今日の井上尚弥の4団体防衛戦、結果的にTKOで勝利したものの、井上にとっては苦戦だと思う。
2ラウンドに喫したダウンをはじめ、カルデナスにフックをよく合わせられていた。
試合後の井上の額の腫れと赤み、目元付近の腫れが、パンチを受けていた証拠ではなかろうか。
その一番の理由は、井上が気負いすぎて、無理して倒そうと打ち気に早ってしまったことが考えられる。
いつもの井上の場合、相手の動きをしっかり見極め、相手の打ち終わりをタイミング良く打ち抜くことで、試合を終わらせていた。
しかし、この試合の井上は、試合前のインタビューで述べていた「ラスベガスで何を求められているかは十分に承知して来ている」という発言のように、ラスベガスの観客に対し、力を見せつけての圧巻のKO勝利をいつも以上に強く意識してしまったのではないか。
倒そう、倒そうという気負ってしまったせいで、狂いが生じ、相手の動きや打ち終わりにパンチを合わせるような、いつもの井上の緻密さが欠けていたようにと思う。
力づくで倒そうとした結果、大振りが多く、カルデナスは井上のパンチを読みやすかったと思う。スウェーで避けられたり、ガードで防がれたり、井上のパンチのヒット率は悪かった。
カルデナスは井上のことを良く研究していた印象だ。井上の打ち終わりに、カルデナスは強くコンパクトなフックを幾度となく狙っていた。
井上は階級を上げてきて、フィジカルやパンチ力の優位性は、だんだん薄れつつある。だからこそ、無理して倒そうとしてほしくない。
左右前後のフットワークを使ったり、相手のパンチに合わせるようなカウンターや、捨てパンチを使いつつ、緩急をつけて一気にスピードアップして、コンビネーションを繰り出すような、戦い方をしてほしい。
繰り返しになるが、井上はいつも以上に無理して倒そうとしてしまい、大振りや空振りをすることで、隙が生まれていた。
井上らしい、攻防一体でしっかり相手の動きを見極めた、打たせずに打つようなボクシングに期待したい。