毎月平均10冊ほどの献本をいただきますが、今回は皆さんにお勧めしたい1冊をご紹介します。タイトルは「20年増収増益を続ける店の秘密」です。

タイトルだけを見るとお店を繁盛させるためのマーケティング本のように思えますが、読んでみるとその奥の深さに久々にホームラン本と感じ、推薦したくなりました。本書はハッキリ言って飲食店経営者のみならず、あらゆる商売に相通じる原理原則とぶれない著者が自ら体験した成功哲学がちりばめられた懇親の一冊です。

内容に入る前にまずは著者の人となりをご紹介します。

著者の 河邉 幸夫 さんは中卒の 元幕内力士。前頭上位まで行くも怪我で幕下まで転落。その後、引退を余儀なくされる。小錦 や 曙 など200キロ超級と相対し、体を相当酷使してしまったそうです。その後、親方との確執で引退相撲をさせてもらえず、ほとんど蓄えがなく引退。仕方がなく独学の見よう見まねで飲食業界に入りました。

飲食業界とは一年で80%の店が辞めていくとても厳しい業界。そんな中で、どうやって素人が20年も黒字を出し続ける行列店を作れたのか?一言でいうと、それは著者の異常なまでの探求心で、その「学びに対する意欲」は、元力士とはとても思えない。格闘技の世界しか知らなかったのに活字中毒だという変人だ。

彼のノウハウは活字からの学びとともに徹底した現場主義から培われている。そして独特の 人間力 と 交渉力 で相手から良い条件を引っ張りだす才能に長けている。銀座・広尾・赤坂などどの店も駅近の一等地にある。銀座などは地下鉄の真上にある夜景を見下ろせる高級なビルだから、さぞ家賃は高いだろうと思う。しかしそこも独自の交渉ノウハウで周辺よりも安く借りている。

メニューもこだわっており、ちゃんこ屋なのだが、じつは絶品なのが塩モツ。僕はこれを食べに行くほどこの一品に惚れてる。調味料一つとってもこだわりがあり、味に関しては申し分ない。

またマーケティングセンスも卓越したものがある。お客のニーズは何なのか?多くの店はここが分かっていない。じつはお店の名前なんてどうでもいいんです。お客が知りたい情報は、どういう「こだわり」の料理を提供し、評判、そして値段である。店先には大きな看板で「年間10万人が食べにくる 塩ちゃんこ の店」「一人前2480円で一人前から注文可能」と書いてある。とても分かりやすいですよね。

最後に「飲食をやるなら自分が好きな料理の店をやれ!」と言っている。好きを仕事にせよということだ。ご自身が、かき氷もやったり、クレープ屋もやった。しかし結局、ちゃんこが一番うまくいったのは、それが好きだったから。もちろんそうした失敗も数多くし、そこからどん欲に学んでいったのはいうまでもない。

本書は全部で7章立てだが、もし時間がなければ、最初の3章だけでも読んでほしい。残りは読まなくても十分元が取れる。飲食店経営者はもちろんのこと、コンサルタントや士業などあらゆる職種にも応用が効くアイディアが満載なのです。さらには人心掌握術や交渉術など購買心理以外のコンテンツも盛りだくさん。そういう意味ではセールス本というよりも成功哲学本に近い感じがする。

現在彼は飲食業だけだはなく、あらゆるリピートが欲しい業種への顧客の見える化コンサルタントとしても活躍中。多くの元スポーツ選手や芸能人が引退後に店舗を経営するが、大半はうまくいかない。そんな中、なぜ彼の店は行列を作り続けれるのか?本書にはその躍進の秘密(しかも再現性のあるもの)が、余すことなく語られています。興味のある方は読んでみてください。