今週の土曜、日曜とアメリカの映画2本ハシゴしました。思うところ多く映画の話、ご紹介します。
先ず一本目は
「ペンタゴン ペーパーズ」
1971年、先ず舞台はニューヨーク・タイムズ紙で幕が上がる。
NY紙の特ダネ記者、ニール・シーハン記者がベトナム戦争に関する、政府には不都合な事実が記された最高機密文書を入手した。
ニューヨーク・タイムズ紙はその文書について報道し、時のニクソン政権は慌てる。
映画は、しかし、NY紙の話ではなく、その文書を後追いで入手して報道したワシントン・ポスト紙が舞台になっている。
映画の主役はライバル紙に特ダネを抜かれた形のワシントン・ポスト紙編集主幹、ベン・ブラッドリーと同紙の社主、キャサリン・グラハム。
文書をNY紙にリークしたのは政府も資金提供していたシンクタンクの軍事アナリスト、ダニエル・エルズバーグ。
WP紙も色んな人脈を辿って文書を入手する。
しかし、ニクソン政権はNY紙に対して記事の掲載差し止め命令を連邦裁判所に要求していた。
ニクソン政権の脅しに対しWP紙の法律顧問など周囲は文書を公開すれば、編集主幹も社主も投獄されると進言。
映画の山場はメリル・ストリープ扮する社主とトム・ハンクス扮する編集主幹が危機を承知しながらも敢えて文書公開に踏み切るギリギリの決断をするシーンだ。
NY紙だけだったらニクソン政権の脅しに負けていたかもしれないが、WP紙がエルズバーグ文書を全面的に公開したことで、メデイアが共同戦線を張り、世論も動き、最後は裁判所が6対3で「報道の自由」に軍配を上げた。
これが土曜日に見た「ペンタゴン・ペーパーズ」の粗筋だ。
時あたかも日本では「森友事件」が盛り上がっているところで、映画を見ながら
「日本の官僚の中にはエルズバーグはいないんだろうなぁ!」
と、ため息を漏らしたものだ。
「ペンタゴン・ペーパーズ」は最後に民主党の本部に不審者が侵入して逮捕された、という場面で終わる。
これはニクソン大統領を追い詰めて退陣にまで追い込んだあの有名な
「ウォーターゲート事件」
の幕開けを告げるシーンである。
そこで日曜日に見た映画
「ザ・シークレットマン」
に話は繋がるのだ。
WP紙はウォーターゲート事件では内部情報を次々と特ダネとして報道、他紙を圧倒した。
当時からその内部情報の情報源はニクソン政権内部の人物だ、とは分かっていても誰か特定出来ず
「ディープ・スロート」
と呼ばれていた。
味のある俳優、リーアム・ニーソン扮するディープ・スロートが映画の主役である。
種明かしはご法度かもしれないが、映画の主人公なので、明らかにしておくと、ニクソン政権崩壊に追い込んだ人物はなんと、
FBI副長官である。
映画にも登場するWP紙の記者、ボブ・ウッドワード氏が書いた本
「ディープ・スロート 大統領を葬った男 〜なぜFBI副長官はスパイになったのか」
こちらを読めば全ては分かるが、映画は主人公、マーク・フェルトFBI副長官の苦悩と決断を描いていて面白い。
加計学園問題では、前文科省事務次官、前川喜平氏の内部告発に近い発言があった。
安倍政権崩壊に追い込むマーク・フェルトは日本にはいないのか?
あの佐川宣寿・前国税庁長官の証人喚問風景を思い出しながら映画を見た。
2本の映画は
「真実への忠誠心」
「権力とメデイア」
のあり方を問うもので、日米の間に横たわるギャップを感じずにはいられなかった。
皆さんにも是非見てほしい映画である。