昨日私は特に何もやることもなく、朝方の所用を済ませ、あいかわらずの山歩きに行く予定であったが、しかし、車の運転中、ふいに雨が降り出し、私は行く気を失ってしまっていた。

 山に行くことは主目的ではあったが、それよりも気になっていたのは妻の誕生日が今日であるということだった。妻には毎年私の誕生日の際には何か貰っているが私は何も返したことがなかった。そういうものの繰り返しが、夫のエゴとなり、熟年離婚という結果に発展するのであろう。つまり、今日の主目的は妻への何かプレゼントを、というのが主目的ではあったが、食べるのが大好きなかなり太り気味の妻へ食物をプレゼントするという気にはなれないでいた。

 私は今年の冬からスキー登山に明け暮れ、仕事なしで天気が良ければ山通いをしていた。それは太らないようにするためでもあり、昨年、一大決意をして山スキー道具一式を一新したのである。その元を取るという意味も含まれており、せっせと雪山に通い続けたのだ。おかげでさほど太りはしなかったが、無人駅のストーブ番の際には菓子などをお茶うけに食い、山に行っては痩せ、そして太るというサイクルを繰り返していた。

 甲斐性無しの私は結局正式なプレゼントということもせず、妻の好みそうな推理物の文庫本を「それあげる」と言ったのみである。本来は、リボンなどを結び、いかにもありがたそうに包装したものを一言二言加えて渡すのが一つの儀式なのだろう、そんなことはわかり切っていたが、あいかわらずそんな当たり前の事すらできない私であった。一応妻は礼は言ったが、その本を読破するかどうかはわからない。二人はまるで趣味が違い過ぎるし、すべてが真逆に出来ている。せめて拍子をし、袋か何かに入れて沸かせばよかったと反省するところではあるが、いまさら過去には戻れない。二人に来年があるかどうかはわからないがその際にはそうしないとと思う。

 昨日、結局山に行くことはせず、簡素は昼食のあとスマホで映画を二本観た。最近はエンタメ系の映画には目もくれず、ひたすらインディーズ系の映画ばかり見ている。

 入浴しひと汗かいて体重計に乗る。六十八・三キログラムであった。大層な山に行くと二キログラム以上は落ちるが、今日は行っていない。

 夕食は簡素なものにするしかない。フジというリンゴを丸ごと一個と豆腐一丁、これが昨日の夕食であった。