気分が高揚してくるとアルコールを呑むペースに加速がかかる。そして記憶がなくなってしまうのが常である。気分が高揚するのは他人と呑んでいる時なのかと思い返してみるのだが、一人で呑んでいるときも興奮するときはある。作った肴があまりにも美味しかった時、観た映画や聞いた音楽のセンスが自分好みすぎた時、アルコールに旨味が増すわけではないが、ペースに加速はかかっている。インプットする物事に集中しているのだが、作業しているわけではないから口と手は空いている。では他人といるときになぜペースに加速がかかるのか、喋っているのであれば口は空いていない。聞き役なのだろうかと振り返ってみるが、どちらかといえばお喋りなほうである。振り返ってみると、他人との会話の合間に息継ぎのようにアルコールを挟んでいるから、呼吸の回数グラスを口に運んでいるのだ。どうりでペースが速いわけである。アルコール分解能力が低い私は、そうそうに潰れてしまうのである。

 

 友人と夕刻に呑みにいく約束をする。同日の昼間に映画館でイベントがあり、興味があるので参加しようと考えて昼間から街に繰り出す。問題は隙間時間の過ごし方である。自分が行く先はアルコールがある場所ばかりである。呑み屋を経由しながら時間を過ごす。待ち合わせの頃には泥酔状態である。そして会話は盛り上がり酩酊状態である。友人と会ったことは記憶しているのだが、どのような形で別れたのか全く記憶にない。そして自宅のベッドに寝ていて目が覚める。すばらしい本能であるが、記憶がないとは恐ろしいことである。出来る限り振り返らないように、何事もなかったように今日もアルコールを呑む。