所内での服装は体操着のようなTシャツと短パンだが、ほかに支給されるものもある。

Tシャツ3枚、短パン3枚、塩化ビニール製蓋付きマグカップ、長さ10cmほどの歯ブラシ、歯磨き、固形石鹸2個(風呂用と洗濯用)、通常サイズのタオル、毛布、トイレットペーパー、ゴザである。ゴザは、1畳サイズで、夜は布団、日中は着替えと私物を入れて保管するために使用する。衣類、毛布とタオル以外は、入口横のPigeon Box(縦横奥行き20cmほどに仕切られた棚)に保管する。別に大したものは無いのだが、消費するものには注意が必要。特に歯磨き(市販の携帯ハンドクリームサイズほどの大きさ)で、毎月支給されるが、1ヶ月でぎりぎりの量。油断していると自分のを使用する輩がいるのだ。外に飽き足らず中でもそんな狡いことをするやつがいる。自分も何度かやられたので、歯磨きだけは、着替え等と一緒にゴザにくるんで保管することにした。後々その必要もなくなるのだが。


Pigeon Boxの話が出たところで、部屋の間取りもご紹介。縦5m横10m奥行き10mほどの広さ。定員はMax30名様。両サイドに高さ1.5mほどの高さの棚があるが、実は2段ベッドである。上段だけで両サイド合わせて10人以上は寝れるスペースが作られている。決して巧みな技ではないが狭いスペースをうまく使っているなーと感心。奥にはトイレ(便器3個)と蛇口の付いたコンクリート製の長方形の水がめ(深さ1m横幅2mほど)ここにためた水で体を洗い、トイレも流す。蛇口にはどこで仕入れたか支給されていないガーゼ地の布がつけてある。もちろん錆で赤茶色。連中も錆水には気を使うようだ。洗濯は各自、奥の洗面スペースで済ませる。2段ベッドの下が洗濯物を干せるように作られている。従って、下は湿気があるので、自分は最初から上段で寝ることにした(上段は木製の板が敷いててあるし)。部屋の掃除は1日1回、箒はないので床一面に水を撒き、古い毛布で拭き取る。拭き取った後は二人一組でゴザをもち大きな団扇代わりに風を起こして乾燥させる。意外ときれいになるものである。


週2回運動日があり、わずか15分ほどだが、外に出ることができる。大体5部屋くらいずつ中庭に集められ、団体で運動する。まあ、ラジオ体操のようなものだが、晴れた日は新鮮な空気と陽射ししを浴びてリフレッシュできる。体操専門のIC(二人)もおり、体操の先生のように全員の前で次から次へ結構しんどい運動を掛け声をかけながらこなしていく。各棟曜日がずれており、朝から夕刻まで、時間を振り分けているので、この二人、月曜~金曜日、一日中体操だけをしていることになる。さすがにかなりいい体をしている。一人はナイジェリア、もう一人はインディアだった。


体操と言えば、隣の女性収容所も同様に体操をする。敷地内で高いトタン板だけでしきられているだけなので、体操の時の掛け声が聞こえてくる。あちらは、全員で声を出すので、良く聞こえる。「ワン、ツー、スリーフォー...」。こういう状況で聞こえてくる彼女たちの声はあまりにも刺激的過ぎると思うのだが。


男、女、とくれば、オカマさん。一人、コンタイのオカマが収容されていたが、完全に孤立状態で、悪さもしてないのに、最初からPC Roomに収容されている。まあ、彼(彼女かな?)を一般の部屋に入れたらとんでもないことが起こることは目に見えているわけだから仕方ないかな。彼は、捕まったときには肩までほどの長髪だったらしいのだが、収容されて頭を丸める時には泣き叫び大暴れしたそうな。毎食を配膳するクッキーに色目を使って憂さ晴らししているそうである。

ちなみに、一般の部屋にも実はホモちゃんがいる。特にバングラに多く、絡みをすればすぐにPC送りなので、寄り添って寝たり、いつも隣あってくっついている。片方がほかの男と話しただけで嫉妬し、それがもとでよく喧嘩があった。当然、皆PC行き。


B棟では2週間すごしたが、どうもこの棟のクッキーICには好かれてなかったようで、彼の進言によりC棟へ移動となる。結局、最後までC棟で過ごすことになるが、この移動が、私の収容所生活を一変させるのだから、彼には感謝すべきであろう。何せ、私もC棟のクッキーICになったのであるから。


クッキーICの進言と書いたが、クッキーICは絶大なる力を持っている。Inmateの移動までできてしまう。看守と一緒に1棟を任されるのである。部屋の定員は30人となっているが、クッキールームは常に10~15人ほどで、快適になっている。これも、クッキーICがIInmateの振り分けを任されているからで、毎日、出て行く者がいれば、入ってくる者もおり、そのコントロールを任されている。看守部屋の横にクッキー控え室があり(鉄格子は付いているがいつも空いており、出入り自由)、そこには、支給品や、爪きり、かみそりなどを保管している。一般クッキーは勝手に触れないが、クッキーICはそれすら自由にできる。トイレも看守用のきれいな個室水洗トイレを使用できるし、何もすることがなければ、看守部屋で看守と談笑している(看守の愚痴を聞かされたり、今後の収容所のあり方や、改善策などを話したりもした)。看守部屋には、時計も扇風機も付いている。クッキーは食事面で優遇されており、食事の量はInmateの倍、毎朝のコーヒーもしくは紅茶は飲み放題。毎食付いてるバナナも、クッキーは一般的なサイズの黄色い皮の新鮮なバナナ2~3本だが、Inmateのそれは、サイズの小さいまだ皮が緑色のバナナ1本である。おかげで、出所時には10kg近く太ってしまった。お勤めして太って帰ってくるなんて何てやつだ!と、友人たちにはあきれられた。


C棟に移ってほどなく、自分はクッキーになり、1日を外で過ごすことになった。この棟の責任担当看守 Mr Goh(最後まで本当にお世話になりました)が抜擢してくれたのだが、 彼は私をニックネームで呼び、私にもMr Gohと呼ぶよう指示した。それがきっかけで、ほかの看守や、同所幹部全員私をニックネームで呼び、私も彼らを名前で呼べるようになった。ほかの連中が、看守や幹部を名前で呼べば、怒鳴られるか、最悪それだけでPC送りである。皆、大学出の日本人というだけで相当気を遣っていたようだ。星の国はかなり勉強が厳しいが、それでも国内の大学に行けるのは、一部のエリートで、そこから漏れた一部の金持ちの子供が海外留学する程度である。ここの職員の中でも大学出はトップ幹部の3~4人ほどで、看守は誰も大学など行っていない。当然、ここに収容されている連中は、大半が小学校すら行ってない、途上国の連中である。そのような環境の中では、大学出の日本人はかなり異質なのである。とにかく、大学出といて良かった、英語が話せて良かった、日本人で良かった...。
クッキーの仕事は、慣れるまではきつかったが、慣れてしまえば楽なものである。とにかく外に出れるだけで満足であった。

鉄格子、中と外では別世界なのだ。