ビジネスマンの卵 | 南国の日の丸レストラン

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思いのままに書いています


インドネシアの日本料理店 TORIGEN 鳥元


最近、とてもうれしいことがありました。


豪華さを誇る鳥元ジャカルタの端っこに、庶民の食べる即席ラーメン、

駄菓子、飲料水、たばこを売るぼろぼろの店があります。


本音を言うと、鳥元ジャカルタの景観を損なうので、ちょっと移動して

くれないかな、とも思っていました。


その番小屋みたいな店の留守番をしていた少年(添付写真の少年)

が、私に、「おじさん、今日は宴会の予約入っている?」と聞くのです。


田舎の小さな衣料品店の次男坊として生まれた私は、その質問の

意図を咄嗟に分かったのですが、「なぜ、そんなことを聞くの?」と

逆質問をしました。「だって、おじさんの店にたくさんの人が来ると、

うちも忙しくなり、お金がたまるもん。」 予想どおりの答えでした。

私はジーンと来ました。


私も、子供の頃、お盆祭りや大晦日の頃になると、自分の店が忙し

くなり、レジ代わりの紙の箱の中に、100円札や10円札が、どんど

んたまっていくのを見て、嬉々としたものでした。1000円札が入る

と、やったー、と思うのです。


この少年は、マーケティングなどというシチ面倒くさい言葉は知りま

せん。

ただ、実は、マーケティングの真髄を、すでに、知っているのです。


ランチェスターのマーケティング法則 (弱者の戦略) に、


"漁夫の利を得る。"


という言葉があります。


そのことを、店の周辺の小さなマーケットの現場で、彼は体得してい

るのです。


小学校しか出ていませんが、繊維の小さな機屋の親父から、インド

ネシア有数の繊維グループを作り上げた華僑の大物がいます。


私が、バンドンにくるきっかけを作った人で、繊維業界伝説の人です。

その人が私に話してくれました。 「小学校の頃、家計を助けるため、

饅頭を売っていた。ばくち場が、私の大きなマーケットの一つだった。

誰が勝っているかをよく観察して、その人に的を絞っていけば、よく

売れた。」というのです。


同氏が、一大繊維グループを作り上げた力は、子供の頃からの体験

にルーツがあるのですね。

「機を見るに敏。」というのは、天性というより、真剣勝負の体験の中

から出てくるもんなんだ、と思います。


私は、先の少年の成長を見守りたいと思っています。インドネシアの

経済の9割は、人口比率5%程度の華人(ノンプリブミ)に牛耳られて

います。


インドネシア経済は、極度のアンバランスの中に、安定が現存してい

るのです。


インドネシア固有の民族であるプリブミが、もっと頑張って、その中か

ら、ホンモノの立派なビジネスマンが、どんどん、輩出して、実力で、

華人と張り合える人が出てくればいいな、と願っています。

なかなか、そうはならない歴史と社会構造に加え、それなりの民族特

有の性格があるので、簡単ではないでしょうが、少しでも、その方向

に向かえばいいと思っています。


私は、安っぽい同情論はいやで、正義の味方のような振る舞いも、き

らいですが、この少年を見て、心底、将来、いい道先案内人に巡り会

えて、立派なビジネスマンになって欲しいと思いました。


生まれた時は、みな、一緒でしょう。子供の頃は、純真で、それなりの

夢ももっているでしょう。


あとで気になり、また、彼を見にいったら、好きな算数の足し算、掛け算

の勉強をしていました。ノートなどしゃれたものでなく、汚れた紙を使っ

て計算をしてました。


頑張れよ、インドネシアの二ノ宮金次郎 !