価格戦略 | 逆算戦略アカデミー

逆算戦略アカデミー

ここでは、”とらよし”が集めた情報を個展として掲載します。
掲載は随時増えていきますが、ここで掲示されている情報は
どんどん皆様に取り込んで頂いて、皆様の日々を豊かに過ごす
ための糧にして頂ければ幸いです。

価格戦略とは

 

 

一般的には、価格の高すぎる

設定は売れませんので衰退の

一途を辿る事になりますし

低すぎる設定では利益が

出ずに衰退していきます。

 

商品には当然競合(ライバル)が

存在しますので、その競合に対し

価格面でどう戦っていくかを考える

のが価格戦略の視点になります。

 

 

価格戦略は大きく分けて

6つに分類されますので

その違いを1つ1つ見てみましょう。

 

 

 

1.ペネトレーション

プライシング

(市場浸透価格戦略)

 

商品を早期に市場に浸透させる

事を目的に、価格を

「製造原価と同じ」

もしくは

「製造原価以下」

に設定する手法です。

 

これは競合を巻き込んで必然的に

「低価格戦略」

へ突き進む事になるため

この『思い切った価格設定』に

付いて来れない競合を置き去りにし

結果として早期に大きなシェアを

獲得する事を狙った戦略です。

 

しかし、この先行逃げ切りタイプの手法は

「肉を切らせて骨を断つ」に近い行為です

ので、いくつか知っておかなければ

ならない前提条件があります。

 

※もう値上げできない

・大量仕入れ・大量販売によって

原材料費の単価を劇的に

下げる事で収益に繋げる

・大量生産による製造工程の

習熟効果により、商品1個当たり

の工数(労務費)を劇的に

下げる事が収益に繋げる

(稼働率・歩留まりUP)

・工場の稼働率をフルに使う事で

商品1個当たりの間接費

(減価償却費など)を劇的に

下げ、収益に繋げる

(無駄な治工具を作らない)

 

※シェアを獲るまで赤字

・利益が出るまで、原価割れに

耐えうるだけの企業体力が必要

(赤字のままで大きなシェアを獲りに

行き、その後数量効果による

コスト削減で利益を生み出す為

削っても倒れない体力が必要)

 

※アプリなどITが有利

(料金変動が低い)

ITソフトウェアなど開発費は

それなりにかかっても、一旦ソフトが

完成してしまえばその後は

「データのコピー」で済むような

変動費率の低い商品が有効

利用者の増減に左右されず

何万人に増えようが製造原価は

大きく変わらない為

「後から有料課金を促す」といった

『フリーミアム戦略』などが典型。

 

※フリーミアム戦略

スマホアプリ等でよく見かける

「基本無料」の価格設定のこと。

ユーザーにはある程度フリー(無料)で

使用してもらい、拡張機能やストレージ

アバターなど、よりハイグレードな機能に

料金を課す戦略のこと。

 

 

 

2.スキミング

プライシング

(上澄み吸収価格戦略)

 

ペネトレーションとは反対に

最初から利益を上げる事を

目的とした価格戦略です。

 

販売当初から高価な価格を付けて

初期段階から開発費や設備投資を

回収する戦略になりますので

必然的に「高価格帯」になります。

 

この価格を適用する場合は、当然

その価格に見合った内容でないと

『信用』を落とす事に繋がりますので

必然的に中身はハイグレードな

モノである必要があります。

しかし、一般の消費者やユーザーは

そこまでハイグレードな商品を求めて

いない場合がほとんどですので

ターゲットになるのは『PLC分析』

における、イノベーター層

もしくはアーリーアダプター層までに

なるでしょう。

 

↓ PLC分析はコチラ ↓

 

 

仮に競合が低価格で参入してきた

場合は、ミドルグレードやローグレード

(いわゆる廉価版)を設けて値下げで対抗

する事で、ある程度凌げるのが特徴です。

 

 

3.プライス

カスタマイゼーション

 

利益の最大化を目的に、商品が販売

される場所や時間に応じて価格設定を

細かく変える戦略です。

 

これは販売する場所や時間帯によって

生まれる需要バランスに応じて価格を

変える事で利益を最大化する戦略で

リゾート地では高価格、地方では

リーズナブルにする事が可能になります。

ジュースの自動販売機によく見られる

リゾート価格が代表的です。

 

また、行列緩和の手法としても一役買っており

一部飲食店では、お昼時には通常価格で販売し

お客が減る昼過ぎ~夕方はリーズナブルな価格

で提供されているところもあるようです。

これは「行列」による顧客の機会損失を減らす

という役割も担っています。

 

 

4.レーザーブレード

 

最初に購入される商品を安価で提供し

その後の消耗品や保守サービスで

継続的に利益を上げる戦略です。

 

替え刃カミソリなどの「本体」は

安価で提供し、替え刃のリピート購入で

利益を確保するなどが代表例ですね。

 

この場合、消耗品に関しては十分に

利益が取れる価格設定にする事が重要です。

 

本体価格をゼロにしてしまえば

これも『フリーミアム戦略』と同じです。

しかしこちらは現物を扱うため、顧客は

本体を入手してしまった以上は多少割高でも

「専用消耗品」を買わざるを得なくなります。

 

こうしてメーカーはディスカウントされた

製品本体の価格分以上の利益を

消耗品から獲得するとともに製品本体を

いち早く市場に普及させる事で

競合を排除できる効果も期待できます。

 

 

5.サブスクリプション

 

提供する商品やサービスの

「数量」ではなく「利用期間」

に対して対価を獲得する戦略であり

カーシェアリングなどが一般的です。

 

通常、自動車の購入には数百万円の

購入費用を伴いますがカーシェアリングの

ように「他人とシェアする」事によって

『利用時間に応じた』価格設定が可能です。

 

これは「車を買えない(買わない)」生活者に

すそ野を広げる(新規獲得)と共に

「個人で所有する」より

「公共物をレンタルする」方が

絶対的な価格が下がるという

価値を提供する事で新規顧客の

ハードルを下げる効果が生まれます。

 

また、携帯・スマホの月額プランや

Amazon Prime、有料オンラインサロン

など、月額制で使い放題といった

データサービスも増えています。

 

 

6.プリペイド

 

支払いを前払いする事で

様々なメリットを享受する戦略です。

 

※「モノを提供するタイミング」と

「支払いのタイミング」を

切り離した事で、ギフトやプレゼント需要に

「自由なタイミング」といった顧客メリットが

生まれます。

 

i tunesカードやGoogle Playギフトカード

あるいはスターバックスカードなどが典型例。

 

顧客の早期囲い込みが可能で

いったんプリペイドを購入した顧客は

必然的にそれらに対応した商品や

サービスしか購入できなくなります。

これが上手く機能すれば競合商品や

サービスに対するブランドスイッチ(乗り換え)

のリスクを低減させる事が可能になります。

 

しかし、近年では過剰な割引を施した

プリペイドを販売するだけ販売して

倒産してしまうようなケースもありますので

取り扱いには注意が必要になります。

 

 

 

★価格設定について

 

基本的に商売は、コストを商品価格が

上回らなければ利益は出ません。

しかし、消費者の「心理的な相場価格」よりも

商品価格が高ければ購入には至りません。

 

この2つを上手く両立させるために

「商品に関わるコスト」と

「消費者の価格相場観」の

両方を把握する必要があります。

 

価格設定のポイントは

「これ以上では誰も買わない価格」と

「これ以下では利益が出ない価格」の

レンジ(範囲)を知る事です。

 

それを踏まえて、価格設定は

以下の4つに分類されます。

 

 

1.コスト+(プラス)設定

 

「コスト」を算出し、そのコストに

「利益」を上乗せたもの。

 

メリットとしては

「商品が売れさえすれば

一定の利益は確保できる」

というもの。しかし

「コスト」に関してはどこまでいっても

「自社都合金額」である為

その販売価格が妥当かどうかは未知数

であり”出たとこ勝負”になりがちです。

 

一番手っ取り早い価格設定方法ですが

転売や個人向けECサイト

(メルカリ・BASEなど)

には不向きであると言えるでしょう。

 

これに適しているのは、「受注生産」や

「公益性や独占性が高い」

産業であると言えます。

 

 

2.需要価格設定

 

ターゲットが

「どの程度なら支払ってくれそうか」

によって販売価格を決める手法

になります。

 

コストプラスでも出たように

「消費者が感じている相場価格」

が問題になりますが、大抵の場合

は既出商品の横にらみで算出

する事ができます。

自社商品の類似品の価格を

一番高額設定~一番低額設定

まで拾い集め、その中間価格を

割り出します。これがおおよその

適正価格の指標になります。

 

しかし、例えば今まで世の中に

出回っていない種類の全く新しい

商品となると、市場に指標がない為

独自で分析が必要になります。

そんな時は「PSM分析」

(Price Sensitivity Measurement)

で洗い出す事が可能です。

これは消費者に直接アンケートを取り

任意の価格設定に対し

・高すぎてとても手が出ないと思う

・少し高いと思う(高いと感じ始める)

・少し安いと思う(安いと感じ始める)

・安すぎて品質を疑う(疑い始める)

という質問に答えてもらうものです。

そしてアンケート結果を折れ線グラフに

プロットしていく事で「上限価格」や

「下限価格」、または「妥当価格」を

割り出すというものです。

 

 

 

3.競争志向型

価格設定

 

競合ブランドとの競争を意識した

価格設定になります。

 

一般的には競合ブランドと同じ価格か

それを下回る価格で提示します。

 

この価格設定戦略は

既にプライスリーダーが市場にいて

『競争地位別戦略』での

「フォロワー」として市場に

参入する際に有効な手法になります。

 

 

↓ 競争地位別戦略はコチラ ↓

 

 

4.心理的価格設定

 

消費者の心理的な側面を

重視した価格設定になります。

 

近年「行動経済学」の発展が著しく

発展していますが、これも

「人は必ずしも合理性だけで

価格と価値を判断しない」

という心理学を背景とした考え方です。

 

 

①プレミアム価格

 

「1個1,000円のリンゴ」と聞くと

大抵の人は

「手間暇かけて作られた

美味しいリンゴに違いない」

と思ってしまいます。

 

これには”判断のヒューリスティック”

と呼ばれる人間が本能的に持つ

思考のバイパス機能が働く事で

「高価な物」=「良質な物」として

半ば自動的に判断してしまうからです。

 

価格には「価値を得る為の対価」

のほかに

「価値を期待させる」効果もある為、強い

ブランドには「価格の好循環」が作用します。

ブランド力が強化されると

高価格帯であっても”購入したい”という

消費者が増える為に「プレミアム価格」が

成立するのです。

 

 

②段階価格

 

いわゆる商品価値(価格)を

松・竹・梅に分ける考え方です。

 

人は「松・竹・梅」の3段階に価格を

分けられると「極端の回避性」と

呼ばれる心理が働き、その中でも

一番無難な「竹」を選んでしまう

といった習性があります。

 

よって、一番売れるであろう

竹設定の価格を「標準相場」

より「少し高め設定」にする

といった心理的価格設定です。

 

また、この階段心理は最初の

価格設定以外にも応用できます。

 

松・竹・梅のようなバリエーション

設定にした場合、新作を出す時には

必ず「松」よりも上位グレードを

出します。そうする事で上記を同じ

心理が働いた時、一番売れるのは

当初の2番手「竹」から

新しく2番手になった「松」へ

シフトするのです。これは何も「松」に

手を加える必要はありません。

 

この心理は2番手(中間)である事が

トリガー(引き金)になって働きますので

品質や相場よりも「グレード」が

重要になってくるのです。

 

 

③習慣価格

 

「価格弾力性」という言葉があります。

一般的には

「価格が高い」ほど売りげ数量は落ち

「価格が安い」ほど売上げ数量は伸びる

とされており、この

「価格の高低」「売上数量」

『関係強さ』の事を指します。

 

そして「習慣価格」とは、この弾力性が

ほとんどない状態の事を指し、販売店や

ブランドによる価格の差がほぼ無い商品

に適用されています。

つまり消費者が「どこで買っても値段が同じ」

である事を知っている商品、例えば

自販機のジュースやタバコなど

価格がほぼ固定されているモノに適用され

これらは多少安く販売したとしても

販売数量に大きな変化を与えません。

よって、値下げやセール(割引)が

売上の増加に貢献できないのです。

 

このような商品を扱う場合は

「価格相場」に従うのが賢明です。

 

 

④均一価格

100円ショップなど販売店で扱う商品価格を

全て均一化してしまう手法です。

 

特に「価格のバリエーションが多い」

業界や「価格の組み合わせが複雑」な

業界では、均一価格を採用する事で

価格が明瞭になり、需要を喚起できる

可能性が上がります。

紳士服業界の「ツープライス」や

眼鏡業界の「スリープライス」などが

典型となります。

 

 

 

偏に価格設定といっても様々な

考え方の基、設定されているのですね。

これを機に是非、価格の見直しを

行ってみてはいかがでしょうか。