初心者棟から移ったのはB棟。いよいよ本当の収容生活が始まる。入れられたのは1階入口の横の部屋。どの棟もこの角部屋はCookie Room(クッキールーム)とはと呼ばれている。クッキーとは、各棟の掃除、食事の配膳、その他雑務を担当する。毎朝起床後の点呼が終わると、夕食終了まで、外で働いている。収容される前に、星の国の友人からは、入ったら、すぐにこのクッキーを希望して働けば、1日が早く精神的に楽になるから、と教えられていたのである。実はこの友人のいとこがついこの間出所したらしく、いとこの方もクッキーをやって良かったと話していたそうだ。あらゆる看守や幹部たちに呼ばれて聴取されていたことは先に触れたが、その際必ず何か困ったことや希望を尋ねられたが、その都度自分はクッキーとして働きたいと希望し続けた。いずれ自分もクッキーになるのだが、その話はまた後日のお楽しみ。
部屋に入ると先住の連中が待ち受けている。既に、日本人が来るというニュースは伝わっており、皆興味津々の様子。Room ICはマイケル(ナイジェリア)。身長190cmくらの痩せ型でやたら手足が長い(もちろん真っ黒)。性格は温厚でやさしい。ほかは、マレー、インディア、チョンコレン、インドネシアとフィリピーノ(フィリピン人)。ただ、何かが違う。何か雰囲気が違う。そう、一人ひとりの雰囲気が違う。皆、妙に落ち着き、目つきが違う。拘置所からこのかた、周りにいたのは皆不法滞在の連中だった。要は軽犯罪程度の小物連中だった。が、この部屋の連中は、麻薬、傷害、ハッカー、殺人未遂などなど、個性のある連中ばかりであった。
う~ん、恐ろしい。それから、皆、なぜか筋肉質。外で肉体労働でもしてたの?それにしては、皆が皆アスリートみたいだ。実は、部屋の中でウェイトトレーニングをしているのである。それもかなりハードに。室内でのエクササイズは禁止されており、見つかればPC送りなのだが、長期収容の彼らには関係ないようで、看守の目を盗んではひたすらトレーニングに励んでいる。これもひとつの暇つぶしなのだろう。PCと言えば、一度PC送りを食らうと、刑期が1週間追加される。PCに行き過ぎて出所が3ヶ月が伸びたやつがいたことも付け加えておきましょう。
救いは、マイケルが気のやさしいやつだったことである。まだ差し入れもない自分には、暇つぶしのための本もなかったが、彼は自分の本を貸してくれたり、何かと冗談を言っては笑わせてくれた。外ではナイジェリアに会った」ことすらないのに中に入った途端初めてナイジェリアと知り合い、そいつらがやたらいいやつだった。それに引き換えボビーオレゴンは...。
この棟に入った初日、ある看守が、「日本語の本があるけどいるか?」と、尋ねてきた。それもやけに丁寧に、もちろん答えは「Yes,Sir! Sure Si.!r」前に入所していた日本人が残していった本があるので貸してくれるという。正直、英語の本、雑誌、新聞には飽きてきたところだった。いったいどんな本だろうか?雑誌かな?小説かな?などと思いを巡らす。ところが待てど暮らせど本が来ない。ほかの看守が通るたびに、この話をし、どうなっているのか尋ね続けた3日後、ようやく本が届いた。やったね!「Thank you sir!」 ん?!何だこりゃ?○口Tトなどが組み合わさった文字。韓国語じゃねーか。「Sir, These are Korean books sir. 」。
さらに2日後、ようやく、今度こそ本当に日本語の本が届く。 「日本の歴史」 「世界の歴史」 前任者は随分と真面目な方だったようだ。何はともあれ、これで当分時間が潰せる.....と、いうような感じで、収容所生活がはじまったのである。