ギョギョシ、ギョギョシと小さい体に大きな鳴き声。葦原いっぱいに響き渡る。なぜこうも激しく鳴くのだろう。どうやら繁殖期に雄が雌を総取りしてハーレムを作る習性と関係ありそうだ。当然ながら争いに負ければ番を持てないので雄たちは縄張確保に必死。実際、2羽はこの後葦の中で組みつ解れつの激しいバトルを展開した。
やがて1羽の雄の下に3、4m措きに数羽の雌がそれぞれ巣を構える。その時も雄はギョギョシの鳴きを止めない。広い葦原はそのようなハーレムの主が方々にいて、それぞれわが世の春を謳歌して大合唱が溢れんばかり。
雌たちは今や子育ての最中。
雌はせわしく雛に餌を運び・・
給餌を済ますとまた直ぐ餌獲りに出かける。雛は順調に育っている証だ。
ヨシキリも 何事をかは 思ふらん みな月はてぬ 音をぞ鳴くなる (元歌 蜻蛉日記)
(わが世を謳歌するヨシキリにどんな悩みごとがあるのだろうか、6月も終ったと言うのに果てしなく鳴い ている)
その一方で、手持ち無沙汰の雌がいる。子育てに失敗し、雄にも疎まれているのだろう。その雌には彼方此方の雛たちの楽し気な鳴き声はどう響いただろうか。
雛を覗くファインダーの左上に何かがちらっと光った。その瞬間、人の習性でシャッターボタンの上の人差し指が自然に反応する。後でみると、巣立ったばかりの雛の目の前を勢いよく落ちて行くヨシキリが写っていた。
雛に近付いたところを、雌のフラストレーションがいずれ暴発すると見て警戒していた雄親に咎められた、それは確かだろう。だが、雌の意図は分からない。他人の雛をあやしてみたかっただけなのかも知れない。
撮影場所 千葉県・印旛沼(2019年5、6月) 撮影 S・植木













