イチローが日米通算 4,257安打でメジャー最多安打記録を達成しました。アメリカでは公式な記録としては認められない(*がつく参考記録)でしょうが、これは立派な大記録といえるでしょう。今、米国ではこの記録について話題になっています。特に興味深く見ていたのが、記者会見でのインタビュー。大リーグ生活16年で我々が気が付かないところで色々と苦労があったんだなぁと感じさせられました。

6年目あたりにチームメイトから冷たくされたことをちらっと語っていましたが、あれだけの成績を残しながらも人種差別に悩んでいたことが推測できました。知らない土地で言葉も通じない中、孤軍奮闘していたことが読み取れます。

新記録に関しては相変わらずクールだったが、『いつかローズの安打記録をアメリカで抜く選手が出てきてほしいし、それが(元ヤンキース主将の)ジーターのような人格者であることが理想』といっていたのが興味深かった。分かる人には分かるが、これはかなり皮肉った表現であった。



ローズは野球賭博への関与で大リーグから永久追放となっている。引退して20年以上たつが、未だ殿堂入りしていない。ジョニー・ベンチら元チームメイトだった連中もローズは殿堂入りに相応しくないと明言している。野球ファンとしては非常に残念だが、ローズはイチローのおかげでまた一面で扱われることになったのを喜んでいた。その一方で記録を抜かれたとは思っていない。日米野球の違いを持ち出し、自分が相変わらず大リーグ記録保持者だと言い張っている。

日米通算記録に批判的なローズの気持ちも分からないわけではない。日本のプロ野球とアメリカの大リーグでは、差が縮小したとはいえまだ差はあるのは事実。しかしだからといってイチローの記録が色あせるかといえば、そんなことはまったくない。メジャー通算も 2,980安打ですから70%は大リーグでの安打数。つまりほとんどのヒットは大リーグで打っているんです。仮にイチローが高卒で大リーグでプレーしていたら、試合数も多いので今頃5千本近く打っていたと推測できます。

抜いた相手が<悪役>ローズであったことは、イチローにとって幸運であったといえよう。これが 球聖 タイ・カッブ の記録を破るとしたら相当なプレッシャーだっただろう。過去にも ベイブ・ルース の年間ホームラン記録を破ろうとした ロジャー・マリス や通算ホームラン記録を破ろうとしたハンク・アーロン は、想像を絶する脅迫にあい、命を脅かされた。ホームランと安打数では注目度が違うのでそういうものが全くなかったというのも幸運だった。

イチローの表情は、今生き生きとしています。それは素晴らしいチームメイトに恵まれたことが原因でしょう。皆、親子ほど違うチームメイトのレジェンドに対してレスペクトの気持ちを持っているのでしょう。それがマリナーズ時代にはなかった温かい雰囲気が、今のイチローの幸せな表情ににじみ出ている。是非、マイアミでキャリアを全うし、もう200本くらいヒットを打ってほしい。目標はジョージ・ブレットの3,154本・・・これを破れば歴代15位となる。イチローなら怪我さえしなければ、十分やれるだろう。試合さえ出してもらえれば、2年でクリアできる。あらためて偉大な記録に敬意を表したい。