は、自分達の音が取りにくい音響関連の中で、いくらコーラスの名手BEATLESでも、良くいきなり3声のコーラスで入れたなあと昔は感心していたのだが、この曲のコーラスの出だしはEのキーである。そして、この曲の前に演奏された曲がI Wanna Be Your Manなのであるが、実はこの曲もキーがEなのだ。そう、だから苦もなくコーラスから入れたことを知った時は目から鱗だった。

 

すべてが聴きどころの曲、それがこの“Nowhere Man”という曲なのだ。

 

 

 

 

 

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★16位

【Helter Skelter】

<THE BEATLES(WHITE ALBUM)>1968.11/22=4:29=

 

元祖ハードロックともいえる、ポール…いやBEATLESの楽曲の中でも最もヘヴィな曲。しかも大名曲だ!

 

美しいバラードや、ポップな曲だけがポールじゃない、時折見せる圧巻のロック魂はやはり凄い。というか、その作る楽曲の振り幅の余りの広さに開いた口が塞がらない。こんな人は古今東西、誰もいないと思う。

 

この曲のきっかけについては、もうすでに手垢が付いたように語り尽くされてはいるが、一応、書いておこう。

ある日、ポールは、THE WHOのピート・タウンゼントのインタビュー記事に、ニューシングルの“I Can See For Miles(恋のマジック・アイ)“はTHE WHOの楽曲の中でも一番騒々しくて、ダーティでまったく妥協のない曲だと書かれていたのを読んだ。先を越されたなと感じたポールだったが、しかし、実際にその曲を聴いてみると“全然どうってことはない、ごくストレートで洗練されたサウンドの曲で、ちっともラフじゃないし絶叫もしてない”とポールは思い、“そこで僕は改めて思い立ったわけさ、ようし、だったら自分達が最初にそれをやってやろうって”。

 

加えて、BEATLESにおいて真のロックはジョンが担当し、自分はソフトなバラード担当のように一部で見られているというイメージを払拭するために、そう、世界中で1番ハードでヘヴィなロックを書こうとした。それが始まりだ。

ただ、それでも当初は、アコーステック・ブルース調だったのだが、2ヶ月前に、“Revolution1”を“Revolution”にハードにしたように、いや、それ以上にヘヴィにしようと激しく変えていったのだ。

 

ただ、ハードだヘヴィだと言っても、そこはポールだ。良く聴けば分かるが、テンポはミディアムテンポだし、意外とメロディアスなのだ。コーラスワークの美しさをお忘れですかというくらい5声の重厚なコーラスで、これらも音楽的にも高い水準を維持してるという意味でも凄い。ただのハードなロックではない。

ただ、ポールのシャウトが半端ない!…“Yeseday”や“Eleanor Rigby”などを歌っている同じ人とは到底思えない程に強烈だ。

 

「Helter Skelter」とは、英国の「遊園地などで良く見かけられる塔の周りをらせん状に滑り降りる滑り台のことである。「混乱」「無秩序」「狼狽」の慣用句でもある。いづれにしろ、カオスな言葉である。

だが、歌詞全体を読めば分かるが、かなり性的な意味を含めているような内容だ。ポールは、この「滑り台」を上から真っ逆さまに下まで落ちていくことのシンボルとして使った。

「ローマ帝国みたいな、没落、終焉、衰退の意味でも。可愛いタイトルに思えたかもしれないけど、いろんな意味で不吉な含みを持たせたタイトルだったのさ」

 

メインVoの他に、間奏やエンディングのギターソロもポール。これも素晴らしい。短いフレーズながらもサウンドもプレイもハードロックの原型のようなギターだ。ギタリスト・ポールはこれで証明されたと思う。

サビの“Helter skelter”のすぐ後に、ギターとベースが8分音符のユニゾンでG音から下降するラインもオブリガードとしてサビのフレーズを効果的にしている。

曲の終わりにかけてはジョンが更に耳障りなサキソフォンとピアノを加え、ローディーのマル・エヴァンスもでたらめなトランペットを吹いて参加している。

 

ポールの凄さばかり言われるこの曲で余り言われないのだが、この曲でのジョンの弾くラウドなベースは凄いと思う(昔、知人が極悪非道ベースと言っていた)。ゴリゴリというよりもバキバキと言った感じの6弦ベースのサウンドも凄いのだが、コード弾きでもリズム感のノリに持っていかれるのだ。同じコードをローとハイで順に弾き分けているのもセンスが良いね。単調にならず常に緊張を与えてくれる。

ポールのリズム感は間違いなく完璧な人だが、ジョンのリズム感の良さは天性の凄さである。名曲“All My Loving”の3連ギターの凄さを理解していれば、そんなの100も承知となるだろうが、こういう部分にも発揮されているのだ。是非、この曲のベースにも耳を傾けて欲しい。

 

曲の終盤、フェイドアウトして終わったかと思うとまたフェイドインしてくる。しかし、このフェイドアウトの2回繰り返しは凄い。特に、フェイドインの戻り方が尋常じゃないように未だに聞こえる。当時良く、こんなことを思い付き、本当にやってしまったものだ。今ならプロデューサーやミキサーから絶対にNGが来るだろう。まあ、元は27分もあったりした曲なのでいろいろ試したのだろう。

しかも、リンゴの叩きつけるようなドラミングの後の、エンディングがリンゴの本物の絶叫で曲が終わるのだ(I got blisters on my fingers!! (指にマメが出来ちまったじゃないか!))。リンゴの指は流血していたのだ。

 

この曲にまつわる話としては、この曲に触発されたという殺人鬼チャールズ・マンソン。1969年の8月9日、ハリウッドの女優シャロン・テートが自宅で友人たちと共に殺害されるという事件が起こったのです。いわゆる「シャロン・テート事件」です。

この曲も「ピッギーズ」と同様に勝手に歌詞を曲解し、“Helter skelter”は全世界の3分の1にあたる人口を殺害することを意味している、と彼は裁判で答えたのです。そのお陰で、この忌わしい事件と切り離せない曲となってしまったのですが、もう昨今は事件そのものが風化し、切り離されていますね。現に、ポールも2010年以降はライブで良く演奏するようになりましたからね。

 

 

 

 

 

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★17位

【Hey Bulldog】

<YELLOW SUBMARINE>1969.1/17=3:09=

 

非常にソリッドで緊張感に溢れた名曲中の名曲。

メインリフが物凄くカッコいい。ギターの音がザクザクとしながらもスタイリッシュな鋭さを感じる。また、吐き捨てるようなVoも最高過ぎる。

ポールのうねるベースライン、リンゴのドラムフィル、ジョージのギターのザラついたディストーション、そして、ジョン・レノンの喉の奥だけが生み出せるヴォーカル・サウンド…4人の個性がBEATLESとなって最高の形で昇華した、これぞロックソングだと思う!

 

ジョンの作品でリードVoもジョン。

元々は、インドに行く予定で、合間が空いてしまうということで次のシングル“Lady Madonna”を録音し、そのPVを作ろうという撮影の合間の時間に作ってしまおうというポールの発案で始まった。

ジョンが書きかけの曲に、書きなぐりで歌詞を書き曲を作っていったのだが、この勢いがバンドに良い効果をもたらし、久しぶりに和気あいあいとレコーディングに臨んだそうだ。

ただ、出来上がると、出来栄えの良さにジョンは、すでに“Lady Madonna”が次のシングルに決まっているにも拘らず、”そんなの知ったことか、この曲をシングルにしよう”と言い出す。ジョンはこういう気まぐれさがあるのが玉に傷だ。さすがにポールも良い気持ちはしなかっただろう。まあ、ポールのシングル曲が多くなっていたからというのもあるかも知れないけれど。しかし、これはジョージ・マーティンの “もうLady Madonnaのジャケットの印刷が出来上がっているので無理だ”の一言であえなく却下になった。

 

BEATLESにとって本当に久々のバンド系正当派ロックンロールである。

そして、イントロからして、ピアノで始まり、各2小節づつ→ギター→ベース→Voと加わってくる。このカッコ良さには脱帽で痺れてしまいます。

何というか、この辱はそういう意味でも、後のハードロックの先駆けのような曲だと思うのですね。

 

そして、何といっても最高なのはポールの弾くベース!

このランニングベースは凄い上に、ノリが圧倒的だ。この曲のノリはベースが支配していると言っても過言ではない。

ギターのリフは恐らくポールではなくジョン自身が考えたものと推測する。シンプルだが、これがロックだ!のリフそのものだ。

そして、驚くなかれ、ピアノも、間奏のギターソロもポールである。ピアノは、PVのイメージのせいかジョンと言われ続けてきたがポールである。ジョンにこんな低音を効かせたコード弾きが出来る訳がない。ジョンは小さめに聞こえてくるオルガンを弾いているのだ。そう、オルガンといえばジョンではないか。だから、ピアノはポール(笑)。

で、リードギターもジョージか?ポールか?で言われてきたが、リフはジョージだが、ソロはポールである。あの振り切ったフレーズはポールっぽい。“Taxman”を思い出す感じだ。

 

この曲はコード進行もなかなかクールである。メロの部分の進行は、B->F#m->B->F#m->A->F#m->E->E7 となっており、F#mやAというダイアトニックでないコードがさり気なく効果的に使われている。そして特筆すべきはサビのコード進行である。サビではBm→Bm+5→Bm6→Bm7~となっており、内声がF#から半音ずつ上昇している(逆)クリシェである。サビの後半でも同様にEmから内声の半音上昇パターンが見られる。

 

エンディングでは語りかけや犬の鳴き声などが入っているが、そんなところに彼等の余裕が感じられる。

ちなみに、最初の犬の鳴き声のアドリブはポールで、ポールがジョンを笑わせようと“ワンワン”っとお遊びで吠えたのだ。それで、それまで何気に決めていた曲のタイトルが“Bullfrog(ウシガエル)”から“Hey Bulldog”になったという嘘みたいな本当の話。

音源にはジョンとポールの2人の犬の声が聴ける。

 

余談だが、ヨーコがBEATLESのレコーディング・セッションに立ち寄った初めての曲である。

ジョンは「ヨーコがレコーディングを初めて見に来たのに、初めてがこんなシンプルでバカみたいな曲をレコーディングしているのが、きまりが悪くて恥ずかしかった」と語っている。ジョンの言いたいことはとても良く分かる。その1年前まで複雑でサイケデリックでアートな作品群を作っていたからという意味でね。

 

エンジニアのジェフ・エメリックは回想する。

“これが4人が力を合わせて全力でレコーディングした最後の曲です”と。

だからこそ、シンプルなロックながら演奏力と一体感は半端ないのだろう。ジョンは、サウンドは良いけれど、何の意味もないレコードだと言うけれど、充分、それだけで、ソリッドなロックの名曲になっていたのだ。

 

 

 

 

 

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★18位

【I Saw Her Standing There】

<PLEASE PLEASE ME>1963.3/22=2:52=

 

アルバムでは、この曲からBEATLESは始まった!

言わずと知れたデビューアルバム「Please Please Me」の1曲目である!

 

そして、ポール作曲の初期の傑作ロックンロールでもある。

若き日の溢れんばかりのパワーとエネルギーが詰まっている。

しかも、何と、レコーディングは朝1発目なのだ。何という勢いと元気さなのだと感心してしまう。

この曲のこの疾走感を含めて、これから凄いことが起こるんだなという予感を充分にはらんでいるようで、いつ聴いても嬉しくなってしまう。

 

ポールの勢いの良いカウント「1-2-3-4!!!」で始まるイントロは最高以外の何物でもない。

それは伝説の始まりを予感させますが、実は、ネタばらしで恐縮だが、テイクの合成なのである。レコーディングでの楽曲自体はテイク12を使用した(テイク1にハンドクラップを加え、12テイクとなった)が、冒頭のポールのカウントは、第9テイクから後から繋げたものなのだ。ライブ感と、アルバムの1曲目のインパクトを出したかったジョージ・マーティンのアイデアだったのです。それでも、まったく違和感のない繋ぎ。

 

激しくロマンティックな恋が描かれた若き青春ロックな内容な歌詞でありつつ、そう思いきや、隠れた意味には違うニュアンスも含まれていますね。

例えば、出だしの歌詞“Well, she was just 17, You know what I mean”の後半部の“You know what I mean”は、アレがもう出来るのさ、という意味がある。ここの部分はジョンのアドヴァイスによるものだ。さすが、ジョン、ポールより2歳年上だけはある(笑)。

 

演奏は勢いがあるが、シンプルで、まだ粗削りでもある。ただ、ライブの経験が豊富でライブバンドだった彼等はノリとタイトさはすでに完璧である。

コード進行などは、Eメジャー(E7)のシンプルなものだが、あのキメのフレーズ“Oh~!”の部分が、何と既成音から外れた「C6」なのである。早くも後の彼等(特にポール)のお得意芸の6thが早くも登場しているのだ、いや、恐らく1番最初の6thコード使用曲でしょう。しかも、EのキーでC6だからね。凄いですよ。

そして、エンディングも「E9」で終わるのだが、それまでロックンロールの曲で最期を9thで締めたバンドなどいなかった。すでに“初”が登場してくる。これ作ったのポール16才の時だから恐れ入ります。

 

演奏もやはりポールのベースがグイグイと引っ張っている。

ポール曰く、チャック・ベリーの"I'm Talking About You"からベースラインを拝借したと語っている。

 

アメリカでは、1963年12月にキャピトルレコードから発売された第1弾シングル“I Want To Hold Your Hand(抱きしめたい)”のB面に収録され、1964年2月8日付のビルボードのチャートで最高位14位を記録した。

 

余談だが、BEATLES解散後の1974年のエルトン・ジョンのMSGでのライブにゲスト出演したジョンは、

“僕を捨てたフィアンセ、ポールの曲をやります”と言って、何と“I Saw Her Standing There”を歌ったのだ。

この時期、ジョンはヨーコとは別居中で、ヨーコが指名した中国人女性メイ・パン(ジョンとヨーコの秘書だった)と暮らしていたが、酒浸りの日々だった。

その、ジョンのポールへの屈折した愛情を感じてしまいます。

その後、数年に渡って仲違いしていたジョンとポールは関係を修復し、ヨーコともよりを戻すことになります(一説には、ポールが仲を取り持ったとも言われています)。

 

最後に、この曲が何故に凄いのか…そして、ロックンロールの歴史を変えてしまった曲だと思うのかは、こうだ。

それまでのエルヴィスやチャック・ベリー、リトル・チャードなどのロックンロール(または、ポール・アンかのようなポップス系にしても)は、Aメロにキメのフレーズがあるだけだった。そこにサビのメロを入れたことだ。しかも、このサビメロがBEATLESの場合、死ぬほど高度で(繋ぎも完璧)素晴らしい訳なのだから、そこが決定的に違うのだ。ただのロックンロールなのだけど、グレードの高い音楽的な要素が多分に加わったのだ。正に、そこが革命だったのだ。

もっと言えば、それがより可能だったのは、ジョンとポールという稀代のソングライターチームがいたからこそ、2つのメロディの合わせ技も高度になっていったことも大きいのだ。

 

 

 

 

 

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