日本オリンピック委員会(IOC)が平昌冬季五輪に出場した選手の所属大学や団体の壮行会を非公開として制約をしたことに批判の声が上がっている。

毎日新聞の27日付夕刊はこの問題を一面トップで取り上げている。

この問題は一見地味な記事に見えるが、今後の東京五輪のことを考えると、大きなテーマのようだ。

毎日新聞によれば、IOCは「五輪の知的財産保護の指針
」に基づき、スポンサーでない団体は選手を支えてきた非営利団体や中小企業でも壮行会や報告会の公開を認めていない。

この件に関し毎日新聞はこう書いている。

「鈴木氏(鈴木俊一・五輪担当相)はスピードスケート女子500メートルで金メダルを獲得した小平奈緒が所属する相澤病院を例に挙げ『社員として正式に雇い、競技力向上のため努力して一緒に戦ってきた。広告塔のような形で関わっている企業と同列においていいのかどうか疑問を持っている』と述べ、改善を検討する考えを示した」

選手のインタビューの時によく見かけるが、背後に企業名がいっぱい並んだボードがある。あれはオリンピック協賛企業でスポンサー料は五輪運営費にまわっているのだろう。

あれはテレビに映って良くて、選手の所属大学、企業が壮行会や報告会を公開でやるのはダメ、というのが今のIOCの方針らしい。

鈴木大臣が言うようにあのボードの企業名はテレビに映ってもいいが相澤病院はダメと言うのはやはり納得いかないね!

27日の東京新聞夕刊は社会面トップで
「小平選手支え続けた相澤病院」

と報じている。

前にも書いたが、私はこの病院に取材に行ったことがある。

長野県では有名な病院だ。

松本市にある460床の中核病院だ。
地域医療に貢献度が高く、全国から医師が視察、見学に訪れる、そんな病院なのだ。

小平選手は長野五輪で活躍した清水宏保選手のコーチ、結城匡啓(信州大学教授)さんの指導を求めて信州大学教育学部に進学、スケート人生を送った。

しかし、信州大を卒業直前だった09年3月、所属先が決まらず競技継続が危ぶまれていた。

バンクーバー五輪まで約一年。
小平選手は卒業後も結城コーチの指導を希望して長野県内の所属先を探していたが、折しも不況下。内定取消しにもあったそうだ。

その時内定を取り消した企業は今頃 
日本社会に盛り上がる〝小平ブーム〟を
みて泣いて悔しがっているかどうかは知らない。

実は小平選手怪我で相澤病院の治療をうけたことがあった。まんざら縁がない訳ではないのだが、それだけで話がトントンと進む訳ではない。

結城コーチが親交のあった相澤病院の医師を通じて支援を依頼した。

すると、相澤孝夫理事長が

「長野の人が長野でスケートを究めたいと言うなら、応えない訳にはいかない」

採用は即断された。

ここら辺が運命の妙と言う奴だ。

相澤孝夫理事長は小平選手の平昌オリンピックでの活躍を予想していた訳ではない。
今のフィーバーぶりを思ったことなど一度もないはずだ。

だけど、運命は人間の質を選んで転がって来る。

採用が決まった後、小平選手からは病院勤務の申し出があったそうだ。

しかし、相澤孝夫理事長は

「雇ったのは、スケートをやってもらうため」

と申し出を断っている。さらに長野市内の練習場近くにマンションを確保。スケート競技に打ち込めるように配慮までしている。

ここまで書いて、ああ相澤さんは今、本当に心から嬉しいだろうな、と思う。

相澤病院の支援はこの位の半端なものではない。

毎年の支援額は約一千万円。

ソチ五輪後小平選手はスケート先進国、オランダに2年ほど留学を果たす。

この間も給料は払い続けられた。

2017年には大会を転戦し世界中に赴く小平選手に帯同し、食事などのサポートをする元五輪選手、石沢志穂さんも臨時で相澤病院が雇用している。

相澤病院のここまでのサポートがあって
小平選手の500メートル優勝があったのだ。

相澤病院が小平選手の採用を決めた時、誰も30歳を超えた選手のスケート短距離の世界一を予想出来た人はいまい。

無償の愛

それが報われる日があるんだ!

私たちが小平選手の金メダルに心からの拍手を送るのはそれを知るからだ。

相澤病院の相澤孝夫理事長には私達からのもう一枚の金メダルを贈呈したい。