PLC分析 | 逆算戦略アカデミー

逆算戦略アカデミー

ここでは、”とらよし”が集めた情報を個展として掲載します。
掲載は随時増えていきますが、ここで掲示されている情報は
どんどん皆様に取り込んで頂いて、皆様の日々を豊かに過ごす
ための糧にして頂ければ幸いです。

PLC分析とは

 

PLC分析とは
”Product Life Cycle”
の頭文字を取った分析手法であり
直訳すると「製品寿命曲線」
となります。

世の中に存在する製品は
おおよそこのような曲線を
描きながら推移しています。

・Value:価格
・Time:時間
を表しており、価格も時間も
製品の種類によって単位や
大きさは様々です。
中には導入から衰退まで
1年程度で過ぎてしまう物も
ありますし、100年かかる物も
あるでしょう。
価格の単位も「万」の物もあれば
「億」の物もあります。

しかし、どんな規模感の製品
であれ、グラフの中身は
「導入期」
「成長期」
「成熟期」
「衰退期」
の4つのステージで構成
され、このような推移で
変化していきます。



自社製品をこの曲線に落とし込み
ながら、各成長ステージに見合った
マーケティング施策を取る為に
競争環境や顧客ニーズの変化などを
予測し、数年後にとるべきアクションを
想定する場合に用いる時系列プロセスを
構築する為のフレームワークです。

それでは各期間について解説
していきましょう。

 

 

 

【導入期】

 

市場発達の初期段階であり

新技術や新アイデアによって

市場が創生されるケースも多く見られます。

また、いかに商品やサービスを

市場に浸透させる事ができるかが

最初の難関となります。

 

この段階では、製品の使用方法や

既存の製品に対する優位性に

関する啓蒙活動を重視し

顧客へのコミュニケーションを

重点的に行う必要があります。

多くの商品・サービスはこの導入期で

つまづき、撤退します。

 

購入者は

「先端技術」

「最高機能」

などスペック重視の

イノベーター層(マニア層)が中心で

普及率は2.5%までであり

市場ボリュームは2.5%程度となります。

 

導入期は、4P・4C分析と

掛け合わせて戦略を練る事が可能

な時期でもあります。

 

↓ 4P・4C分析はコチラ ↓

 

 

<導入期の戦略>

 

導入期 X Product(製品)

 

導入期はブランドはもちろん

その商品カテゴリ自体に対する

知名度が低く、ニーズも少ない時期

であるため、市場を開拓し市場自体の

「認知度」も高めていく事が

求められます。

 

導入期 X Price(価格)

 

価格面ではイノベーター層に対し

「最先端技術」

「画期的な機能」

を搭載したハイスペックライン

打ち出す事が多い為、高価で

ある事が多いのが特徴です。

 

導入期 X Place(流通)

 

流通は高い流通マージンを

設定した上で、直販や専門店など

閉鎖的なチャネル戦略を採用し

スキミングプライスを採用する事で

早期に投資コストを回収するのが

基本となります。

 

※スキミングプライスについて

一部の富裕層や

イノベーター層に向けた高価格設定

コスト回収期間やターゲット層を

考慮した上で高価格帯で仕掛けます。

しかし逆に、初期にあまりにも高額に

設定しすぎると、当然買える方が限定

されすぎますので数が出回りません。

これが原因で立ち上がりの売行きが

悪くならないように配慮が必要

になります。

 

導入期 X Promotion(広告)

 

「最先端」

「これまでにない機能」

を打ち出しながらイノベーター層を

開拓する事が基本戦略となります。

 

 

Point

 

ブランドが商品カテゴリの”先駆者”

として認識されれば強固なブランドの

確立に繋がりますが、逆に中途半端に

継続した結果、普及が進まないまま

投資だけがかさんでしまい、気が付けば

大損害に陥ってしまう事は導入期の

あるあるですので注意が必要です。

しかし計画段階で

「市場導入期の難しさ」

を認識しておく事であらかじめ

「継続基準」もしくは「撤退基準」を

基にKPIを設定する事も可能に

なるはずです。

 

 

 

<成長期の戦略>

 

新製品が浸透してきた時期。

買い手は購入の仕方や製品の

使用方法に関して知恵を付け始めます。

また市場セグメントそれぞれのニーズに

きめ細かく合わせた製品が求められる

ようになり、他社との差別化を図ったり

競合製品との違いを買い手に

教育する必要が出てきます。

 

商品やサービスが成長期(前期)に移行すると

販売数量は大幅に伸びる事になりますので

徐々に流通マージンを減らしながら

「開放的チャネル戦略(一般販売)」

へ移行していくのが基本です。

 

しかし導入期⇒成長期に移行できる

商品やサービスはほんの一握りですので

「導入期を抜けて成長期に至るには」

といった内容が課題となるでしょう。

 

 

 

・成長前期

無事に導入期を脱して市場成長率が

上昇し売上高が急拡大する時期です。

この段階になると市場に成長の兆しが

明確に見えるようになる為、機動力の高い

ベンチャーが続々と新規参入してきます。

 

市場全体の13.5%のボリュームを持つ

アーリーアダプター層に普及が進み

売上数量が飛躍的に拡大する時期。

その為、設備増強やチャネル拡大の為に

多額の資金が必要な時期ですが

規模に対する経済効果や習熟効果

によってコスト単価が下がる為に

導入期のような赤字は出ず利益は

急速に拡大していく事が多いでしょう。

 

購入者は

「流行に対する感受性」が高く

「流行の先端好き」でいわゆる

ユーザーレビューを書く側の人達です。

この層はアーリーアダプター層と呼ばれ

普及率は2.5%~16%までであり

市場ボリュームは13.5%です。

 

 

・成長後期

商品やサービスが大衆層に

浸透し始めてから、成熟期までの

時期にあたります。

市場のポテンシャルは最早明確ですので

大手企業がこぞって子会社を設立しに

参入してきます。そのため百花繚乱の

状態になりやすいのが特徴です。

 

その結果、商品やサービスの差がなくなり

(正確には消費者から見えにくくなる)

価格競争やブランド競争がが激化する

時期でもあります。

商品・サービスは34%を占める大衆層へ

普及していくため、売上・利益は

伸びやすい傾向にあります。

 

次の局面である「市場成熟期」の

競争優位確立に向け

正念場となる時期でもあります。

 

購入者は「早期大衆層」とも呼ばれ

一般大衆層の先駆けとなる

アーリーマジョリティ層が中心で

普及率は16%~50%までであり

市場ボリュームは34%です。

特徴としては、アーリーアダプター層の

お勧めに対し、影響を受ける側であり

ユーザーレビューを読む側の人達です。

「新しい物好き」だが

「実用的な利用価値も必要」とし

新商品がマス大衆層へ普及する際の

媒介者である事から

ブリッジピープルとも呼ばれます。

 

 

<成熟期の戦略>

 

市場の拡大成長が終わり

業界構造は固定し少数の企業が

大部分のシェアを獲得する時期です。

シェアを獲得した企業は、市場を

「維持」又は「拡大」する為に様々な

対策を打つようになります。

この段階でシェアを大逆転するのは

一般的には難しいとされる時期です。

 

ニーズは頭打ちになり「新規顧客」より

「買い替え・買い足し」がメインとなるため

売り上げも鈍化しやすくなります。

 

また「画一的なモノより個性あるモノ」

を重視するようになり

・性能・スペックを追求したブランド

・デザインで勝負するブランド

・格安ブランド

など市場が細分化するのも特徴です。

 

購入者は「後期大衆層」とも呼ばれ

周囲の動向を伺いながら

商品やサービスが日常に定着するのを

待って、初めて購入を決める

レイトマジョリティ層が中心であり

普及率は50%~84%で

市場ボリュームは34%です。

 

特徴としては、ボリュームが大きい割に

購入基準が他人である事が多くなります。

攻略方法については

「販売実績」や「ブランドによる安心感」

「TVCMなど目に触れる機会の多さ」

「店員のススメ」など

総合力が試される時期でもあります。

 

また、リピート購入者は

「基本性能」が最早当たり前に

なってしまっている為

「デザイン」・「ブランド」・「価格」に

移りやすい傾向にもあります。

 

また、多くの企業は多様化していく

ニーズを「全方向に満たす」のか

「選択と集中で収益を高める」のかの

決断を迫られる事になります。

その際に有効なのが

『競争地位別戦略』になります。

 

そして重要になってくるのが

「成熟期」に入ったかどうかの見極め。

「絶対」ではありませんが、

「見極めポイント」のサインは

いくつか存在します。

 

・サイン1

市場での普及率が7割を超えている

普及率が7割を超えたという事は

購入者層が

イノベーター層:2.5%

アーリーアダプター層:16%

アーリーマジョリティ層:50%

を全て満たし、レイトマジョリティ層

にまで到達した事になります。

”購入モチベーションの低い”

この層まで浸透したという事は

市場が成熟期に入ったサインです。

 

・サイン2

販売単価が下落し始める

市場が成熟期に差し掛かると

流通在庫が積みあがってきます。

流通事業者は在庫処分に走り

販売単価の下落が始まります。

こうなると、価格競争が始まります。

これが市場成熟化のサインです。

 

・サイン3

デザイン性やキャラクターを売りにした

商品・サービスがプチヒットする。

キャラモノや奇抜なデザインモノが

現れたという事は、企業側は

「基本性能で差別化ができなくなった」

というサインです。さらにそれがヒット

したのであれば購入者側も

「基本性能だけ」では評価しなくなった

為に様々な付加価値を付け足し始めます。

これも市場成熟期のサインとなります。

 

・サイン4

格安商品・格安サービスがプチヒットする。

サイン3と同じく、商品やサービスの

開発競争は購入者の臨界点を超えると

「性能はそこそこで良いから安いモノ」

が求められるようになります。

市場に「格安」を謳った商品やサービスが

現れ、それがプチヒットするようであれば

それは市場成熟期のサインです。

 

・サイン5

似たような価値提供をする代替商品

ヒットする。

タブレット端末も、タブレットPCが出た事で

普及速度が鈍化したように周辺市場で

似たような提供価値を持った代替商品が

ヒットしだす事があれば

それは市場成熟期のサインです。

 

 

<衰退期の戦略>

 

この段階に入ると売り上げは低迷し

利益も激減し始めます。

新規投資がほぼ不要な事から一部の

上位企業はキャッシュを生み続ける事が

可能であるが、それ以外の企業は

撤退するかイノベーションによる新たな

価値の創造を生み出すかしか選択肢が

残されていません。

 

新規購入者は「採用遅滞層」と呼ばれ

新たな商品やサービスを

最後になってしぶしぶ受容するか

あるいは最後まで受容しない

ラガード層が中心で

普及率は84%~100%弱まで到達します。

この層はその分野に懐疑的だったり

否定的だったりする理由から

旧来品を使用し続ける傾向が

強いのが特徴です。

基本的には「拒否」の姿勢を

貫いている事が多いため

「価値観」や「信条」の話になりやすく

攻略は容易ではない為「見切る」判断も

必要になるでしょう。

 

また、リピート購入者も一定数は存在

しますが「衰退期」に入る頃には

この市場よりももっと新しく

もっと革新的な別の市場が現れ

始めますので、流行に敏感な

「イノベーター層」を始め

「アーリーアダプター層」や

「アーリーマジョリティ層」までもが

そちらへ順次流出していきます。

残っているリピーター層は

「レイトマジョリティ層」のみ

という場合も少なくありません。

 

市場衰退期には大きく分けて

「撤退」「存続」「新規市場開拓」

の3つの戦略オプションがあります。

 

1.撤退戦略

もし自社ブランドが市場で上位の

ブランドであれば「利益の確保」が

重点目標となります。

しかし残念ながら下位ブランドの場合は

利益確保が難しいため撤退を迫られる

事になるでしょう。

大きなシェアを持つブランドは

「累積経験効果」によって

低コスト構造を維持できるため

例え衰退期であっても利益が出やすい

「コスト構造」となっています。

一方でシェアが低いブランドの場合は

利益を確保できるレベルの「コスト構造」を

実現することが難しくなってきます。

 

撤退は多くの場合、苦渋の決断となるため

議論されないまま先延ばしにされる事が

珍しくありません。しかしタイミングを間違うと

大損失につながる重要な局面とも言えます。

また「撤退」は

「雇用の問題」や「既存顧客との関係」に

大きな影響を与えるため、もし

「これ以上、事業の継続は難しい」と

思ったのであれば”早い段階”で

撤退を議論し「雇用問題」や

「既存顧客との関係」に関して

ソフトランディングな道筋を

引くことが何よりも優先事項となります。

 

2.存続戦略

もし自社のブランドが大きなシェアを

維持しているのであれば

「存続戦略」は有力な戦略オプション

となります。

存続戦略とは、競合ブランドが

撤退するのを待って残存者利益の

獲得を目指す戦略の事。

競合ブランドが相次いで事業撤退した後

耐え抜いたブランドが市場を独占的に獲得し

利益を上げることを「残存者利益」と言います。

 

現代における衰退期の商品例が

「電卓」です。

電卓市場はピーク時の1970年代から

縮小が続いており、10年前に比べても

4割近く縮小しています。

パソコンの表計算ソフトなどの代替手段が

普及してきており、これ以上市場が

大きく成長する見込みはありません。

競争環境を見ても、一時期国内だけで

40社もあった電卓市場は、現在

「カシオ」・「シャープ」・「キヤノン」

「米テキサス・インスツルメンツ」

といった一握りの企業のみが

扱っているのが現状です。

そのような状況の中で、残存者利益を

得ているのが「カシオ計算機」。

電卓市場は明らかな衰退市場ですが

その中でカシオ計算機の台数シェアは

約5割を占めます。

そして残存者利益により、電卓事業の

営業利益率は15%を越える

高い水準を維持しているのです。

 

もし自社のブランドが、「カシオ」の事例のように

高いシェアを獲得しているのであれば

コストをセーブしながら競合ブランドの撤退を

待つ「存続戦略」は有力な選択肢となります。

 

3.新市場開拓戦略

【市場の意味変】

市場の定義自体を捉え直すことで

更なる市場拡大を目指すか

あるいは商品やサービスの新しい

用途を見つけ出す戦略を指します。

 

例えばネスレの

「ネスカフェ・アンバサダー」は

市場の定義を「家庭」から「オフィス」に

変えた事で市場拡大に成功した例です。

眼鏡チェーンのJINSも

市場の定義を「視力が悪い人」から

「視力が正常な人」へ広げることで

JINS PCをヒットさせました。

 

【ブランド拡張戦略】

ブランドを拡張する事で成功したのが

ユニリーバの「Dove」です。

「Dove」はもともとは固形石鹸のブランド

ですが、固形石鹸市場の衰退を見越して

「フェイスケア」「ボディケア」「ヘアケア」

市場にブランドを拡張させた事で

成功させています。

 

【リブランディング戦略】

ブランドの在り方そのものを変えて

成功したのがエスエス製薬の

「ハイチオールC」です。

ハイチオールCは、1998年にブランドの

ポジショニングを従来の

「男性の2日酔い対策」から一気に

「女性の美白対策(しみ・そばかす対策)」に

変更するリブランディングを行った事で

売上高を飛躍的に拡大させる事に成功しています。

 

これらのように、例え衰退市場で

あったとしても

「市場の捉え方を変える」

「ブランドを拡張する」

「ブランドの捉え方を変える(リブランディング)」

など視点を変えることで

活路が見出せる場合もあります。

イノベーションは、何もテクノロジーだけの

話ではありません。

「市場」や「ブランド」を捉える

「視点」を変えることで、これまでにない

マーケティングイノベーションを起こせることも

往々にしてあるのです。

 

 

「PLC戦略」

是非深くまで読み込んで

みてください。